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2022年3月31日

今日のココ日(ココルーム日記)

いつも釜ヶ崎芸術大学のファサード看板部分に腰かけて商店街を通る人たちを見守って(見下ろして?)いる通称ヨシダさん。

カラフルな外観に紛れてしまうのか、ヨシダさんに気づかない通行人も多い。

ヨシダさんが当時のスタッフの手によって作られたのは、釜ヶ崎芸術大学(ココルーム)がまだ動物園前一番街でカフェのふりをしていた時期に遡る。

もともと作務衣を着ていたヨシダさんに、ココルームが二番街に引っ越してゲストハウスのふりも始めたタイミングで、代表の假奈代さんが着物を着せてみたところから今のヨシダさんの歴史が始まったとも言える。

そんなヨシダさんだが、今年の1月下旬から2月上旬まで船場エクセルビルで開催された大阪関西国際芸術祭にて展示されていたため、ファサード看板から姿を消していた。

ヨシダさんがいない間、ほんの数人、商店街の通行人が僕たちに「人形おらんようになったな」と声をかけてきたが、ほとんどの常連さんたちも特に気に留めていなかったようだった。

そして芸術祭終了とともにヨシダさんが釜ヶ崎芸術大学に戻ってくる。

この写真はその時、ブックカフェのカウンターでひと休みしながら、再びファサード看板に取り付けられるのを待っているヨシダさんを撮ったものだ。

朝の店出しの際に散歩がてら商店街を通っていく車椅子の女性と、その車椅子を押す年配の男性を見かけることが時々あったのだが、ヨシダさんが定位置に戻ってきたら、車椅子の女性が興奮した様子でヨシダさんを見上げて指を差し「あー、人形が戻ってきた」と言って僕に何かを伝えたそうな素振りを見せた。

その女性の言葉は聞き取りにくいことが多いのだが、それでも彼女が喜んでいることは僕にも伝わってきた。

それ以降も数回同じようなことがあり、今朝もまた彼女は車椅子で釜ヶ崎芸術大学の前を通る際、僕に呼びかけるように「人形がおるやん」と言った。

車椅子を押す男性はいつものように穏やかに微笑みながら、車椅子を停めるでもなく粛々と商店街を進んでいった。

車椅子の女性は体を必死にねじり後ろを振り向きながら、僕が視界から消えるまで感情を僕に伝えたそうにしていた。

僕は彼女たちの後ろ姿に向かって「良い一日をね」と声をかけた。

ただそれだけの朝の出来事なのだけれど、ヨシダさんを介しての彼女たちとのやり取りを僕はまた楽しみに待っている。

(書いた人:テンギョー)

現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています