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「集団安全保障」の基本的な考え方

かつてヨーロッパでは、19世紀末以降、勢力均衡はその内在的矛盾、すなわち「勢力」の測定に伴う不確実さのために、崩壊に向かうことになった。各国は、仮想敵国に優越する力を求め、軍拡競争のらせん状の拡大と同盟政策の追求によって、国際関係を緊張させ、平和を危うくするという悪循環を招くことになったのである。

国際連盟で歴史上はじめて、集団安全保障の仕組みが設けられた。その基本的考え方は、二つの要素からなる。第一に、参加国は少なくとも一定の場合に武力を用いないことを相互に約束する。第二に、この約束を破って武力を用いた国に対しては、残りの参加国が協力して対処する。

同盟条約が、外向きの「競争的安全保障」であるのに対し、集団安全保障では、「敵」は内部におり、内向きの「協力的安全保障」といわれる。集団安全保障は、平和維持のための協力によって国際緊張を緩和し、緊急の場合には、加盟国の総力をあげた対処が期待できる。このレジームの内において、軍縮も議論することは可能である。

平和の維持は、個々の国家の個別的利益であるだけではなく、国際社会の一般的利益である。それゆえ、後者の観点を重視することが、長期的に自国の個別的利益に適うのである。

勢力均衡と集団安全保障は、二者択一の選択肢ではなく、複眼的な見地が必要となろう。しかし、重点というものがなければならない。内在的矛盾が避けられない勢力均衡の考え方ではなく、一般的利益の見地から、国連を中心とする「協力的安全保障」を重視する姿勢が求められる。

<参考文献>松井芳郎『国際法から世界を見る第3版』

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