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二人しかいないはず〜後編〜
私は入り口に背を向けた形で、相変わらずうつ伏せでスマホを見ている。
振り返ればいいだけなのだが…心臓の音がうるさい。
流石に5分。
ずっと足元に立ち尽くしたまま動かない夫に不気味さを覚えるが、もう何見てもいい!と「なにしてんの!!?」と怒鳴りながら振り返る。
私は一瞬で言葉を失う。
過去に一瞬よぎったり、背中にゾクッとするものを感じたりしたことはあるが、『それ』は初めてだった…
視線の先には大きな黒い塊が立っている。天井につきそうな『それ』は、輪郭こそぼやけているが人の形をしていることはハッキリわかる。
私は驚いたのか恐怖なのかわからない感情に押しつぶされそうになりながら、振り返ったまま動けずにいる。
頭も働かない…ただ『それ』を見つめるだけの時間がどれだけ過ぎただろう。
一階にいるだろう本当の夫のところに行くには、この影を越えていかなければならない。
『もう限界。』
その影の中へ飛び込んでやろうと足を動かしたその瞬間!2mあるだろう人影は、私めがけて覆いかぶさろうとした。
「ひっ……」
もう声にもならない声、ドラマで見るような後退りすらできないほど体が硬直して動かない。
『もう駄目だ』そう思った時だった。
私の背後から小指の爪ほどの小さな光の塊が、『それ』の溝落ちと見られる部分へと飛び込んだ。
次の瞬間、人影が綺麗に散ったのだ…
私は一瞬何が起きたのか理由がわからなかったのだが、恐怖から体が動かない私は一階から漏れる明かりに向かって叫んだ!
「パパ!パパ!」
「なに?」
一階にいるパパの声が吹き抜けから聞こえた。
私は安心すると廊下に飛び出し、吹き抜けを覗き込んで一階にいるパパを見つけると言った。
「ずっと一階にいた?2階に上がってきてない??階段のぼらんかった?」慌てている私を見て夫は「なんで?俺ずっと一階で片付けしてたやん。もう終わったから上がるけど…」といい、電気を消して2階にくる。
そうだよね…パパはいつも必ず電気は消すんだよ…
それから数年後。
時期は違うのだが、二人の視える人に会う機会があった。私はその日の出来事を話すと二人は同じ答えを言う…
「あぁ、それ生霊だね」と…
終わり