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人工知能AIがもたらす2040年の仕事

未来の仕事が、企業、政府、社会にディスラプション(破壊的変革)を引き起こす。仕事のディスラプションはすでに、ビジネスモデルのイノベーションを引き起こしています。企業は将来、人材をより効率的に活用するようになるでしょう。このディスラプションを受け、仕事はソリューションとタスクに分離され、タスクはそれぞれ最も効率的な方法で遂行されるようになります。

ギグエコノミーであるスタートアップ企業は、ホテル、レストラン、タクシーなどの事業に適用される規制に対応するための取り組みをすでに行っています。現在のアルゴリズム経済の下でこうしたトレンドが強まるにつれ、各国政府には、将来に向け、ビッグデータやスマートテクノロジーを活用して、迅速かつリアルタイムで対応できるよう設計された規制制度が必要になります。 所得格差が大幅に拡大するかもしれません。というのも、単純労働者が失職するとともに、社会的セーフティーネットの主要素が瓦解し、新たな社会ソリューションが必要になるからです。 アルゴリズム経済は、かつて経験したことのないレジャーや家族との時間を実現し、社会に多大な影響を与えることを約束します。 AIは、企業の役割を完全に再定義するほどの影響力を持っています。このような勢いのあるテクノロジーによって、かつてない組織的効率性が実現し、その結果、新世代の優れたサービスと商品がますます増加します。しかし、多くの企業は、AIの真のポテンシャルをまだ完全に引き出せていません。 トランスフォーメーションを実現するには、技術的障壁よりも先に、高い心理的障壁をクリアする必要があります。この点の重要性は、数年後に明らかになります。なぜなら、AIトランスフォーメーションのための基盤を築いている企業と、これを行っていない企業との間には明らかなギャップがあり、このギャップは確実に大きくなっていくからです。 企業がAI戦略を試行するにつれ、人間労働者の仕事は、完全に時代遅れになっている一部のケースを除き、これから進化していきます。労働者にとって幸いなことに、AIによって、多くの業務で人間が不要になるのと同時に、新たな事業機会も創出されます。多くの研究者が仕事は純増すると予測しており、新たに創出された仕事は、もはや繰り返しの日常業務ではなく、より魅力的なものになると見込まれています。 AIの影響を受ける労働力は、ますます多くの契約社員、フリーランサー、リモートワーカーで構成されるようになります。また、そこでは創造的な問題解決、分析的思考、対人スキルなどの人間固有のスキルセットが重要視されるようになります。しかし残念ながら、教育システムや社会的セーフティーネットはもとより、今日の労働者の大部分がこの変化に対してまったく準備できていません。 AI時代に向けて、人間の労働力を変革させるため、多くの戦略が生まれているものの、いまだに最良の方法についてのコンセンサスは得られていません。AIにおいて優勢に立つための競争が激しくなる中、将来への準備を今始めることは、企業、労働者、政府にとって非常に有益なことです。 雇用機会と仕事の変化に対する影響力。人間味のある労働者、クロスドメインナレッジのある労働者、教育者/解説者、デジタルエリートの仕事は、成長していくでしょう。一方、シングルドメインナレッジしかない労働者、肉体労働者、特定の能力のナレッジしかない労働者、ロケーションベースの労働者、コーディネーター、デスクごとに仕切りで区切られたオフィスでの仕事は、縮小していくでしょう。 ビジネスチャンスとギャップに対する影響力。自動化によって、報酬はデジタル知識のあるリーダーたちに流れるため、収入の不均衡は拡大し、十分な速さでスキルアップすることができない非デジタル労働者にしわよせが来ます。 世界経済と世界各国に対する影響力。自動化は、オフショアリング/アウトソーシングにディスラプションを引き起こし、変化する世界需要を相殺できる国内需要を創出するよう、各国経済にさらなるプレッシャーをかけます。 人間と機械の融合に対する影響力。仕事は、人間と機械の間の共生的関係によって決まることになります。