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「ゆるコンピュータ科学ラジオ」視聴者の熱い声に情報教育の理想像を見た!?

〜SMBCグループ プロボノワークプロジェクト〜

こんにちは。みんなのコード田嶋です。

2024年1月に、「ゆるコンピュータ科学ラジオ」というYouTubeチャンネルとみんなのコードがコラボした動画がアップされました。
このときの様子などは、みんなのコード永野による「「ゆるコンピュータ科学ラジオ」さんとのコラボにプログラミング教育の理想像を見た!」を是非ご覧ください。

今回は、「ゆるコンピュータ科学ラジオ」の視聴者の皆様にご協力いただいたアンケートの結果についてお伝えしたいと思います。
※アンケートに関してですが、「自由記述部分のみ」取り出し、外部と協力して分析しました。

※この記事はみんなのコードコーポレートサイトからの転載です。


アンケートの熱量に圧倒される

今回のコラボ企画が決まったとき、「ゆるコンピュータ科学ラジオの視聴者に、何か聞いてみたいことはないだろうか」と社内で話し合いました。おそらく視聴者の多くは、コンピュータ科学に興味をもっている方々のはずです。そんな皆さまに、

「なぜ、コンピュータ科学に興味をもったのか」
「理想の情報教育はどんなものだと考えているのか」

を聞いてみることにしました。

興味をもったきっかけや原体験に、なんらかの共通項があるなら、それは情報教育が大切にすべき観点になりえるのではないかと考えました。また、より直接的に「理想の情報教育」を聞くことで、情報教育の在り方に示唆を与えてくれるのではないかとも思ったのです。

このような思いで、いくつかのアンケート項目の中に、

あなた自身が、コンピュータ科学に興味をもったきっかけや原体験を教えてください」
「あなたが思う「学校における、理想の情報教育」を教えてください」

という設問を入れることにしました。

ゆるコンピュータ科学ラジオさんはチャンネル登録者数 10万人を超える大人気のチャンネルです。今回動画のコラボをするにあたり、回答いただいた方に抽選で書籍をプレゼントするという特典はつけたものの、わざわざアンケートに回答いただける方はそこまで多くはないだろうと思っていました。

ところが、公開から約1ヶ月間で、335名の方に回答いただきました。しかも一つ一つの回答の熱量がすさまじく、一問あたり1,000文字近くの長文で思いを綴っていただいた方が何名もいらっしゃいました。

多くの思い溢れる回答が集まるという嬉しい誤算です。大変ありがたいと思いつつ、これは時間をかけてじっくり読み込まないと、当初想定していたような「共通項」を見出すのはなかなか難しいぞと、正直頭を抱えていました。

SMBCグループ プロボノの皆様のご協力を得て


このような状況の中、ご縁があり、SMBCグループ プロボノワークプロジェクトのご支援を得られることになりました。この取り組みは、株式会社三井住友フィナンシャルグループの社員の方々が、業務時間の一部を NPO 等の団体支援に活用する社会貢献活動です。

様々な専門性をもつプロボノの方々に、支援活動の一環として、アンケートの集計・分析をお願いすることになりました。

プロボノの皆さんからも、

「こんなに熱心に回答しているアンケートは珍しいですね」
「コンピュータ科学に対する一人一人の思いが伝わってきます」

と驚かれる中、どんな観点で集計・分析ができそうか、定期的にミーティングを重ねながら話し合い、実際に集計・分析作業を行っていただきました。

大切なのは、何かをつくった経験・つくりたいという思い

まず、「コンピュータ科学に興味をもったきっかけ・原体験」についてです。大きく分類すると、

⚫︎自分で手を動かして何かを作る・作りたいという「創作経験・意欲」を挙げた回答が60.9%

⚫︎本・ゆるコンピュータ科学ラジオを含む動画など、座学的な「知識」を挙げた回答が37.0%

でした。

実に半数以上が、何かを作った経験によって、コンピュータ科学に興味をもったという結果です。

また、「創作経験・意欲」の内訳として最も多かったのがプログラミング*で、335名のうち、133名(全体の39.7%)が趣味や学校、仕事でプログラミングを体験したことがきっかけ・原体験であると回答しています。*Minecraftやscratchなども含む。

