思考より言葉のほうがよほど賢しく、意味だけとなった残骸は容易く人間を支配する。
本能よりも哲学的なものは、まだこの世界に存在を確認されていない。
パラレルパラソルp??「世界の解剖法」より
(生まれ変わりの有無、その可否については未確認、天国に問い合わせ中です)
──急停車します、ご注意下さい。ところで、この世界に絶対はないのかな。
少なくとも、言葉には意味はない。正確には、無かった。「あ」は「あ」であって「あ」以上でも以下でもなかった。故に思考を差し挟む余地が無かった。余白は愛でられていたのに。
──のに?
人間が味付けしたんだよ。言葉の首根っこを捕まえて紐付けたんだ。生きるために。生き延びるために「あ」に意味を持たせたんだ。
「あ」には、例えば「一つの」という意味がある。または「亜」を読みたいときにルビを振ると「あ」になるね。若しくは何かに気づいた時に「あ」と口にする人も多いでしょう。なんらかの気づきを示唆するもの、「あ」にはそれが込められた。
──なんだか、夢の話みたいだ。
そんなことはどうでも良くて、この電車はどこへ向かうの?
──知らない。訳もなく切ないから。
切ないと、泣くのかい。泣くから切ないのかな。
──そんな問いは嫌い。知恵比べなんて今どき猿の所業だよ。つくりものの脳みそみたいで、せっかく認識した世界に申し訳ない。
そう。この電車は遠くまで行くのだね。僕らを連れ去ってくれるんだ。どこまでも、どこまでも。
──もう忘れたの?
いや。間違いなくこれは「あ」の逃避行だ。どこにももう「あ」はいない。「あ」はもう、どこにもないんだね。
×いしてるよ。×いしてる。とても。
──私も、×いしてる。こんな世界、早く解剖したい。
僕らならできるさ。この電車と僕らの呼吸、どちらが先に終着するか、とても楽しみだね。
よくぞここまで辿りついてくれた。嬉しいです。