この関係は、人間が主導し機械が実行する、という関係ではなく、ロボットと人間の間でリーダーシップ、意思決定、実行タスクを調和させることによって最もうまく所望の成果を実現する、という関係です。 AI連合国の状況 数十年の間、人工知能は、ビジネスの手法や人間の働き方にディスラプションを引き起こすことを通じ、その能力を示してきました。 AIは現在、すべてのメトリックスを上回っています。今日、50カ国が人工知能に投資しており、米国、中国、イスラエル、英国、カナダが主要国となっています。アルゴリズムだけでなく、あらゆる種類のユースケーステクノロジーに関する、500件以上の特許が2016年と2017年に公開されています。 AIに関しては、米国が多くの指標でいまだに世界をリードしていますが、急速に台頭してきているのは間違いなく中国です。現在、AI企業の11%が中国に拠点を置いています。中国のAIに対する野心を過小評価することはできません。同国は2030年までに、AIに関する主導権を握ろうとしています。そのため政府は、北京や天津で多額の資金を研究開発に投入しています。AI分野における中国の急速な台頭は、潤沢な資金に支えられています。ホワイトペーパーや北京市経済委員会によると、同国には現在、4,400社以上のAI企業があります。北京市内だけでも、1,000社以上のAI関連企業の本拠地があります。 人材 グローバルなAI競争は、企業の意思決定者に対し、確実に影響を与えているだけでなく、何十億とは言わないにしても何百万人もの人々の暮らしに対し、根本的な影響を直接及ぼします。AIによって、以前人間を必要とした多くの職務が間違いなく時代遅れになるものの、幸いなことに、同時に新たな機会も生まれます。課題は、新たなスキルセットを評価することではなく、労働者を確保しエコシステム全体を整備して、技術的なパラダイムシフトに備えることです。 AI人材に対する需要は、24か月間で2倍になりました。 人材の数は増加しているものの、いまだに不足しています(2つの職に対してAI専門家は1人)。テクノロジーサービス企業や金融サービス企業がAI人材全体の60%を吸収しており、学術界からの「頭脳流出」を引き起こしています。 企業は、専門家のモチベーションに合った雇用機会を再調整することで、人材を呼び込むことができます。 企業家にとっての重要課題は、人材獲得競争、トレーニングデータの利用制限、困難な実稼働対応テクノロジーの開発です。 世界経済フォーラムによると、必要なスキルには、聞く能力、話す能力、批判的思考力、読解力が含まれます。これらの能力は基本的なものですが、今後数年間、非常に有効な能力になります。逆に、修繕、インストール、トラブルシューティングといった業務は、将来性があまり高くありません。このようなスキルの多くは、機械に置き換えられることになります。 こうした変化は、労働者の役割に直接影響を及ぼします。さらに、企業、政府、その他の機関が今後下す決断にも影響します。課題は、各企業または各国にとっての利益だけでなく、人間全体にとっての利益に貢献する最良の戦略を決定することです。 国連(UN)は、ヘルスケアや交通輸送の分野において、AIが備えている「人間の幸福を加速する」能力によって、新たな事業機会が生まれるとしています。しかし、こうした機会には、潜在的なリスク、特に労働市場のディスラプションというリスクが伴います。国連(UN)は、これに対するセーフティーネット、諸制度、国家戦略を構築し始めるよう、加盟国に強く奨励しています。 技術スキルに大きなギャップがあることが間もなく顕在化するにもかかわらず、このことは十分に認識されていません。中でもトップエンジニア、機械学習人材、AI人材を求める争奪戦は、激しさを増すでしょう。未来の仕事における「スキルギャップ」は、教育システムに関する課題を反映するため、現在の教育システムを改善する必要があります。Google、Microsoft、Amazonなどの企業は、AIに多額の資金を投入しています。世界をリードしているテクノロジー企業の多くは、トップレベルのデータ科学者やエンジニアに対し、多額の報酬を支払っています。

