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Photo by
syuheiinoue
あの日、父は、鳥居のてっぺんめがけて何度も石を投げてくれた
大学受験を控えていたある年の冬、合格祈願と初詣を兼ねて、父や母、妹と一緒に鹿児島県鹿屋(かのや)市の荒平天神に出かけました。
浜辺の砂州にある珍しい立地の神社で、海風が強い日でした。
現在は禁止されているそうですが、当時は、鳥居に向かって石を投げ、その石が鳥居のてっぺんにうまく載れば合格できる、という言い伝えがあり、私たちも挑戦することに。
てっぺんの幅はわずか数10㎝ほどで、何度も挑戦しますがなかなかうまくいきません。
そのうち私や妹は疲れてきて
「お父さん、寒いからもう帰ろうよ」と言い出す始末。
それでも父だけはあきらめず、一月の冷たい海風に吹き晒されながら、何度も投げてくれました。
そしてとうとう何度目かに成功したとき、思わずみんなでやったぁと叫びました。
後年、母が「あの時のお父さんは、あなたを合格させたい一心で必死だったんだよ」と懐かしそうに話していたのが忘れられません。
父も亡くなり、今では遠い思い出になってしまいましたが、私が合格できたのは、天神様と、生一本な性格の父のおかげだと思っています。ありがとう、お父さん。
下記は、将来的に物書きを狙っている“泣かない赤鬼”さんが過去にリメイクしてくれた記事です。「もっと狡い文章を入れて泣かせるテイストにしてみた」とはご本人の弁。ぜひぜひ、読み比べてリメイクの醍醐味を味わってみてくださいませ。