青森県六ヶ所村に行って見えたこと
青森市から車で1.5時間くらい走ると、六ヶ所村に着きます。
「使用済み核燃料の貯蔵施設がある村」という断片的な知識だったけど、原発事故から10年のこのタイミングで、「核のゴミ」が処理されているところはどんなところなのか、見に行ってみました。
周辺地域のこと
不要になったもの、近くにあると厄介なものを、「ゴミ」とすると、使用済み核燃料は「ゴミの王」だなぁ、と思います。危なくて、無害化もできない。つまり処分ができないわけで、どこかに置いておく「しかない」。
この「〇〇するしかない」っていうのは、このところ個人的にちょっとしたキーワードです。僕らが快適に暮らしている背景には、だれかが「〇〇するしかない」と引き受けているものがたくさんあって、安いバナナとか、基地の無い暮らしとか、特段の気を遣わなくても使える電気とか水とか、そんな便利なモノモノの向こう側には、引き受けてくれている誰か(または自然)がいる、はず。
それは地理的に離れた場所の人かもしれないし、後の世代かもしれない。福岡奈緒さんに教えてもらった「構造的暴力」とか、斎藤幸平さんが丁寧に説明してくれている帝国主義的生活に不可欠な「グローバルサウスへの転嫁」です。フィリピンのプランテーション、コンゴの鉱山、辺野古、1944年の八幡村、1957年の樽床村、そして1981年に家の立ち退きを迫られた父親が、みんな同じステージの上に見えてきます。
そんなことをあれこれと考えながら、ぼんやりと「六ヶ所村に行って、見てみよう」と思いつきました。青森に移動する数日前のことでした。
六ヶ所村のこと
六ヶ所村は、人口約1万人、村の面積は253平方キロメートル。ちょうど芸北と同じ、北広島町の4割くらいの面積に、6割くらいの人が暮らしていて、人口密度は1.5倍くらい。議会では少子化の話題も出るものの、年間70人ほどの子どもが産まれていて、10年前と比べて10%くらいの減少。この人口規模でこのくらいなら、減少は少ないのかな、と感じます。
財政規模は全く違っていて、年間の歳入予算は約143億円で、その半分が村税(北広島町は148億円で、町税は19.6%)。ずいぶん違う。これはもちろん、エネルギー関連施設を積極的に誘致してきた成果が出てるのだろうと思います。
1985年から整備が進められた国の石油備蓄基地は全国目標の1割に相当し、原始燃料サイクル施設や研究所が集積、92機の風力発電施設や、115,000kwの太陽光発電所がある。そのほかにも、融雪熱、天然ガスのコジェネ、廃棄物熱、地熱利用のヒートパイプなど、あらゆる発電が行われている。芸北と同じ面積の土地で。
作られた電気は村外に供給されるものだし、備蓄された石油も村だけで使われるわけじゃない。いろんなものを引き受けることで、村の経済が回ってる。他方で「第1次産業の魅力に関する理解の促進」や「村民への安価な電力供給」、「自然環境の破壊や公害問題を生じさせない取り組み」も村では課題視されていて。
エネルギーそのものの恩恵は少なくて、リスクもある。
六ヶ所村にはもうひとつ特殊な施設として、本土唯一の射撃訓練場があります。三沢市と六ヶ所村にまたがる「三沢対地射爆撃場」は、戦時中に海軍が使い始め、1969年以降は、自衛隊や米軍が、模擬爆弾の投下や射撃の訓練を行なってるらしい。僕が行った日も、道の駅のすぐ近くで何度も低空飛行をする飛行機を見ました。
村には国から交付金が出たり、住民に対しては、防音低減させるための家の改築に補償金が出たり、建物の移転補償もあるらしい。実際、射爆場から2kmにあった小学校は移転になったらしい。財源は、沖縄の負担分散に対する国の交付金。
「引き受ける」ということ
六ヶ所村に行ってみて気づいたのは、負担を生み出す社会について考えている自分でした。原発とか風発とか軍事施設とか、そういったものの是非ではなく、構造のハナシです。
たとえ財政的なメリットがあるとしても、これらの施設を引き受けるには相当の努力が要っただろうし、対立や分断や排除のようなものもあったと思います。ひょっとしたら今もあるのかもしれません。誰かが犠牲になるような社会は、発展しているように見えて、実は課題;つまりは「社会にとってのゴミ」をどこかに押し付けているだけなので、持続的でも健全でもないのでしょう。
解決の道筋は、この構造そのものを変えることなのでしょうが、たとえ変える方向に向かっても時間はかかるので、その間はゴミ処理が必要になります。六ヶ所村が引き受けたことが、史実上は一時のことになってほしいし、ひと時のこととして捉える社会であってほしい、です。
自分としては
大仰なことができるわけではないけれど、個人の活動をどうこうではなく、北広島町の「広義のゴミ」のことに取り組んでみたい、という思いが強まりました。具体的にはCO2と、獣害駆除で殺処分される野生生物の、ふたつの課題を生物多様性きたひろ戦略をベースに何かできたらいいな。
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