支援という名の暴力ーひきこもり支援の現場から
長くひきこもる男性。対人関係を築くことに苦手さがあり、家族以外の人との関わりを拒絶していた。家族は本人との関わりに困難さを感じ、支援機関に相談。支援機関は訪問し、本人に会おうとするが、本人は拒否。本人が拒否しているのであればと、支援機関は経過を見るという形で何もせず、放置していた。
同居の家族が年を取り、介護が必要になった。支援機関は本人ではなく、家族自身の介護の相談を家族より受け、介護サービスの調整を行った。家族のところに介護サービスが入ることになった。本人はそれは受け入れた。
家族の介護に入っていた機関(ヘルパーなど)は、同居の本人のことが気になり、本人にも声をかけるようになった。介護の機関では対応が取れないため、改めて支援機関に連絡が入り、支援機関が本人に関わろうとした。そうすると、本人は拒否。それだけでなく、家族に入っていた介護サービスまで拒否するようになった。
家族の介護に入れなくなったことを問題視。支援機関は本人と家族を引き離すことを考えるようになった。別居の家族などに連絡。本人が買い物に出かけている時間帯に自宅へ行き、同居の家族を連れてきてしまった。
買い物から自宅に帰ると同居の家族はおらず。支援機関に本人が連絡を入れると、家族は避難したことが告げられた。本人は怒るが、支援機関はそれには応じず、電話を切ってしまう。話を切った理由は、「本人は対人関係を築くことが苦手だから。話をしても、話にならない」
本人が住んでいるところは家族が名義人であり、毎月の家賃を払っていた。介護サービスが必要な家族にはお金の余裕がない。そのため、賃貸の契約を解除。本人については、支援機関は保護することを考えた。
賃貸の契約解除を一方的にハガキで伝えられた本人はパニック。ハガキには支援機関が立てた今後の流れ、住むところを失えばホームレス。その状態で保護。住みたいところで今後は生活するようにと書かれていた。
支援機関の立てた計画に乗ることは本人には出来なかった。これまでの支援機関の対応と今の置かれた状況がリンクし、また嫌な対応をされる恐怖、不安などを感じ、体調を崩すようになった。
賃貸の解除日。支援機関が訪問するとハガキで伝えてきた時間の前に家を出て、本人は路上を徘徊。疲れ果てたところで、以前連絡をしたことがあった私に連絡をしてきた。
「支援」って何だろう?支援という言葉を付ければ、何となく正当化されてしまう。支援機関の行ったことは支援だろうか?私には暴力という言葉が浮かんできた。
本人は空き家で保護。本人と話をしながら、今は一人、安定した生活を送っている。