ずっと九月の夜でいいのに。
いい天気だ。真っ暗な空を見上げてしみじみ思う。
雲一つない空。街灯に霞んで星はあまり見えないけれども、月はピカピカと輝いている。
片手に握っているスマートフォンを確認すれば、今の気温は23度。スポーツドリンクを口に含めば、甘くてすっきりした味が美味しくて自然と喉の奥を通っていく。
いつだってこんな穏やかな夜だったらいいのにと、不可能なことを知りながら目を瞑る。何にも邪魔されない、一人きりの静かな時。
ふとスマートフォンの通知音が響いた。目を開けて片手で操作すれば、友人たちとのグループチャットが動き始めたらしい。会話の内容は予定を合わせて食事に行かないかというものだった。
ピコピコと流れる通知を受け流し、相槌をときおり打ちながら会話の流れを見守る。五人で形成される流れはいつも通り。指定される日時に返事をして、そのままカレンダーアプリに登録する。
一週間後の今頃はみんなとご飯かあ。みんな元気かなと思いながらスマートフォンをポケットにしまう。
もう少ししたら中に入ろう。明日も仕事だ。支離滅裂な客の文句を聞いて、書類を作って、電話をして、上司のご機嫌具合をはかる。何の変哲もない文字通りのルーチンワーク。また意味のわからないストレスに晒される空間にわざわざ早起きして向かわなければいけないのかと思うと、身も心もだるくなってくる。大半の社会人がそんなストレスを抱えながら電車に乗るんだから、そりゃ揉め事も起こるし空気は悪いというものだ。
部屋に戻り、窓の戸締まりをしてカーテンを閉める。流れ作業で照明を消して、ベッドに潜り込んだ。ぱっちり冴えた目で天井を見つめる。
ずっと九月の夜でいたらいいのに。夜も明けないまま、恋人達は抱き合ったまま、明日に絶望しないまま、二度と夢から醒めないまま。
おはようの言葉なんて忘れるぐらい必要がないまま、この世の中ごと眠ってしまえばいいのだ。
(いいわけ)790字。ついに字数制限内!! 今日の分はできたら今日書きます。
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