具体的なプログラミングに触れた場面としては、webサイトやゲームをつくってみたいと思い、実際につくってみた、大学の研究や就職してから必要に迫られたり、業務を効率化したいと思って勉強した、といった回答が目立ちました。

⚫︎webサイトを作るのが流行っていて、自分の思ったとおりのサイトを作るのを楽しく感じたこと

⚫︎ゲームにあるランダム性に魅力を感じて、自分好みのゲームを作りたいという意欲からプログラミングを勉強し始めた

⚫︎職場で、同じ作業の繰り返しをかなりのコストをかけてやっている人を見て、何とか(プログラミングで)できないかなと調べて手探りでやっていった中で、それこそパズルのような楽しさや苦しさを味わったのが奥深さに気付いたきっかけ

また、こうしたきっかけの要因となった人・環境に着目すると、

⚫︎友人・知人・家族を挙げたのは9.6%
⚫︎大学での活動・研究などを挙げたのは10.4%
⚫︎会社での活動・業務などを挙げたのは13.1%
⚫︎学校(小・中・高)での学習や体験を挙げたのは、わずか7.8%

という結果でした。

高校に「情報」科が誕生したのは2003年のことであり、回答者の中には高校で「情報」を受講していない人もいるとはいえ、みんなのコードとしては、学校(小・中・高)での学習や体験がきっかけでコンピュータ科学に興味をもつ人が、今後増えることを期待したいと思います。

高度な技術よりも、楽しく、何かをつくりながら学ぶ

次に「理想の情報教育」についてです。こちらも大きく分類すると、

⚫︎学習内容に言及した回答が68.4%
⚫︎学習方法に言及した回答が24.8%

でした。

学習内容の中では、「アルゴリズムとプログラミング」を挙げた回答が目立ちましたが、高度な技術を身につけて欲しいという回答はほとんどなく、基本的なしくみ・考え方を身につけて欲しいという回答が大多数でした。

⚫︎「身の回りの機器はアルゴリズムで動作していることを知る」「普段の生活を(自分が実装できなくても)アルゴリズムで解決しようとする」姿勢を身につけてほしい

⚫︎複雑なプログラムであっても小さな命令の積み重ねであり、コンピュータは良くも悪くも指示した通りにしか動かないということを教えて欲しい

⚫︎プログラミングの初学者向けの説明で、「こんなところにもプログラムが使われています」のような説明がされることがあるが、これらの仕組み等を具体的に説明するコンテンツはあまりない。そういったものを扱うことでプログラミングをより身近に感じながら学習を進めることが出来ると思う

⚫︎「その結果を出力するためには情報として何が必要なのかを考える発想」はこれから持つべき最低限の力だと思う。この能力が、コンピュータが理解できる人とできない人の差が開く要因の一つになっていると考える

学習方法については、ほとんどが「楽しい経験をさせる工夫が必要」「座学・暗記ではなく体験を重視するのが良い」という回答でした。

⚫︎プログラミング教育を「なんか難しいもの」で終わらせることなく、楽しさを見出だせるものにしてあげてもらいたい。実際に簡単なアプリ開発ができたり、普段自分たちが使っている・遊んでいるものがどのようなコードで動いているかを観察できたり、興味を引くような内容を学校でももっと扱ってもらいたい

⚫︎自分の手で何かプロダクトが生み出せる楽しさを知れる授業が、自分だったら受けたい

⚫︎自分で作り出せる面白さとか、世の中の便利なものは実は裏でこう動いているんだという発見とか、そういう楽しさを教える情報教育であってほしい

⚫︎モノを作る喜び、できたものを改良する工夫、欲しいものを作る想像力を身につけられる教育が理想

⚫︎0から世界を作れるかもしれない!という面白さを感じて欲しい。既存のゲームも楽しいですが、ルールや世界観を創れる可能性を感じて欲しい

みんなのコードは、2024年7月に次期学習指導要領に向けての提言「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル案」を公表しました。この中で私たちは、小・中・高の各段階を通して創造・表現しながら情報を学んでいくことが大事だと主張しているのですが、まさにこの考えと共鳴するような、多数の回答が見受けられたことを、大変嬉しく思います。
(未来の学び探究部の永野・宮島による「2030年代の情報教育〜つくること・表現することを通した学びを目指して〜」もぜひご覧ください)