生涯学習/生涯教育 AIによって、教育が拡大し自動化されるだけでなく、人間の創造力や思考力も高まります。企業が、生涯にわたるトレーニングプログラムを従業員に提供し、その従業員がAIテクノロジーに関する重要スキルを習得できるようにするのは大事ですが、同時に、教育従事者や学生を始めとする学術界の人員との関係を築き、AIに関するこの包括的アプローチがカリキュラムに最初から組み込まれるようにすることも重要です。まだ少数しか存在しないAI人材を育てるためのパイプラインを築いたり、AIは世の中のためになることに使用するという基本原則を教え込んだりすることによって、将来のAI思想家やリーダーを教育することも重要です。このような政策課題をサポートしたり、次世代のAIリーダーを教育したりすることにより、人材のためのパイプラインを築き始めることは、ビジネスリーダーの利益になります。

ギグエコノミー ギグエコノミーの台頭を受け、フリーランサー人口が急増しており、その結果、大量の予備人材プールが形成されています。フリーランサーは、次の仕事はないかと絶えず目を光らせています。正規社員よりも一生懸命働くフリーランサーも少なくありません。ギグエコノミーの発達によって、私たちは従来型教育の価値や、仕事に対するアプローチ方法を見直すようになりました。近い将来、アンコンシャスでAI制御された自律システムが、人間による人的業務や職場での貢献に取って代わるかもしれません。 Uber、Airbnb、Etsy、Didi TaskRabbitなどのプラットフォームが生み出され、ギグエコノミーが形成されました。ここでは非雇用のフリーランサーが、割り当てられた一定期間、労働力を提供しています。 米国におけるギグエコノミーは、すでに5,730万人のアメリカ人で形成されています。つまり、同国の労働力の36%が今やフリーランサーだということです。ギグエコノミーのノマドワーカーにツールやフレームワークを提供することが必要です。そうすれば彼らは、生産性の高い方法で革新を起こし役割を果たせるようになり、その結果、国や経済が発展します。ノマドワーカーは、テクノロジー企業で単に楽な仕事を求めているだけではありません。リスクも負っています。米国政府は、このリスクに報いなければなりません。私たちは、革新的なアイディアや技術開発の実現は四半期ごとの損益計算書に基づいているという進歩のない考え方を改め、その代わりに将来を見据えたイノベーションや技術的進歩を重視しなければなりません。

ユビキタスなアルゴリズム経済 次の段階のディスラプションは、アルゴリズム経済、すなわちAIとロボットによって引き起こされます。労働力の大規模ディスラプションが起こり、アルゴリズム経済が台頭します。 金融セクターでは、アルゴリズムが顧客サポート、ポートフォリオマネジメント、高頻度取引を行うようになり、ホワイトカラー業務がなくなってきています。また、ヘルスケアセクターでも、アルゴリズムによって、モバイルヘルスアプリの利用、ロボット外科手術、診断が行われています。 自動化が未来の仕事に与える影響は、無差別的であり、同時に合理的でもあります。ただし、この変化によって、まだ準備ができていない経営者が窮地に立たされたり、会社が危機に陥ったりする恐れがあります。この新しいタイプの自動化ソリューション(ロボットから機械学習やAIまで)により、きわめて広い範囲の機能が実現すると考えられます。 グローバルなビジネス環境は、必然的にデジタル化され、AI、ブロックチェーン、IoT、ロボティクスなどのディスラプションを起こす要因によって促進されます。これらの要因はすべて、強力な5Gワイヤレスネットワークによって接続されることになります。今年だけでも、1兆7,000億ドルがデジタルトランスフォーメーションに投入されますが、この数字は前年に比べて42%高くなっています。2021年までに、デジタル経済が世界経済の50%をけん引することになります。 特にAIによって、企業のビジネスへのアプローチ方法が、インテリジェントな自動化を通じて大きく変化しています。日常業務の自動化が普及すれば、今までの技術時代にはおそらく不可能だった、ビジネス遂行のまったく新しい方法が可能になります。 例えば、AIにより、企業は販売時点以外でも、顧客との関わり合いを持てるようになり、その結果、ブランドも顧客もメリットを享受することができます。顧客は今後、ブランドのAIを活用できる機能を期待するようになります。ちょうど今日の顧客が、主要ブランドに対し、質問に答えてくれたり、商品別の問題を解決してくれたり、新製品を提供してくれたりするウェブプレゼンスやソーシャルプレゼンスを期待しているのと同じです。 新たな時代では、AIによるコグニティブAIエージェントによって、ユーザーとの対面業務が自動化されます。こうしたコンバージェンスの盛り上がりを受け、ユーザーは、高度なサービスを通じてメリットを享受するようになり、一方、業務効率は最大化されます。

