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難民問題における日本の対応

国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)は、国連人道機関の一つであり、政治的対立に巻き込まれることなく中立・公平の原則に徹し、特に自国を追われた人々である難民の保護と救済を専門的に扱う任務が与えられている。難民問題の最終的な解決は、おおきく分けると、①本国への帰還、②庇護国への定住、③第三国への再定住という三つの方法がある。

UNHCRは、その難民認定ハンドブックで、いわゆる「灰色の利益論」を採用し、「立証できない陳述が存在する場合においては、申請者の説明が信ぴょう性を有すると思われるときは、反対の十分な理由がない限り、申請者には灰色の利益が与えられるべきである」と述べる。しかし、日本の行政当局は、難民であるとも難民でないとも確定できない「灰色の人」を難民として認定しない立場を採用している。

日本の対応は、難民条約が締約国の裁量に委ねた部分である難民認定について、難民問題の解決という本来の趣旨に沿ったものとなっておらず、日本は、国際的な難民支援には財政援助を行うが、難民を受け入れないとの批判を浴びている。しかし、2015年のパリのテロ事件において、欧州の難民制度と事件までの楽観主義がテロリストによって悪用されたことを考えると、慎重な日本に理由がないではないだろう。

領域内庇護権は、元来、領域主権の論理的帰結としての国家の権利であって、義務ではない。しかし、最近では、「すべての者は迫害からの庇護を他国に求め、これを他国で享受する権利をもつ」と規定する世界人権宣言第14条などを根拠に、個人の人権として庇護権を再構成すべきとの議論もある。この点を踏まえ、難民条約の不備を討論し、国家の権利としての領域内庇護権の行使として、難民問題の解決の趣旨に則った行政当局の対応が必要かもしれない。

なお、国連安保理は、2001年に、「難民の地位が、テロ行為の犯人、組織者または助言者により濫用されないこと」(決議1373号3(g))を確保するように求めており、行政当局の対応が不可欠である。

<参考文献>芹田健太郎・薬師寺公夫・坂元茂樹『ブリッジブック国際人権法第2版』/東野真『緒方貞子――難民支援の現場から』/墓田桂『難民問題』

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