法的根拠としての「法の一般原則」
ドゥオーキンによれば、「解釈とは本質的に目的の報告である。」法の解釈とは、解釈者が見つける法の目的に照らして、法実務を最善のものとして提示することにある。「法の一般原則」は、特定の「法の一般原則」が、事案に対して関連性を有すると判断される場合に、具体的規定の適用に指針を与えるものとして、検討されなければならないだろう。
法的問題には、法がなにを規定しているか明確な事案もあれば、法律家の意見が対立し解決の難しい事案もある。ドゥオーキンによれば、制定法の文言が不明瞭だから裁量を行使すべきなのではなく、制定法の射程を制約する論拠があると考えられるから、制定法の文言が不明瞭なものとして捉えられる。
ここで注目すべきは、国際法の第三の法源とされる「法の一般原則」である。山本草二によれば、裁判所は、条約と国際慣習法を適用するだけでは却下せざるをえない原告の請求について、国際法の欠缺と当事国の権利義務関係の不明白性に基づく「裁判不能」の事態を回避するため、法の一般原則を援用することにより、国際法に基づく判断を下すことができる。
実定法の射程を制約する論拠があると考えられるから、「法の一般原則」を含めて、原理(すなわち、法的根拠)間の整合性を検討し、解釈者が考える、関連を有する法的根拠に照らし、最善の解釈を提示しなければならない。山本草二によれば、「法の一般原則」は、国家の主権・独立に与えられる「有利な推定」に先行し、その濫用を防ぐものとして、国際法上、独自の機能を有する。
「法の一般原則」は、困難な事案では、法解釈における正当性の次元において、すなわち、法規範の妥当性を基礎づけ、その適用の射程を制限する法的根拠として検討される。法解釈者は、原理間の整合的解釈によって、法適用の一貫性を実現し、ドゥオーキンの言葉を借りれば、「拘束された自由な判断」として、最善の法解釈を提示しなければならない、と考える。
ジェノサイド条約留保事件で、国際司法裁判所は、留保の許容性基準について、条約の趣旨及び目的との両立性を提示した。従来の許容性基準を含めて、法の一般原則「合意は拘束する」が、一貫して解釈に指針を与えたことは、法の一般原則の機能を考える上で、示唆に富むであろう。
<参考文献>瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』/山本草二『国際法新版』/田畑茂二郎『国際法1』/杉原高嶺・酒井啓亘編『国際法基本判例50第2版』