自動化された世界 人工知能はますます、生活の多くの部分で利用されています。例えば、ロボット、ドローン、自動走行車は、AIを活用することで、これまで人間が担ってきた機能を自動化します。自動化されるものが増加するにつれ、スタンドアロンのインテリジェント機能は、共同的なインテリジェント機能に移行していくことが予測されます。そこでは、複数のデバイスが、人とは関わりなく連携され、あるいは人間のインプットを介して連携されます。 自動化は、引き続き革新的なアプローチであり、すでにさまざまな産業で導入されています。技術者不足やオートメーションの点から、自動化は、特に運送、小売、ヘルスケア、バンキング・金融のサービスに幅広く採用されてきています。2019年には、バックオフィスの自動化や日常的な管理業務において、大きな進展がみられるでしょう。ソフトウェアロボットや人工知能労働者の概念は、特にクラウドが成熟するときにこそ普及します。多くの企業において、ロボティクスプロセスオートメーションのおかげで面倒な作業がなくなり、そこから解放された従業員は、もっと重要な仕事に集中できるようになっています。自動化の要であるロボティクスプロセスオートメーション(RPA)は、面倒なバックオフィス業務を行うために開発されたものです。こうした業務は、反復的なものであり、ロボットによって自動化することができます。また、RPAとは包括的な用語であり、例えばデータ入力からコンプライアンス、トランザクション処理、顧客オンボーディングまで、幅広い作業が含まれています。RPAは今日、各業務や自動化ジョブを変革させるテクノロジーとして評価されています。2019年には、近くにいる人間からの指示によって動作する半自動ロボットの数は、いっそう増加します。さらに、公共部門におけるRPAは増加し、各国政府はRPAから新たな事業機会を見出すでしょう。すべてのRPAがAIをベースとしているわけではありませんが、その多くが、画像認識と言語処理をそのソリューションに統合し始めています。機械学習のインテリジェントベースのワークフローソリューションが、いろいろなセクターで、さまざまな度合いで導入され始めています。 WorkFusion社は、本人確認やマネーロンダリング対策(AML)のプロセスのようなバックエンドオペレーションを自動化しています。 ユニコーン企業のUiPath社のサービスは、世界各国において、金融業から製造業や小売業までさまざまな業界で、700以上の企業クライアントに利用されてきました。主なクライアントには、DHL、NASA、HPなどが含まれます。 RPA界のもう1つのユニコーン企業がAutomation Anywhere社です。同社は、あるグローバルバンクとパートナーシップを結び、機械学習を利用した、人材資源管理の自動化サービスを提供しています。 上記Automation Anywhere社の「IQ Bot」は、さまざまな国のいろいろな言語で記述された各種フォームからデータを抽出してクリーニングし、次いでそのデータを人事管理システムに自動的に入力することができます。

ヘルスケア業界 AIが最も効果を発揮する業界は、ヘルスケア業界だと思われます。ロボット「外科医」から、スマートデータベースまで、AIや機械学習がもたらす可能性には目を見張るものがあります。 成長し続けるIoTエコシステム、膨大なデータ、生活を一変する可能性のあるアプリケーションを考慮すれば、AIは今後もヘルスケアの進化を促進していくことでしょう。この業界のデータ量は、2013年には500ペタバイトでしたが、2020年には25,000ペタバイトまで爆発的に増加すると予測されています。 このテクノロジーがヘルスケアにもたらす主な効果の1つに、効率性の向上があります。例えば、米国テキサス州のヒューストンメソジスト研究所のAIプログラムでは、人間の30倍の速さで、何百万ものマンモグラムを検査することができました。しかも処理された診断情報は、99%の高精度を示しました。 AIは人命も救います。Cloud Pharmaceuticals社のような企業は、このテクノロジーを利用することにより、新薬を発見し、パーソナライズされた治療法を市場に短期間で投入しています。さらに、IBMのワトソンは、がんの診断を人間よりも正確に実施できることを証明しています。東京大学のある医師によると、人間の医師が発見できなかった稀なタイプの白血病を、AIシステムが見事に見つけたという事例もあります。 ヘルスケアにおいて、最も驚くべきAIの能力はおそらく、テクノロジーと人間の生態とのさらなる融合です。ハイブリッドヒューマンが生まれるのももうすぐです。 AIが進歩することによって、埋め込んだチップが体内の自律システムをコントロールする道が開かれようとしています。脳内反応によって作動するチップにより、バーチャルリアリティーを通じて視覚を拡張したり、記憶機能を拡張して記憶能力を改善したりできるでしょう。

