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その時少女が見たものは

そうかお前には
本当の名前がないのか
そしてそのことを
悲しんでいるのだな

そうかお前には
確かな明日がないのか
そしてそのことに
怯えているのだな

あの日起きたあのことを
フィクションにしたがっているのだな

あの日絶えた人のことを
何もかも忘れ去ろうとしているのだな

その時少女が見たものは
愛を言い訳にした兎の裏切り

その時少女が委ねたものは
破瓜の言葉より激しい衝動

その時少女が決めたことは
死ぬまで生きていくということ

その時少女が願ったことは
「誰か名前をつけてください」

祈りは干上がり
真夏の太陽が
ギラギラ笑いながら
想いの残滓を照らしている

ああ それこそが 光 だと
あたしの欲しかったものだと
気づいた時にはもうすでに
どこにもそれがなくて

そうか あたしは
泣いていいんだな
怯えていいんだな
こんな季節ならば
コンチクショウと
渾身の力をこめて
泣いてやる
怯えてやる

「はじめまして」

あたしがそう口走ると
夢の中で殺したはずの母が
ざぁざぁスコールになって
私の胸をおかした

#詩 #現代詩 #文縁の友 #予告通り

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笹塚 心琴 【B-47】文学フリマ東京39
よくぞここまで辿りついてくれた。嬉しいです。