関係性に名前を発見した時の話

「はいどうぞ。おまちどうさま」
お店の前。ぼんやりと待っていればジュースを二つ、差し出された。
小銭を払って、引き換えにジュースを受け取る。少し前にここを離れた彼が戻ってこない。仕方がないので少し脇にずれて、店の横でジュースを飲みながら待つことにした。
「お連れさんは兄妹?」
手持ち無沙汰なのか、店番をする奥方はニコニコと世間話を振ってきた。 その言葉に首を傾げて、私達はどういった関係性なのだろうかと思いを馳せる。
彼──アレックスは優しい。
それがどういう優しさなのか、その意味を図るのはやっぱり関係性を考えるのと同じだ。アレックスからの言葉や行動は、いつも優しさが滲んでいる。
彼の隣は心が落ち着くのだ。戦闘時は暴風のような破壊力をみせるのに、剣を手にしていない時の彼はあまりにも無害。それどころか癒しの手すらある気がする。切り替えの差が激しい。
旅の同行者である私に対しては、同郷のよしみのような、今言われたような兄妹のような。私もそばにいるとホッとして、のびのびと振る舞うことができる。甘えているという自覚はあった。
「兄妹じゃないわ」
何となく答えは見つからなくて、店番の女性に笑ってみせる。
「あらそうなの? ……あ、噂をすれば」
「ヴィー。待たせたな」
彼女がそう言った時には、アレックスはもう傍にいた。店の前には緩やかな人の波があったというのに、難なくかきわけて横断できたようだ。確かに背の高い彼には造作もないだろう。
「そんなに待ってないわ。はい。お疲れさま」
「ありがとう」
「仲良しねー。兄妹みたいだけど違うんだって?」
女性の言葉に、アレックスが頷く。
「同じ旅をする友人です」
そう答えると、私の手から空のコップを取り上げて、美味しかったと店番に一緒に押し付けた。空いた私の手を握って、「行こう」と促されるまま歩き出す。
「……アレックス」
「どうした?」
「私たち、友達だったのね」
「…違うのか?」
「いいえ。嬉しいわ」
「……そうか」

(いいわけ)835字。旅をしているだけの仲間じゃなくて、親愛なる友人という共通認識を得た時の話。

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