農業業界 AIによって仕事が増える可能性のあるもう1つの分野が農業です。新たな作業カテゴリーである「精密農業」では、AI(ドローン、スマート農機、GPS)を活用して、土壌組成、水分レベル、肥料の必要量に関する特定農地のデータを収集することにより、収穫量の最大化を図っています。ドローンテクノロジーのスキルだけでも、その需要は14%上昇しています。 精密農業におけるドローン市場は、2021年には29億ドルに達すると見込まれています。ドローンは、農業従事者のために農地の地図をつくり、サーマルイメージングにより水分含量をモニタリングし、病害虫に犯された農作物を特定し、農薬を散布することできます。 スタートアップ企業やエンタープライズ企業は、サードパーティのドローンが取得したデータに対し、アナリティクスレイヤーを加えることに注力しています。また、コンピュータービジョンを使って衛星写真を分析することにより、農作業の状況をマクロレベルで把握することができます。地理空間データを利用すれば、世界中における農作物の分布パターンや、気象変化が農業に与える影響に関する情報を得ることができます。

労働力戦略の拡張 AIに依存したこの新しい環境は、企業やその従業員に対し、さまざまな問題を提起します。進化する技術的環境内における労働者のニーズに応えるには、拡張戦略が不可欠な手段になります。 企業は、自動化ポートフォリオを管理する方法、リーダーシップスキルを構築し磨く方法、従業員の価値を最大化させる方法、ロボット工学指数を高める方法を検討すべきであり、また、未来の仕事に備えるために、自ら学習していく企業体を創出することができます。 これから到来する技術的未来に向けた技能の再教育についてみると、従業員の54%が何らかのトレーニングを必要とし、そのうちの10%が1年間以上のトレーニングを必要としています。また、世界経済フォーラムの調査により、ある問題が存在していることが分かり分かりました。それは、雇用者は、イノベーションによって作業が著しく妨害される影響を考え、該当する従業員に対するトレーニングに資金を投じないということです。実際、優先的にトレーニングの対象となるのは、大きな利益を生み出す職務についている者や、リーダーや仕事の第一線にいる者です。では、この問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。拡張戦略によって、解決することができます。 拡張的アプローチでは、人が持っているスキルを十分活用するため、業務計画を人間に合わせて立てなければならない、と考えます。拡張戦略では、自動化ベースの労働コスト削減に集中的に取り組むのではなく、テクノロジーによってしばしば補完される、人間労働者によるさまざまな創造的活動を考慮に入れます。反復的な日常業務から開放されたとき、人間独特の能力をもっと有効活用できるようになります。

ディスラプションの理解に関するギャップ LinkedIn社の調査によると、2022年までに、テクノロジーの発達により、世界中で7,500万人分の職がなくなるとみられています。しかし、その同じ期間内に、テクノロジーの力によって1億3,300万人分の職が創出されると見込まれています。 McKinsey社は、労働者全体の30%が、テクノロジーの発達によって仕事を失い、ほかに14%が仕事を変えることを余儀なくされると報告しています。 ZipRecruiter社は、AIは中間層の仕事を奪っていないと分析しています。同社のレポートによると、一部の技術職のスキル水準が上がる中、2016年から2018年の間、低所得層の雇用機会よりも中間所得層の雇用拡大の方が上回っていることが分かりました。また、2017年から2018年の間、学士号を必要とする雇用の伸び率よりも、高校の卒業証書さえあれば就ける雇用の伸び率の方が高かったことが分かりました。 ZipRecruiter社の調査では、AIが創出する仕事数よりもAIが奪う仕事数の方が多いと考えている求職者が58%に上ることが分かりました。同社は、2018年中、AIによって奪われた仕事数の約3倍の仕事が創出されたことを明らかにしました。 調査によると、雇用者はAIツールをすでに利用しているものの、その81%が、完全な自動化システムを導入するよりも、人間を雇うことを希望していることが分かりました。こうしたトレンドが示しているのは、雇用市場におけるAIによるディスラプションは、さらなる収入の二極化にはつながらないということです。 しかし一方で、Forrester社は、AIによるディスラプションにより、2030年までに29%の仕事が失われ、その間わずか13%の仕事しか創出されないと考えています。AIスキルに対する需要が拡大し続ける中、ジェンダーギャップや不平等を引き起こすリスクが生じています。アルゴリズムは暗黙のバイアスを反映している場合が多いため、インテリジェンス自体が、それぞれの分野や環境の間で、不平等を拡大させる可能性があります。 BloombergとNew America(ワシントンを拠点とするシンクタンク)によって組織された調査委員会であるShift Commissionによれば、AI業界のウォッチャーや専門家は、自動化の進行に起因するディスラプションによく精通していますが、ディスラプションの影響が最も強く感じられるコミュニティ内では、この問題はあまり明確に定義されていません。「Automation 101」のリソースとされているこの委員会は、地域自治体のリーダーたちとの議論やシナリオプランニングセッションを通じ、自動化とAIの仕事への影響について調べており、また、フェニックスとインディアナポリスの両都市とともに試験的な研究プログラムを実施しています。国内のコミュニティリーダーとの会議の際に報告された委員会の暫定的な調査結果によると、各リーダーのシステムのほとんどは、実際のリスクを理解していませんでした。さらにやっかいな問題は、全員が最初の印象としてディストピア(暗黒郷)を思い描いていたことです。2030年の仕事像に関するストーリーラインについて尋ねたとき、最も多い答えがハンガーゲームでした。委員会の各セッションの中でも、このことは非常に印象深いことでした。この委員会は、教養が高く、高い権限を持っている人たちで構成されていたにもかかわらず、未来についてディストピアを思い浮かべる傾向があったからです。 また、「白人男性社会」では、AIを十分に活用することはできません。 この委員会の調査から得られたもう1つの知見は、自動化による影響に対して最もうまく対処できると思われるコミュニティ組織が、必ずしも、大学やコミュニティカレッジのシステム、NGO、市役所のように基礎部分から統合されているわけではないということです。こうした一連のシステムそれぞれにおいて何らかの取り組みがなされていますが、この問題についての認識には若干ずれがあります。必ずしも次のステップが明確化または計画化されているわけではありませんが、現在の状況はどうなっているのか、これから何を実行できるのかについての情報を提供することが、本当の意味での最初のステップです。

