街で足止めされた時の話
「たっだいまー……って、ん?」
暇潰しの散歩帰り。とっていた宿の部屋に帰れば、珍しい光景が広がっていた。
「しー……」
人差し指を立てて、静かに、という合図をするルーク。その側で机に突っ伏して寝ているのはもう一人の幼馴染だった。ルークがかけてやったのか、その身体には肩まで掛布がかかっている。理解した。
入室のために開けたドアをバカみたいにゆっくり静かに閉めて、床に重みを与えないように軽やかに歩く。木製の床を鳴らさないように歩くのはちょっと骨が折れた。
「……めずらしいな」
「そうだな。昨夜、久し振りに夜中に目が覚めたって言ってた」
そういや朝から眠たそうにしてたな。そういうことか。
俺達が規則正しい生活を行っているのは、ひとえにリオノーラの号令があるからだ。ルークは朝に弱いし、オレは早起きが苦手。二人して朝から叩き起こされているのが常だ。
今日の朝はオレが一番に起きたからぐだぐだだったけど…それなら納得する。
「街道の状況はどうだった?」
リオを起こさないようにだろう。ルークが椅子から立ち上がって入口側に移動する。オレもつられて出入口に一番近い自分のベッドに腰掛けた。
「ダメだ。しばらく封鎖されるなありゃ」
「原因は?」
「馬車事故。死人が出てる」
「…厄介だな」
あけすけに物を言うな。オレも同じだけど。
人が死んだ時は、神官を呼んで早急に弔いをする必要がある。人間であれ動物であれ、死体は放っておくと魔王に取り込まれて魔物と化してしまうためだ。
弔いと浄化の儀式には一番簡素なものでも一日以上かかる。日が出ている間、月が昇っている間とそれぞれやることが違うからだ。このあたりはなんちゃって神官のルークの方が詳しいだろう。
「リオには、」
「言わねーよ。分かってんだろ」
「そうだな。悪い」
リオはオレたちの中で一番まともだ。まともだからこそ、一番心が揺れやすい。幼馴染を傷つけない方法ぐらい、とっくに分かっている。
一度目蓋を開けた幼馴染を横目で見ながら、あと一日どうやって暇を潰そうかなあなんて考えていた。
(いいわけ)864字。RPGのルークとコーン。ルークは自分なりにリオノーラを気遣っているしコーンもそれに付き合っているけど、リオノーラは間が悪いという話。
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