持続可能な森林管理のために、伐った木を使う
健全な森林を育てるために、木を使う
日本は世界有数の森林国です。国土面積の約7割を森林面積が占めています。
その森林を守っていくためには、健全な森林を育てる「木を植える→育てる→使う→植える」というサイクルが必要です。
森林を育てるために、どんなことをするのでしょうか。現場に足を運び、自分の目や耳で学びたいと思い、2022年12月12日に東京の森で開催されたエコツアーに参加しました。私たちが参加した「東京の木・多摩産材エコツアー」は誰でも参加することが可能です。林業に詳しくない一般の人々でも、日本の森林を身近に感じ、体験できます。
木を加工する製材所で、私たちが森林へ貢献できることは何かを学んだ
エコツアーでは、森林の木が木材になるまでの流れに沿ったスケジュールでした。
秋川木材協同組合エコツアーガイドの髙濱 謙一さんに案内していただきました。
多摩産材の森、原木市場(げんぼくいちば)でのお話は以前の記事へ
原木市場から車に乗り、製材所へ移動しました。
私たちが訪れた製材所の主な仕事は
原木の仕入れと搬入
原木の皮むき
木材への加工、乾燥
製品選別及び検査
出荷
です。
原木市場で購入した原木が運ばれ、木材にするために1本1本機械を操作しながら皮を剥いていきます。木の皮を樹皮(じゅひ)といいます。また、バークともいうそうです。
2と3に写っている真ん中の赤いカッターのようなもので、皮を削り剥いています。
皮を剥いた木はみずみずしい
皮を剥いた木に触らせてもらったのですが、水分を含んでいて、ビックリするくらいとてもみずみずしかったです。
そこで「木がこんなに水分を含んでいて腐敗は大丈夫なのか?」という質問がありました。
原木市場では、原木を外で保管しているので、雨に濡れることもあります。
しかし、原木は水をたくさん含んでいても大丈夫だそうです。
多摩川では昔、木を運ぶ重機がなかったため、水を溜め、鉄砲水のようにし、川の流れも利用して木を運んでいました。このような昔の作業方法から、原木が水に濡れても平気なことを学べるそうです。
木は捨てるところがない。しかし、利用が難しい部分もある
原木を木材に加工するために、すべて木の皮を剥きます。したがって、大量の樹皮・バークが発生しますが、無駄になることなく利用されているそうです。
ここの製材所では、ごみ処理場へ助燃材(じょねんざい)としてバークと端材を販売しています。
左の写真は、剥かれたたくさんのバークです。右の写真は、原木の端を角材に加工せず、そのまま販売している様子です。
原木の端の太い部分を元口(もとくち)、細い部分を末口(すえくち)といいます。こちらはなかなか使い道が見つからない部分だそうです。このまま販売していますが、買い手が見つからない場合、割って助燃材として加工し、販売します。
次は木取り(きどり)という作業です。これは、原木を木材に加工する作業を指しています。
丸い原木を加工する時に、どんな材にするのかを考えます。丸の状態で購入し、角材に加工するので、端の部分をできるだけ無駄のないよう最小限にすることが重要になるそうです。
機械で角材に加工します。右の写真は加工の際に出た端材です。
端材は、右側の写真のようにさまざまな形、大きさで発生します。したがって、同じ形がないことから使い勝手が悪いとされています。
いくつかの端材は紙の原料にもなりますが、多く発生するため「何かよい使い道があればいいのですが…」というお話を聞きました。
木は濡れていても大丈夫だけれども、やはり木を乾燥させる作業はとても大切
角材へ加工した後、木材を乾燥させます。なぜ、木材を乾燥させないといけないのか。それは、木材を乾燥させると、硬くなり折れや曲がりにも強くなるからです。また、変色や腐食を防げます。皮を剥いた状態で触った時に、とてもみずみずしく感じたので、乾燥させる工程はとても重要だと感じました。
乾燥方法は、自然乾燥と機械を使った方法の2種類あります。
機械を使った人工乾燥をする場合、写真の右のように干割れ(ひわれ)といわれる加工をします。これは、木を割れないようにするための加工です。
自然乾燥のことを天然乾燥ともいうそうです。自然乾燥の期間は、なんと半年から1年!木を育てるのに50年以上かかり、木材として利用できるまでに、もう1年と考えると、とても長いです。木材はとっても手間がかかっている材料であることを、あらためて深く感じました。
製材所で見つけた地産地消に取り組む「TOKYO WOOD」という文字
原木には、多摩産材マークの「多」という文字が印字されていました。
詳しくは、前回の記事の「原木の小口を見て、林業家の方たちの丁寧な仕事ぶりを感じる」をご覧ください。
昨年から「日本の森林のこと」「東京の木」についての、「cocomoku-子どもたちの未来のために-」シリーズとして記事を更新しています。