企業内での個人用AIの成長 企業は、従業員がAIを活用して創造的、効率的になれるよう、支援しなければなりません。100年の歴史を持つ象徴的なブランドは、テクノロジーを利用してイノベーションを起こすことに関して、柔軟性と活力にやや欠けるとみなされています。事実こうしたブランドは、失敗するリスクを恐れるあまり非常に用心深くなっているため、変化することを避けています。教訓として、会社の資源を目先の業績のために投入するのではなく、従業員のために投入すれば、従業員は失敗を恐れずに挑戦できるようになります。 組織が直面するもう1つの大きな課題は、「現状満足」シンドロームです。AIによってプロセスを改善できる大きな余地があることを進んで認めるようになるまで、企業は、革新的なデータ主導型プロセスを構築、実施するための権限を従業員に与えようとはしません。企業は、傍観しているわけにはいきません。 Forrester社によると、AI、IoT、ビッグデータを活用する企業によって生み出される経済的変化は、2020年までに年間約1兆6,000億ドルに達します。これは、世界の歴史の中で最大の経済的変化であり、その規模は、ほぼオーストラリアのGDPに相当します。これだけの規模の経済が、一部の企業から別の企業に移り変わります。 企業は生き残るために、AIのための投資と企業哲学の変更を開始する必要があります。さもなければ、存続できなくなる恐れがあります。企業が生き残るためにはテクノロジーベースの投資をしなければならない、ということが明らかになったら、今度は、人間がテクノロジーの上に立つ、という哲学を、経営からリーダーシップ、チームダイナミクスまで、ビジネスのあらゆる側面に適用すべきです。企業は、拡張されたデジタル労働力を先導するために使用する、次世代の管理手法を開発することに注力しなければなりません。 従業員を雇用する前にも、すべての教育レベルで、AIやテクノロジーをベースとした教育を実施しなければなりません。これには、新たなテクノロジーの利用法を見つけ、仕事のために進んで学ぶことができるようにすることが含まれています。人は、雇用に基づく役割や業務に適用されるからこそ、新たなテクノロジーを学ぶのです。

