藤枝梅安

私的必殺シリーズ仕置烈伝③藤枝梅安

今回は必殺シリーズの第1作目「必殺仕掛人」より藤枝梅安のご紹介です。原作は池波正太郎さんの「仕掛人・藤枝梅安」ですが、実は企画当時、まだ原作の連載が始まったばかりで、放送と並行して書かれていました。

そのため、「必殺仕掛人」は、原作とは異なる部分が多く、主要人物である彦次郎と小杉十五郎も登場しないのです。 

後年映像化された「仕掛人・藤枝梅安」は、連載完結後に作られていることから、必殺シリーズとは別物で、概ね池波正太郎ラインに沿ったものではないか、と私は思っています。

テレビシリーズ「必殺仕掛人」の登場人物については、池波正太郎さんの別作「殺しの掟」がベースとなっており、西村左内、音羽屋半右衛門、岬の千蔵に、連載が始まったばかりの「仕掛人・藤枝梅安」から主人公の藤枝梅安を加えた構成となっています。

当時のテレビ時代劇では勧善懲悪が基本であり、金を貰って、悪人を殺す側が主人公という設定は異例でしたが、これは裏番組で人気を博していた「木枯らし紋次郎」に対抗しての策だったそうです。

また、必殺といえば、あの陰陽をはっきりさせたライティングが特徴的ですが、これは全体に光を当てるとセットやメイク技術の甘さという弱点を露呈してしまうことになるため、影を利用して奥行きを出すという苦肉の策を採らざるを得なかったともされています。

発案者はテレビシリーズの第一話と第二話を撮られた深作欣二監督で、撮影開始前にカメラテストを行い、撮影対象全体に光が当たるものと、陰影を際立たせたものの2通りのライティングを提示して比較したそうです。

その際に、石原興カメラマンの「闇が撮りたい」との意見が決め手となって、陰影を強調した撮影手法を採用したといわれています。

これが今に脈々と受け継がれている必殺シリーズの代名詞になっていくわけですね。ちなみに裏番組の紋次郎を演じていた中村敦夫さんは、後年「翔べ!必殺うらごろし」の主人公、先生を演じられます。

しかし、意欲的な作風とは裏腹に「翔べ!必殺うらごろし」は、様々なアクシデントの末に低視聴率で終わってしまいます。

なお、テレビシリーズとは別に「必殺仕掛人」には三本の映画があります。

これはテレビの人気を受けて作られたのですが、第1作目の梅安は田宮二郎さんに、西村左内は高橋幸治さんに変更されています。

キャスト変更の理由を色々調べたのですが、はっきりしたことは分からず、また第二作目の「梅安蟻地獄」から、梅安は緒方拳さんに、西村左内は、林与一さんにキャストが戻されています。

藤枝梅安

ただ、劇場版三作は全体的な雰囲気もテレビシリーズと異なる面もあります。ですので左内の役回りや、梅安のキャラも少し異なるように感じます。

個人的にはテレビシリーズの味付けが好きなので、キャストは同じでも、映画版は「別物」という認識でみております。

両親2人の介護を一人でやってます。プロレスブログ「せかぷろ」&YouTube「チャンネルせかぷろ」主宰。現在ステージ2の悪性リンパ腫と格闘中。