シリーズの記事はこちら
製材所にある木材には「TOKYO WOOD」や「TOKYO WOOD普及協会」と印字されていました。
「地産地消」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。一番身近な地産地消は、野菜などの食べ物ではないでしょうか。どこの産地か分かるように印字されています。また、その土地の野菜を販売しているスーパーもあります。
木を使った家具や小物、雑貨を買う時には、なんの木を使っているかが表記されていることもあります。しかし、どこの産地か書かれているものは少なく、地産地消を意識する機会があまりないと感じます。
最近、東京のいくつかの施設では多摩産材使用をうたっている施設も増えてきました。
渋谷区神宮前にあるCODESIGN TOKYOのオフィスからすぐに行ける距離にある「国産木材の魅力発信拠点 MOCTION」や「WITH HARAJUKU」「渋谷区北山公園」などです。実際に私はその3つを訪れました。どれも木がたくさん使われており、とても魅力的な場所でした。
その他の多摩産材使用施設は多摩産材情報センターのHPで確認できます。
森林の機能を長期にわたり維持することを目標とする「SGEC」
木材の保管場所に貼られていた紙に「SGEC」という文字が書いてありました。
「SGEC(エスジェック)」とは持続可能な森林経営を推進するためのSGEC森林認証制度です。
環境、経済、社会の各面から森林の機能を長期にわたり、維持することを目指しています。
また、目的としては、持続可能な森林経営を広く普及させ、生産された木材の有効な利用を推進することです。そして、森林整備の水準の向上や、林業の活性化、緑豊かな自然環境の保全に役立つことでもあります。
私たちが訪れた製材所の「SGEC」と書かれた紙が貼ってある保管庫の中の木材は、SGEC認証木材です。なので、このSGEC認証木材を使用した商品にはロゴマークがつきます。
森林の管理には、環境だけでなく社会や経済についても目を向けないといけない
森林は、土砂崩れを防ぎ、洪水を緩和し、水を溜めながら綺麗にするなど、私たちの生活を支えてくれています。これからもずっと、こういった森林機能を発揮していくために、森林を管理していかなければいけません。
持続可能な森林管理の基準として3つの柱があります。
これらのバランスが守られることにより、森林は持続可能に管理されるそうです。
森林の管理は、森林の現場の方々にすべて任せるだけでは、このバランスは守られません。
私たち消費者にできることがあります。
地球環境、森を守るマークの「SGEC」「PEFC(ピーイ―エフシー)」があることを知る
お買い物の時に「SGEC」「PEFC」の環境マークがあるかをチェックする
SGEC製品、 PEFC製品の商品を購入してみる
などです。
こういったアクションをすることで、森林の保護、環境の保護だけでなく、地元住民への就労機会や森林所有者の収入に、貢献できます。
エコツアーガイドの髙濱さんが
「多摩産材は出荷証明や産地証明の両方をだしています。どこの森でどの林業家の方たちによって長い年月育てられ、どこの製材所で加工されたのか分かります。なので、森から使う人たちまでのストーリーができる」といっていました。
ストーリーができることは、森林の保護や森林所有者や労働者の収入につながります。そして、持続可能な森林管理ができるようになります。
SGECについて調べたことで、ストーリーがあることの大切さを学び、私たち消費者にできることは何なのかを知ることができました。
知ること・学ぶことを続け、発信したい
以前のnoteの記事で、私は子育てで思ったことに関して、こんなことを書きました。
それは、今回の日本の森林、東京の森、林業のことに関してもまったく同じ想いです。現場に足を運び、声を聞くと、たくさんの学びがありました。そして、noteを書くことで再度調べ直し、日本の森林、東京の森、林業についてより学べたと感じています。
これからも、体験したこと、学んだこと、実際の声を聞いたことを発信していきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
私たちCODESIGN TOKYOが、
子どもたちが育つ未来のためにできることはないかな?
子どもたちの笑顔につながる事業を興したいな。
そんな想いがきっかけで、「日本の森林のこと」「東京の木」について
自分たちで調べ、学び、体験したことを発信することにしました。
「日本の森林のこと」「東京の木」についての、「cocomoku-子どもたちの未来のために-」シリーズとして記事を更新しています。
シリーズの記事はこちら