「客観的な目線で捉えた情報教育とは」プロボノの皆様が感じたこと

今回、集計・分析に携わっていただいたプロボノの皆さまは、普段は情報教育に携わっているわけではありません。しかし、だからこそ、回答を客観的に見つめ、外部の目線で示唆を与えてくださいました。

また、今回のプロボノ期間では、ゆるコンピュータ科学ラジオ視聴者のアンケート分析のほか、他の研修アンケートの集計・分析、今後の教員研修に向けた新たなアンケート作成でもご協力いただきました。

今回ご協力いただいた皆様からは、以下のようなコメントをいただいています。

Aさん
​​今回ご一緒させていただいて感じたのは、回答者の想いを知ることと、それを外部の支援者などのステークホルダーに対して伝えること、2つをつなぐことの難しさでした。
想いの詰まった大量のテキストを、どういう分析軸で切り取ったら、一目見て、大括りに把握できるのか、田嶋さん・プロボノメンバー間で真剣に議論させていただきました。
また、この分析作業と並行して、今後実施されるアンケートについて、みんなのコードの皆さんが、苦労なく分析できるような工夫も一緒に考えさせていただきました。
みんなのコードの皆さん自体が、情報教育に対して「熱量の高い」方々なので、受講者の生の意見を知りたい、集めたいという希望をお持ちです。一緒に作り上げた新たなアンケートを活用していただき、受講者の声、そしてみんなのコードの皆さんの想いを支援者・ステークホルダーの方々にお伝えできるようになれば、うれしく思います。

Bさん
みんなのコードさまとのプロボノ活動を通じて、視聴者の皆様のアンケート内容の分析をさせていただきましたが、視聴者の皆様が、コンピュータ科学に興味をもったきっかけや原体験を拝見してものすごい熱量に圧倒されました。
私どもは皆様からいただいた貴重なご意見を分析し、どうしたら今後ますます重要になってくるプログラミング等に興味を持っていただけるか等を真剣に議論しました。様々なお声があり、結論付けるのは難しかったのですが、皆様の原体験から身近に体験できる環境が大事なのではないかということが見えてきました。今回の分析結果がみんなのコードさまの今後の活動に役立てば幸いです。

Cさん
みんなのコードさんと外部連携企画アンケートの分析や実際実施する独自のアンケート作成を通じて、日本における情報教育の実態を知ることが出来たのと同時に、今後益々身近になるテクノロジーの活用方法をいかに正しく教育現場に伝えるかの難しさを痛感しました。新しい分野で答えがないなかで、みんなのコードさんと一緒に目指すべき活動について短い期間でしたが一緒に考えられたことは非常に勉強になる貴重な時間でした。
アンケート作成では、みんなのコードさんの「自由記述欄で記載される教育現場の生の声を拾いたい」という思いと、「活動実態を数値で可視化することで情報教育に取り組むことのインパクトを外部に伝えたい」という思いを取り入れ、定量と定性の回答両方を得られるように議論を重ねて作り上げることが出来ました。アンケート分析では、自由記述欄の類型化及びキーワード特定のアプローチを取ったことにより、想定し得なかった意外な回答内容も多々あり、団体さんの活動内容が世の中の動きと相違していないかの確認をするうえでも、現場の生の声を知る大切さを実感しました。
答えがない分野でもあるからこそ、今回のアンケート形式をベースに今後もブラッシュアップしていただき、みんなのコードさんが目指す活動に繋がる示唆を拾う一つのツールとしてご活用いただけたら幸いです。

今回のプロジェクトを通じて、志を同じくする多くの方の思いを紡いでいきたいと、改めて感じました。皆さまへの感謝の気持ちを持ちながら、引き続き、学校と先生方への支援を続けてまいります。

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