「ソーシャルワークのまなびかたー原因と結果のあいだの話―(仮)」5
社会資源。何気なく使っている言葉。でも、その意味するところは人によって違うように感じます。社会資源を知っていると言った場合、どの程度、知っていれば、知っていると言っても良いのでしょうか?
これまでの例で見ていきたいと思います。アルコール依存症の疑いのある母親。母親と話ができ、渋々でも受診すると母親が話した場合、皆さんはどうしますか?
あとは、母親に病院に連絡を入れ、受診するように伝えて、終わりにしますか?支援の仕事をされている人の中には、アルコール依存症は精神科医療機関であれば、診てもらえると考えている人もいます。でも、実際は精神科医療機関、医師によっても得意、不得意があり、予約の電話を入れると、「うちは専門ではないので、他に」と断られる場合があります。
では、ネットで検索し、または知り合いに教えてもらったアルコール依存症を診てくれる病院が見つかれば、その病院を紹介すれば良いでしょうか?紹介すれば、母親は連絡を入れ、受診することができるでしょうか?
受診をするとその場で話したとしても、いざ行動に移せるかと言えば、移さないことの方が多いように感じます。なぜなら、私であれば受診したらどうなるのか分からないところに行こうとは思いません。では、受診したらどのような治療が行われるのか、知っていますか?
アルコール依存症の治療は、以前は断酒が基本とされました。節酒は認められず、一度は完全に酒を断つ、そのためには入院治療という考えがありました。国立久里浜病院で始められたアルコール治療をモデルに、3か月間のプログラムが組まれ、全国各地で取り組みが行われました。それにより、効果があった人もいましたが、断酒ができず、プログラムに乗れず、結果としてアルコール生活を続け、身体を、心を壊していった人達もいました。今では断酒、それをするための入院という考えから、節酒、外来での治療継続という形に少しずつ変わってきました。紹介する病院がどのような考えで、治療を行っているのか知った上で、母親、家族に説明する必要があります。
では、病院の治療内容について説明ができれば、母親は受診できるのかと言えば、まだハードルがあります。病院を受診する場合、病院ごとに受診の仕方が異なります。私がこの仕事を始めた当初は、予約制を取らず、かかりたい時に病院に行けば、診てもらえる病院がありました。月日が経過し、今では殆どが予約制になりました。予約を入れる場合、予約専用の電話番号があるところもあれば、外来、ソーシャルワーカーのいる相談室に電話する形を取っているところもあり、それぞれの病院で異なります。そこを理解しておく、必要があります。
病院の内容、予約の仕方が分かれば、それで良いでしょうか?受診はできるようになるかもしれません。でも、続くかは分かりません。なぜなら、担当する医師が誰かによって、受診後の状況は変わってきます。病院によってアルコール治療の考え方が違うように、医師によっても違います。考え方が違うと言うことは、治療の仕方も違ってきます。抗酒剤などの薬物を使う、使わない。面談の時間をある程度取る、取らない。家族との面談をする、しないなど、医師によって変わってきます。勿論、人と人との関係である以上、相性もあります。
病院の受診を勧める場合、どの病院のどの医師を受診し、どんな生活を送るようになるのかを伝える必要があります。私がもし、母親から受診の同意が得られたら、母親、家族の前で病院に電話を入れ、母親と合いそうな医師の予約日を確認し、予約を入れ、母親、家族に受診日と受診した後の生活、母親、家族の了解が得られれば、私も受診に同行できることを伝えることにしています。
社会資源と言った場合、今はネットで検索をすれば多くの人が情報を得られる時代になりました。ネットには乗らない情報をどれだけ知っているのか、知った上で使えるのかが大事であり、そこに私たちがいる意味があるように感じます。
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