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交錯の先に見える事を祈る

お互い様の「隠した本当」
意外と壱久は、ロマンチストだ


アメリカンブルー?
残念ながら、実は聞いた事も無かった。
花屋にまずお互い行かないのも理由で。


たまたま見付けたその花は
色合いも綺麗で、
育てやすいと店員さんに迄お勧めされて、
悩んだ結果、【育てる】ことにした。

壱久はめんどくさいなんて
言うかも知れないけど、その時は僕が
ちゃんと育てて、花をプレゼントするのも良い

きっと、気に入ってくれると、思うから。
こんな僕を、『大好き』って言う弟は、趣味が悪いけど嬉しい気がやっぱりする。
恋人、って言うのは最初は考えて無かったなぁ、何て思って。
弟は、ほら、弟だから。
でも何となく健気で、気の迷いかも知れないけど、ソコが可愛かった。
まだ慣れないけど、
弟はいつも幸せそうに笑っているから、僕はその表情が好きだ。

まあ、難点は嫉妬も束縛も強くて、
多少狂っていて、理屈は通用しない所で笑顔で幾度も僕の心を壊しては幾度も直していく。

追い詰められると逃げ出してしまう僕に気付くともう、半狂乱で叫び出すから気が気で無くて戻ってしまう。
良くないのは、分かってること。
今まだ、此処に居るのは、恋人である前に彼は弟で。見捨てるのは自分の性分から難しい。

『好き』ではある、でも僕を苦しめる彼を愛してるのかは分からなくて。
痛いのに離れられないのは。
『依存』なのか『惰性』なのか。

鉢植えを抱えて思うのは、花が咲けば、
自分の答えも出るのかも知れないと言う、
藁にもすがる思いだったのかも知れなかった。

壱久はなんだと思うのだろう。
正直僕も何かを育ててみようなんて、
なかなか思わない。
だから多分、藁にもすがる思いなんだろう。

弟は好きなんだ。
けど、僕にとって恋人としての壱久は……
答えを出すのは
まだ早くて。アメリカンブルーが咲いたら、
うん。咲いたらにしよう。

side002

「壱久」

呼ばれて顔をあげた。
半分眠っていた、頭で返事を返すと
若干歯切れが悪い。

なんか珍しいね、と声には出さないで
優しい気分になれる。
彩久と出逢う前はこんな気持ちなんか、
知らなかったっけな、と
答えを待ちながら考えて居た。

「花、育てたいなって思うんだけど」
「花?」
「うん。なんか綺麗な花が咲くらしいんだよね、アメリカンブルー」


アメリカンブルー

ちら、と相手を伺う。
表情に、何ら変わりは無かった。

…単に、育ててみたいだけか。
兄を見据えたのはほんの少しだけ。
多分、気紛れなのかもね、と考えて自問自答をした。

アメリカンブルーか。
花は割と好きな方だ。

なんか、基本的に、人間じゃないものに
安定を求める。
昔から自分にはそう言う節があった。


「育てる?」

間は空いてしまったけど、気だるげに返事を。
知られたくない。
アメリカンブルーって何の花か、
兄は多分知らないだろうし。

「うん。良かったら一緒に」
「分かってるよ」

単なる作業でも、良いのだ。
兄と一緒にやってる事に意味があるんだから。
俺は、兄さんが好き

【彩久】

弟が、了解だと告げたのは、
意外だと、覚悟してた割にはストンと納得出来る自分に驚かされる。
落ち着いた笑顔と、いつもの声音。
嗚呼、知ってる様な気もした。
弟が、壱久が、忌み嫌うのは、
面倒事ではなく、『違うもの』なんだ。

「アメリカンブルーは夏の花だよ、ちょっと早いかも。室内にする?」

すらすら出て来る言葉で、花は嫌いでは無いのだと悟る事が出来て、安心した。

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