スキッピングクリスマス
*ネタばれします
20年ほど前に、ジョン・グリシャムの『スキッピング・クリスマス』を初めて読んだ。かねてからクリスマスの馬鹿騒ぎが大っ嫌いな主人公ルーサーが妻のノーラを説得してクリスマスをすっぽかしてカリブ海クルーズ旅行に出かけようと計画し、作戦を実行する物語である。
一人娘である愛娘ブレアが慈善活動のためにペルーへ行くため、ブレアがいないこともあり、ルーサー・クランクはこの計画を英断する。クランク夫妻が昨年のクリスマスにつかった費用は六千百ドル。その費用をクルーズ旅行に回しクリスマスをスキップしようと悪戦苦闘する姿が面白おかしく書かれている。
まずはノーラにやってきたクリスマスカードのセールスを断るという試練に始まり、夫婦ともに同僚や友達に今年はクリスマスパーティーをしないという説明、毎年やってくる消防署職員やボーイスカウトによる寄付と称したカレンダーやケーキ、クリスマスツリーのセールスを断り、地域住民のみんなが屋根の上に毎年飾る雪だるま”フロスティ”を断固として飾らずご近所から嫌味を言われる、等々、実際にアメリカでクリスマスをスキップするだけでこんなにも大騒ぎになるのかは分からないが、ドラマティックに描かれていて、それぞれのキャラクターが個性的で面白い。
愛娘ブレアが海外へ行ったことから始まったこの計画だったが、ブレアからの電話で一変する。クランク夫妻と地域の人たちとの関係も一変する。クリスマスをスキップするにあたっての描写も面白く好きであるが、私はブレアの帰国がもたらす変化と心温まるラストが大好きである。