大学入学共通テスト「情報」の試験はやるけど、配点はしない?
〜未来を創る高校情報:デジタル社会を生き抜くための新たな学び〜
こんにちは。みんなのコード永野です。
間があいてしまいましたが、「未来を創る高校情報:デジタル社会を生き抜くための新たな学び」と題して、これまで2回お送りしてきました。
過去の記事はこちらから
URL:「本当に ”みんな” が高校で「情報」を学ぶ必要があるか」を考えてみる
URL:20年近くずっと必修?高等学校の教科「情報」は何が変わったのか
今日は全5回のシリーズ3回目、大学入学共通テストに「情報」が新設された意義や内容についてお話していきます。
※この記事はみんなのコードコーポレートサイトからの転載です。
大学入学共通テスト「情報」の概要
2025年度入試から開始される大学入学共通テスト「情報」の概要は以下のとおりです。
2025年度入試(2025年度に大学に1年生として入学するための試験。高等学校側からみると2024年度に実施)から開始
国公立大学では基本的に必須科目(一部配点しないと発表した大学あり)
浪人生向けに旧課程「社会と情報」「情報の科学」の範囲から出題される「旧情報」試験も用意
試験時間は60分、配点は100点の予定
他問題と同様マークシートによる実施。CBT(コンピュータによる回答)は慎重に検討中
前回の記事では、教科「情報」で扱われる内容は、あらゆる職業や日常生活に深く関わるものであり、全ての人々が学ぶべきものとなった、ことを書きました。
それは、大学へ進学する人にとっても同様です。
つまり、情報学部や工学部などのいわゆる「理系」学部への進学だけでなく「文系」の学部であっても、高等学校で学ぶ「情報」の内容は必須であると考えられます。
そもそも、「文系・理系」といった枠組みで学びを分けて考えることこそ、現代的ではないといえます。言語学や社会学などでも扱うデータはますます膨大になってきており、質的なデータもテキストマイニングといった手法で分析されています。経済学部なども言わずもがなでしょう。
学びや研究をしていくうえで、一分野のみから考えるのではなく、様々な「情報」を横断的に捉えながら適切に処理し、表現していく重要性は、あらゆる学部に共通しています。
「情報」を配点しない?
このように、高等学校で学ぶ「情報」は、あらゆる学部の学びに関連していることから、大学入学共通テストでは、国公立大学の受験について選択ではなく「原則必須」となりました。私立大学でも共通テスト利用型入試で、「情報」を採用する大学は増えていくものと思われます。
【令和5年4月23日更新】2025年度(令和7年度)大学入試 大学入学共通テスト 教科「情報」(科目「情報I」)を課す大学 入学者選抜・入試要項・配点等の公表一覧
ところが一部の国立大学から、「情報の試験は実施しても、配点に加えない」との発表がなされました。情報処理学会からは、即座に懸念のコメントが発表されています。
2025年に初めて、共通テスト科目となるのですから、「前例がない」のはあたりまえです。
社会が変わり、必要となる学びも変化していく中で、大学入試は何も変化せずにいるというのは、むしろ不自然です。
これまでにも、大学入試改革が行われるはずだったのですが、各方面からの「前例がない」といった反対意見から、結局見送られてきた経緯もありました。「情報」科目を実施するものの、結果として配点しない大学があるという報道を聞くと、また同じようにうやむやになってしまうのではないかと、私たちは心配してしまいます。
「これまで通り」、「前例踏襲」に安心感があるのは当然です。新たな問題も起きるリスクは少ないでしょう。
しかし、これからの社会に必要なのは、まさに「誰も経験したことのない新たな課題」への対応力です。大人たちが変化を避けて新たな問題に立ち向かわず、その反面子どもたちには「未知の問題」への対応力を望むのでしょうか。様々な批判や議論はなされるべきですが、少なくとも「前例がない」ことを反対の理由にするべきではありません。ましてや新たな知見を獲得しようとする学びの場である大学にとって、学びの変化に対応していく姿勢は不可欠なはずです。
近年、テクノロジーの発展は急速に加速度を増しています。特にAIに関するニュースは毎日、新たな話題が雨後の筍のように出てきています。この社会の変化のスピードに対し、むしろ遅すぎるくらいです。せっかく変わろうとしている教育および受験制度に対し、「前例がない」という理由で立ち止まってしまうことは、目の前の課題から目を背けているように感じてしまいます。子どもたちの将来、そして日本の未来について考えるなら、一刻を争う問題のはずです。
「情報I」はすでに、必履修科目として2022年度からスタートしています。学びの変化に対応するために、必死に教材研究を続けながら授業を実施している先生、新たな学びを積み重ねていっている高校生たちがいるのです。もし、「情報の学びについては評価しない」ことになったら、その努力は『必要がなかった』と思ってしまうかもしれません。もちろん、受験の評価だけに限ったことではありませんが、現場の先生や生徒たちに、「学びに対する虚しさ」だけは感じさせてはいけないと強く思います。
これからの時代を生きていく上で必要な資質・能力の獲得に向けた学びとそのための改革について、大人たちが足踏みをせず、子供たちと共に学びながら前進し、その成果についてもきちんと汲み取ってあげられる社会であってほしいと思います。
私たちも、先生方の不安が大きいプログラミングの学習環境については、オンラインのPytnonプログラミング教材「プログル情報」を無償で公開しています。また、これまで全国の情報を担当する先生方1000名以上に、「情報I」の研修を無償で実施してきました。
みんなのコードは、今後も「情報I」の確実な実施と未来を担う子供たちのために、あらゆる支援をしていきたいと思っています。
次回は大学入学共通テスト「情報」の試作問題の内容について記していきたいと思います。
(関連書籍)
思考力アップ 大学入学共通テスト「情報I」[なるほどラボ]
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