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ヒヤシンスハウス

 学会の合間に、ヒヤシンスハウスに行きました。
 ヒヤシンスハウスは、詩人で建築家の立原道造が設計した小さな家です。わずか10畳ほどのその小さな家は、さいたま市の中心部、緑豊かな別所沼のほとりにありました。

 今年前期の「国語科教育実践研究」の授業で、学生さんと一緒に堀辰雄の「美しい村」を読みました。その作中に、立原道造がモデルだとされる建築家が出て来るのです。
 「美しい村」は、昭和初期の軽井沢の風景と人々、その地での淡い恋を描いた作品です。これといった事件も起こらない静かな作品を、一緒にゆっくり読んでいくのは、至福の時間(私にとって)でした。

 ヒヤシンスハウスの中に入ると、大きな窓に面した細長い木の机と椅子、ベッド際の小窓。そこは、一日中ここでずっと本を読んでいたいと思うような空間でした。あの時の学生さんたちは、みんな本好きでしたから、きっとここを気に入ることと思います。

 「美しい村」の透徹した語りと描写。この小さな家のたたずまいに、堀辰雄と立原道造の間に流れていたものが、形となって現れたようにも感じられたのでした。

 このヒヤシンスハウス、建てられたのは2004年です。24歳で亡くなった立原が遺した設計図を元に、有志の方々によって、立原の望んだ別所沼の地に建てられ(沼の反対側にはなりましたが)、維持されているのだそうです。浦和の方々、素晴らしいです。

 背の高いメタセコイヤに囲まれた、休日の別所沼のほとりでは、人々が思い思いにのんびりと過ごしていました。


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