従業員の採用と確保に関する戦略 最新テクノロジーによってビジネスの手法が変化する中、企業が従業員の採用と確保について再検討すべきときがきました。残念なことに、デジタルトランスフォーメーションをやり遂げようとしているのに、多くの企業がいまだにデジタル化以前の時代の考え方によって業務を行っています。人や組織に関する考え方は、世界におけるデジタル化の変化にまったくついていけていません。 主な懸念の1つに、企業がどのようにしてテクノロジー人材をほかの業種に適合させるのか、ということがあります。こうした役割やスキルセットを交差させることは簡単ではなく、すべての従業員を同じ部屋に入れるという従来のアプローチでは不十分です。適切な人材を雇用するためのカギは、1つの才能を持つ者を雇うのではなく、代わりに複数のスキルを持つ者を雇うことです。 AI志向の人材を採用する際に直面するもう1つの課題は、人材確保の成功要因と失敗要因を再検討することです。組織は、特定の年数にわたって、人材を雇用し確保することを計画するのではなく、前世代よりも頻繁に、役割間で人材を入れ替えることを想定する必要があります。企業は、周期的なニーズに基づいて雇用活動を行うとともに、こうしたニーズが生じる時期を予測し、適切な人員配置を確保すべきです。企業は、部分的な人材プールを社内に確保したり、一部の人材をクラウドソーシングによって外部から調達することができます。企業が確保したいと考える人材は、業績を左右する人材のはずです。今日の従業員は、業務チームの一員になりたいと考えており、デスクごとに灰色の仕切りで区切られたオフィスで働きたいとは思っていません。会社とともにありたいと考えています。これは、人材確保のために最も重要なことであり、給与や職場文化よりもずっと大切なことなのです。特にミレニアル世代は、仕事を始めてから6カ月以内に、自分の業務が会社に影響を与えることを望んでいます。 多岐にわたる教育を最大限に実践したり、従業員を考慮した職場哲学があったとしても、テクノロジーによって従業員を支援することが、従業員自身の頑張りと同じくらい、企業に成功をもたらす要因となります。数学的処理も、データアナリティクスも、コンピューティングも、標準的な個人の能力を超えることはできません。発生しやすい障害要因は、従業員が新しいことに挑戦せず、既存の日常業務に留まろうとすることです。進んで学び、奮闘し、何度も挑戦する従業員こそ、テクノロジーによって支援すべき従業員です。企業はそのような人材を見つける必要があります。

デジタルトランスフォーメーション 本当に強い企業は、デジタルトランスフォーメーションに対し、すでに準備が完了している企業です。 企業がテクノロジーを利用して達成したいと望んでいることと、実際に達成できることとの間には、ギャップがあります。必要な再構想、イノベーション、リエンジニアリングにはかなりのプロセスが必要になります。実際、例外はほとんどなく、電気モーターに投資した工場の99%が倒産しています。これらの工場は、投資からのリターンをまったく得られませんでした。失敗した理由は、新たなテクノロジーを活用するためのプロセスを再構想しなかったからです。古い巨大な蒸気エンジンを、新しい別の巨大な電気エンジンに置き換えただけで、製造過程は何も変わらなかったのです。 企業がAIイノベーションを適切に推進するためには、変化に対する抵抗勢力に打ち勝つ必要があります。積極的関与、リーダーシップ、信頼の3つの側面は、企業文化を考える場合において、きわめて重要な側面です。企業はまず、この企業文化に関する3つの側面を周知させなければなりません。従業員が不満を抱いている、会社を信用していない、リーダーを信頼していない、仕事の方法がまったくわからない、会社とのつながりを感じることができないならば、ほかのあらゆるものがうまくいかなくなります。 AIで成功するにはまず、AIとそのさまざまな意味合いを理解しており、適切な投資決定ができる、組織のリーダーシップが必要です。AIの意味合いを理解していなければ、さまざまな場面で誤った決定を下してしまうでしょう。投資や雇用、優先順位を決定する際に誤った判断をすることになります。最新テクノロジーについてこの10年間を振り返ると、最新テクノロジーが定着するまで、イノベーションが普及するまで、イノベーションがその価値を上げるまで長い時間がかかりました。なぜ長い時間がかかったのか。端的に言えば、大抵の場合、最新テクノロジーは誰かの所有物であり、それを開発した技術者の個人的情熱から生まれたプロジェクトであり、そして技術者たちはそれ以上のことを望んでいなかったからです。私たちは時間をかけて、飛躍的に進歩する技術を理解する必要があります。 仕事の質を向上させるには、技術教育を誰でも受けられるようにして、技術教育を主流化する必要があります。先進国においても発展途上国においても、政策立案者や指導者は、AIについてほとんど理解していませんでした。また、市民社会、指導者、宗教指導者のいずれもが、今よりもはるかに高いレベルでAIを理解する必要があります。AIについて、誰もが当事者意識を持つことが必要です。それどころか、企業や政府は、人々がテクノロジーから切り離されないようにする方法を考え出す必要があります。 大規模企業全体にAIをスムーズに導入するには、さまざまな方法があります。最も重要なことは、最初にエバンジェリスト(伝道者)を指名することです。エバンジェリストの役割は、AIのメリットを企業全体に教えることです。エバンジェリストは、強力なビジネスケースをつくり、従来型デジタルエコシステムをオーバーホールすることによって、段階的な変化を一気に省いてくれます。 いったん企業が全面的な組織改革の実施を決定したら、縦割り構造を緩和するためにチーム構造を見直すことが重要です。情報が遅延なく速やかに伝播されるようにすれば、その企業は必要に応じて順応することができます。これにより、クイックウィンを楽に実現できます。少なくとも、行っている業務に関する信用と信頼をある程度蓄積するためには、十分な数のウィンを提示できるようになる必要があります。 最終的に企業は、AIの導入によってビジネス価値が提供されていることを証明する必要があります。「どのようにビジネス価値を測定すればいいのか」ということに関して言えば、「AIは、どのような収益をもたらすのに貢献したのか」、あるいは「AIは、経費削減のためにどのような収益をもたらしたか」といった典型的な財務に関する質問に答えることになります。AI戦略を維持するためのカギは、特に、過去の測定値が直近の価値を証明しているときに、主な意思決定者との信頼を築くことです。企業のエバンジェリストが、こうした投資によって最終的にはROIが上昇することを経営幹部に納得させることができれば、経営幹部は、一般的な四半期ごとの投資戦略ではなく、より長いスパンで投資を考えるようになります。

