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「はっちの散文~その②~」

突然ですが、皆さん。

食券が口から出てきたことありますか?

どうも、はっちです。

さてさて、まさかこんなに早くその②を書き始めることになるとは思ってなかったですね。

さて、食券の話でもしようか。

夜行バスに揺られて窓ガラスに映る姿に、僕の更なる高みとは?とか考えてたら品川に着いていた。

バスを降りて太陽を浴びてすぐに気づいた。ともかく僕はお腹がすいているらしい。

カツ丼とざる蕎麦を、双方大盛りでペロリといけるほどの空腹感。

その時、脳内に響いたんだ。

近くに家系の朝ラーメンがあったよな?

味はそこそこだが朝ラーメンという背徳感に需要があり店内はいつも若干の並びがある。空腹とは最高のスパイスだと感じさせる豚骨の匂い。たまらん。

食券を買いカウンターの上に置く、

正直、濃いめは年々キツくなってきているが、まだ舞える。

「硬め濃いめ多めでお願いします。」

この店の良いところは朝ラーメン時には店員さんも少し元気がないのだ。それはそうだ、朝とは辛いものだ。

朝ラーメンを食べたいから来てるだけで、別にとびっきりの「 しゃーわせぇーー!!硬め濃いめ多めいっちょーーーうぇーーいー!!!」を誰も求めていない。

しばらくして、待ちに待ったラーメンがやってきた。くぅーーーうめぇーーー!!!と声を出すことはせずに、少し天を仰いだ。
「我が生涯に一片の悔い無し!」
まるでラ王いや、ラオウだ。

食べ進めると不思議なことにもう麺は最後のひとつかみ。食べ進めるとラーメンは無くなるという事実を前に、人間はあまりに無力だ。完全に満たされたなぁ。またくるぜ!と思いを込めて啜り上げた。

その時、違和感を覚えた。
ん、、?なんか麺じゃないやつがおる。

口元に手を当てるともう見なくともわかる手触り。これは明らかに食券だ。口から食券。最後の啜り上げがトリガーになって、券売機に転生?もしくはなぜだろう異世界トリップ?いやいやそんなわけない。

不思議なもので1つあったらまだあるんじゃないかと考える。まずスープをかき混ぜてみた。いや、食券というトッピングは無かったはずだ。入っているわけがない。

その時、強烈な視線を感じた。これは覇王色。恐る恐る右を向く、目が合う。めっちゃ困ってる人が座って僕を見てる。どうやらこれは、挨拶だけでは済みそうもない。

君の仕草の一部始終、脳で解析フルスピードで状態になりつつ色々なことを整理しようとした。

麺に全集中してたから気にとめてなかったが1つ思い出したことがある。最後の麺をすするとき視界の右上にヒラヒラと何かが舞った様な気がした。

待てよ。
そういうことか!

どうやら、僕が麺を啜った丁度のタイミングで隣の人がカウンターに置いていた食券が回転式扇風機の風に乗って宙を舞い、麺に張り付いたのだ。思いの丈を込めてすすり上げたため食券は僕の口の中に入った?みたいな目で隣を見た。うんうん。これはどうやら間違いなさそうな顔をしてらっしゃる。

万に1つもそんなことが起こるとは思ってもない。もはや奇跡。こんなに面白いことは無い。声を上げて笑いたい程だった。だがこれを共有できるのはこの空間でたった1人。そう、困った顔の右隣さんだ。

あまりの面白さで勢いづいていた僕は、

「いまめっちゃ綺麗に口の中に食券はいりましたよね!?めちゃめちゃ面白くないですかー!?」

と、肩を震わせながら伝えた。そうっすよね!!もうビールでも飲んじゃいますか!!を期待していた。こんなに面白いことを共有できることはなかなか無い。そんな期待とは裏腹に彼は困った顔いや少し不機嫌そうに、

「あ、はい。」

試されてたりするのかな?それならのぞむとこだけども。あぁーそうかそうか。忘れていた、朝ラーメンだからだ。みんなそんな笑いを求めたりしてはいない。

状況を整理するまでもなく、右隣さんはラーメンを待っている。そしてその食券は僕が掌握しているのだ。さすがに口の中から出たものを手渡すわけにはいかない。

そうだこういう時の為に店員さんはいるのだ。少し目をあげると店員さんは目を丸くして僕にこう言った。

「お、おかわりですか?」

違う!!ぜっんぜん、違う!!
目を丸くして驚きたいのはこっちの方!

けど見た感じそう見えるよ。そりゃ。食券を手にしてるんだから。お客さんが食券を渡す→ラーメンを作る。ラーメン屋とはそういうものだ。だが違うものは違うのだ。

もうどうして良いかわからずに僕は、

「や、この食券隣の人のなんですけど、ぼくの口の中から出てきちゃって。」と、伝えた。

なんなら1歩くらい後ずさりしてた気もするくらいの驚き具合で目を更に丸くして、

「く、く、口の中からですか!?」

うんうん。そりゃーそうなるよ。おれだってどうしたらいいかわからない。だが、ここまで1つの嘘もないのだ。

ここにきて、「あ、はい。」が妙に効いてきて恥ずかしくなった僕は、餃子タレをいれる小皿に少し出涸らしみたいになった食券を置き、「口から出てきちゃったから汚いので触らないでください!ごちそうさまでしたー!」と伝えて店を出た。

脳内にリフレインする「あ、はい。」で意識が飛びそうになりながら、こんなことあるんか。夢でもみているのかぁー的な気分だった。

でも、人生の最後を迎えるときに病室から見える1本の木。その葉の最後の1枚が落ちたら僕はもう。。みたいな状況になったとしても僕はきっと食券が口から出てきたことを思い出して笑ってられるんだろうなー。

この話を思い出す時、なぜだろうか。毎回、脳内でながれる大好きなアーティストのこの曲を最後にはっちの散文~その②~終わりっ。またその③でお会いしましょう。

青春の日々が終われば/早木雅人

「あの頃は良かったなんて安い言葉 死んでも言いたくなくて」

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