0115 いいことあったらのむやつ
仕事帰り、わたしのオアシスとも呼べる場所で1人、脳内作戦会議。
そのお店にはシャルトリューズっていうハーブ系のリキュールが置いてある。このお酒に出会った日はとてもうれしいことがあった日だったから、いいことがあったときや、前へ進めることが起こったり起こせたりしたときにはそれを頼むことに決めていた。今回はようやく一人暮らしにこぎ着けそうだからそのお祝い。1人で暮らす為に用意しなければいけないものをノートに書き出しながらうるわしい緑を含んだ。
シャルトリューズにはヴェールとジョーヌって2種類あって、緑色のヴェールの方が香りが強く、黄色のジョーヌの方が蜂蜜の甘味があるらしい(一回目に飲んだヴェールがあまりに美味しくてジョーヌは飲んだことない。たぶんわたしの好み的にヴェールの方がすきだし。けどジョーヌの別名は「リキュールの女王」きっとそれはそれで美味しいにちがいない!)。ほんとはストレートで飲むものらしいけれどアルコール度数55度とかなり高いので、わたしはソーダで割ってもらうことにしている。
このシャルトリューズ、カトリックの修道院に薬として伝えられたもので未だレシピは門外不出なんだそう。ふふふ、そういうの、結構すきだ。
むわっとした草と、スッとしたミントや薬っぽいハーブ、そこにスパイスのアクセント。さわやかで凛として媚びない、けど複雑に屈折した香り。ジンとかにもめちゃくちゃいい香りのものはあるけれど、だいたいひとくち目は強く感じても、飲んでいるうちにだんだん嗅覚が慣れて最初ほどはわからなくなってしまうものだ。けど、このお酒はゆっくりと飲んでも、氷が溶けて薄まっても、最後の一口までしっかりと香りを楽しめる。なんせ、マスターが少し離れたところでソーダを注いだだけでわかるくらい香りが強い。そう、シャルトリューズはまるで香水のようなお酒なのだ。その香りもソーダで薄まった緑色もさらりとかっこいいのに、ひとくち含めばその香りをのこしたまま、甘みも感じる。その甘さとのバランスがまた良くて、ひとくちごと、なんとすばらしい飲み物なのだろうとため息が出てしまう。この香りの香水があるなら欲しいくらいだ。
シャルトリューズをさらにしらべると「エリクサーの一種」と出てくる。エリクサーというのは錬金術における伝説の霊薬。不老不死になれると伝えられる…らしい。ふふ。
それで思い出したのは霊薬アムリタ。アムリタも不老不死で甘いらしい。なんか月と関係あったような気がするけど…笑 信じてないけど、しんじてないからこそ好きだ、そういうの。
「不老不死だって」
マスターに言ってみれば
「そりゃ困ったね。不老不死、こんな美味しくっていいのかな」とかわいい返答が返ってきた。
しっかり酔っぱらって帰路につく。トン、トンと階段を下って、つめたい空気を吸ったら、もう大丈夫。あしたもがんばれるよ。つぎのシャルトリューズはどんなときかな。