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11月15日 BONNIE PINKアルバム再現ツアー Vol.1 「Let go」

BONNIE PINK Billboard Live 2024 アルバム再現ツアー Vol.1 「Let go」

「赤毛生活に疲れて、塞ぎ込んでしまっていた頃」、自分自身を取り戻すため単身ニューヨークへ渡り、数年生活していたことがあるとボニー。そのお休み期間を経て制作されたのが、2000年にリリースされたアルバム「Let go」である。

このアルバムは、ボニーがラブコールを送り続けていた音楽プロデューサーのミッチェル・フルームとの邂逅によって誕生(制作はロサンゼルス)、またレーベル移籍後初のアルバムなのだけど、何よりアルバムのジャケットに写る彼女の髪が「赤毛」から「金髪」に変わっていたことが、実際に「Let go」を目にした当時の私にとっての大きなインパクトになった。

再現ライブなので、セットリストはアルバムの曲順通り+(「Let go」と同時期に作られた)アンコール1曲。当時抱えていたであろう心の葛藤を描いたような暗い曲もチラホラある一方、NYで暮らすうちに徐々に解き放たれていった心境の変化が読み取ることもできる。そのひとつが、ボニーが「Let go」の制作からギターを弾くようになったことだなと私は感じた。このライブでは基本的にギター弾きっぱなしで(普段のライブではあり得ない)、しかもエレキギターを弾く姿は、20年以上彼女のライブを観ているけど初めてだ。

アルバム「Let go」は私自身も20代の頃に良く聴いていたこともあって、奮発して1st Stageと2nd Stageを続けて観たが、その頃の自分がどうだったとかライブ中あまり考えなかった。なぜなら、とにかくボニーのアルバム制作時の思い出話が尽きないからで、中でも「アルバム制作時は20代後半で大人に囲まれながら作ったけれど、今はその回りにいた大人たちと同年代になったから、再現ライブをするなら「Let go」だ と思って決めた」という再現ライブに「Let go」を選んだ理由は大いに頷けるものだった。これは完全に演奏の力、再現性の高さによるもので、楽曲そのものの魅力が全放出されていたこと、そして観ている私にとってライブで初めて聴く曲も多かったことが大きい。かつて散々聴いてきて今もソラで歌える曲もあるのに、ノスタルジーに浸る暇はない。

でも、強いて言うなら、90年代後半から2000年代の頭(だいたい高校から大学を卒業するまでの間と重なる時期)が、私が一番音楽を聴いていた時期だったので、その頃のバンドサウンド(ギターサウンド)が自分の趣味嗜好の軸になっていることを再確認したくらい。あとは1998年リリースのアルバム「evil and flowers」あたりに読んだ彼女のインタビューの内容がちょっと暗かったことを覚えていて(「プロデューサーのトーレ・ヨハンソンとのスウェーデンでのレコーディングは孤独だった」とかそういう内容)、だから赤毛から金髪になってジャンプしているジャケットを見て「なんか…よかった」と安堵したことを思い出した。「Let go」以降の曲にも救われてきた私としては、もし彼女が休養後に引退を選んでいたら…等と考えてしまい一瞬ウルっと来てしまったくらい。

とにかく、ボニーのとても大切な時間を音楽と共に振り返ることができたことが私は嬉しかった。そして、来年デビュー30年を迎える彼女にとっても、意味のある再現ライブになったと思う。またボニーもMCで触れていたことだけど「アルバム1枚通して聴くこと」についても考えさせられた。

そろそろフジロックのレジェンド枠(スタレビとか鈴木雅之が出た時間帯)に出演して欲しいなと思った。BONNIE PINKといえば「A Perfect Sky」だけど、この曲が誕生するまでの過程で生まれたあらゆる曲は、何をどう考えても名曲ばかり。彼女の曲を知らないことを、私は本当にもったいないと心から思う。


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coco
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