人間とデジタルマシンの役割 人間とAIが将来、チームを構成したり、コラボレーションしたりすることを考えた場合に注目されるのが、AIによって「拡張された」人間です。市場には、Amelia、Alexa for Work、Google Duplexの進化などのインテリジェントエージェントがあります。また、Alibaba、Xiaomi、それからBaiduやHuaweiのような企業も、AIアシスタントを投入し、その機能によって、人々がよりパーソナライズされた形で生活し、働き、成功できるよう、支援したいと考えています。AI搭載製品やパーソナルアシスタントは、「親交」を持てるレベルに到達してきており、AIは人間関係にまで影響を与えるようになっています。 拡張された人間は、物理環境またはデジタル環境としてスマートスペースを利用することになります。ここでは、接続され、調整され、ますますオープンになってきているインテリジェントなエコシステム内で、人間とテクノロジー対応システムが相互にやり取りをします。人、プロセス、サービス、モノなどの複数の要素は、スマートスペースに集まります。その結果、対象の人々や業界シナリオのために、よりイマーシブかつインタラクティブな自動化体験が実現されます。Society 5.0では、堅ろうなスマートスペースの提供が加速される時代が来るでしょう。そのとき、従業員、顧客、消費者、コミュニティメンバー、市民のいずれにとっても、テクノロジーが日常生活の中で必要不可欠な要素になります。 AIが既存の人間の労働力に完全に取って代わるため、AIがもたらす変化はプラスマイナスゼロだと考えるのは、あまり建設的とは言えません。現実では、ほとんどの場合、人間とデジタルの同僚とでハイブリッドチームが構成されています。この新たなパラダイムの下、本質的な事業機会が提供されるだけでなく、企業や世界に対するいくつかの課題も生じます。 人間とデジタルマシンのチームを促進する際に直面する課題 新しいモデル:ハイブリッドモデルと拡張には、新しい組織体制の構築と検証が必要です。 バイアス:AIモデルの質は、入力されるデータの質に比例します。人々の生活に直接影響を与えるシステム内で、エンジニアの持つバイアスを取り除く最良の方法については、まだ完全な答えはありません。 実行:日々の業務を中断することなく、劇的な変革を実行し、プロセスを実際に改善するにはどうすればいいのか。 グローバルインパクト:実際にAIを強化し浸透させるために、誰もが情報とデータにアクセスできるようにするにはどうすればいいのか。 最初に自動化するものは?最初にすべき最も重要な決断は、リソースを使って自動化する職務を決めることです。コストに基づくか、人々への影響度に基づくか、または逆選択に基づいて決める必要があります。 人間は、労働力としての存在を超えるものであるということを心得ておかなければなりません。誰もがアイディア、知見、観点、深い創造的才能を備えており、これらはマシンやソフトウェアでは再現することはできません。今日の課題は、自らの戦略を再定義し活用するとともに、人間の真の創造的潜在能力を役立てることです。

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