二人しかいない…はず〜前編〜
その日は夫と喧嘩していた。
体が異常に重く歩くのも息をするのも辛い…
当時、重度の貧血と診断され、すぐにでも入院して輸血が必要だと、貧血の原因になってる筋腫があり今後のガンのリスクも考え子宮ごと摘出する手術を医師からもいわれるが、家庭の事情で仕事を休むことができず、「後5ヶ月なんとか働きたいんです!」と先生を説得してた時期だ。
喧嘩するのも体力がいると言うが、これは身を持って体験したなぁ〜笑
私は早く横になりたくて二階の寝室へ上がり、扉の目の前にベッドがあるためダイブした。
『あぁ…気持ちいい…』
ベッドの上でしばらく呼吸を整え、うつ伏せの状態でスマホを見ていていた。
我が家はリビングが吹き抜けになっているのだが、二階の部屋の扉を開け放つと灯りも含め一階の物音や話し声が鮮明にきこえてくる。
その時も、一階から夫が私への当てつけかのように音を立てて洗い物をしているのが聞こえてくる。
それには余計に苛立ちが増す。
元気なら大声で一階に怒鳴る所だが、酸欠の私は大声が出せないのでスマホに集中していた。
そうしてると洗い物が終わったようで、一階から夫のドンドンと歩く音が聞こえる。
『やっと寝室に来るかな?』と、喧嘩しているのに待ってる自分がいる、この気持ちわかる人がいるだろうか?
私は聞き耳をたて夫の様子を伺っていると…
ドンドンドン
歩く音が階段の方へと近づき、ギシっと階段がしなる音がする。
『あっ、階段登ってきたな』と思った時、一階の電気を消し忘れてる事に気付いた私は「一階の電気消し忘れてるんじゃないの?」と背中越しに話す。
しかしなんの返事もない…。
きこえなかったんかな?と思い部屋に来てから言えばいいかと聞き耳立てる。近づく足音は止まることはない。
階段を登りきったのか廊下を歩く足音がだんだん近づいてくる。寝室の扉は開けっ放し…寝室に入ってきた夫はベッドの足元に立っている。
そこでもう一度「一階の電気消し忘れてるで!廊下もそう!!ちゃんと消してきて!」と、今度は強めにいう。
しかし彼からの返事はない…。
しばらく黙る。そして私は不安に襲われた…
何故なら、家の中は夫と私の2人しかいない…はっきりと足元に人の気配はあるのに、一階から冷蔵庫を開ける音がするのだ。
続く
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