見出し画像

「運営の怖さ」は正しい感情

オンライン大会の開催当日は、Discordというチャットアプリで運営スタッフと選手が連絡を取り合うケースが多いです。私の大会でも、Discordを使用していました。

特に配信中はOBSの操作担当者とは別に、選手とやりとりする人間が必ず必要になります。理由は、1人ですべてやっていたらパンクするからです。

私の実例では、OBSの操作と実況MCを兼任で担当していました。別に解説担当のスタッフもいましたが、しゃべりながら配信に表示させる試合結果の画面を作って……とやっていては、ロクにDiscord画面を見る暇もありません。
なので、選手対応をするスタッフとの間でTwitterのDMでサインを決め、配信上「いつ試合を始めてもいいよ」という状態になったら決められたGIF画像を送る、という段取りで連携を取っていました。そのサインが届いたら、選手対応スタッフが選手に「試合を始めてください」と指示を出す、という流れです。

マップのピックミスや回線落ちなどのイレギュラーな事態が発生したときには、「しばらくお待ちください」のような画面をあらかじめ用意しておいて表示させ、マイクを切った状態で何が起きたかを共有し、対応策をその場で決める、というなかなかにヒリつく展開が何度もありました。

大会運営は生き物です。何が起きるか誰にも想定できません。PCの機嫌が悪くなったり、最悪の場合ゲームサーバーの方に障害が起きたりすることも可能性としてはあります。一度だけ、試合開始直前にPSN障害が出たときは時が止まったかと思いました。

大切なのは、どんな時でも「平時の役割分担」と「緊急時の対応」を決めておくことです。緊急時にどう対処するかはその場で話し合って決めなくてはいけませんが、視聴者をすっぽかして話し合うわけにはいきません。なので、相応の準備を整えておくことが、いざというときに焦らずに対処できるポイントとなります。

もう一つ、当日の運営で絶対に守るべきことがあります。それは、「事前に決めた大会規則やルールを捻じ曲げないこと」です。

仮にルールに瑕疵があったとしても、出場してくれた選手たちはそのルールを読み込んだ上で作戦を決め、勝つための道筋を立てて試合に臨みます。そこでトラブルが生じたり相手チームからクレームがついたりしたとしても、正しい対応は「今回はルール通りに裁定する。次回以降、ルール改定の際にはしっかり配慮する」という姿勢を運営が堅持することです。

私はこの対応を誤った経験があり、事前に定めたルール通りに進行することの重要性を痛感しました。ルールに書いていない事態が起きた時は運営判断でいいのですが、ルールの裏を突くような作戦が出たとき、仮にそれに対して相手チームや視聴者から不満のコメントが殺到したとしても、運営だけはブレてはいけない。そう学びました。

運営は謙虚である必要があります。出場してくれる選手や、観てくれる視聴者がいなければ成り立たない。主催者には大きな決定権が与えられているからこそ、常に心に謙虚さをもって試合を進行していく必要があります。

こう聞くと、大会運営というのは難しいもの、なんか怖いもの、という風にとらえてしまう方もいるかもしれません。ですが、ある意味で、その「怖さ」という感情は大切なことだと感じます。人を集めて催し物を行うわけですから、その感情を持つということは、様々な人の時間を預かることに責任を感じていることの証左だと思うからです。

ですが、大会が終わった時、YouTubeのコメント欄やTwitterで「出てよかった」「楽しかった」「この大会のおかげでモチベが上がった」などという喜びの声を見たときの達成感は、運営スタッフにしか味わうことができない感情です。自分が大会コミュニティの盛り上げに貢献できているんだ、という実感もまた、たしかに感じることができます。これが運営最大のメリットかもしれません。
      ◇
ここまでが、大会運営を始めることを思い立ってから開催当日までの大まかな流れと、大会主催者として持つべき姿勢のエッセンスとなります。

次稿からは、オンライン大会、オフラインイベントのそれぞれについて、もう少しテクニカルな各論に触れていきたいと思います。引き続きお読みいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします!

いいなと思ったら応援しよう!