旅行の前に憂鬱になるのはなんで?
A. 脳は近い未来と現在を区別できないから
「旅行行くの、面倒くさい…」
あんなに楽しみにしていた旅行の日が近づいてくると、段々とこんな風に感じてきてしまいますよね。
計画を立てているときは、「どこ行こう?」「何食べよう?」と胸を躍らせていたのに、今は踊るどころか「もう少し眠らせて」と願うばかり。
どうしてこのような憂うつな気持ちになるのかと言うと、それは「旅行直前の脳は、『もう旅行した』と勘違いするから」です。
隣の芝が青く見えるのは、自分がそれをまだ手に入れていないから。いざ手にするとそんなに青く見えません。
旅行もこれと一緒。脳は近い未来と現在のことを区別するのが下手なので、旅行前日や当日は脳が「もう旅行した」と勘違いして、魅力が半減してしまうのです。
「当日はまだ旅行していないのに、脳が『旅行した』と勘違いするってどういうこと?」と思われたかもしれません。確かに、この感覚は私たち日本語を母語とする人たちにはいまいちピンと来にくいですよね。
その反面、英語はこの脳機能をうまく反映した言語だと言われています。
例えば「明日の朝9時に沖縄に向けて出発する」を英語にしてみると一目瞭然です。
まだ沖縄には行っていないにもかかわらず「現在進行形(be + ing)」が使われます。
明日の朝9時に沖縄に向かう人は、もうすでに沖縄に行くための何かしらの準備をはじめているはずですよね? そのせいで人の脳は「もう旅行がすでに始まっている」と勘違いしているのです。だから現在進行形を使って表現されることになるわけなんですね。
前日ですらこの調子ですから、旅行当日にもなれば、この脳の勘違いはさらにエスカレート。あたかも「もう旅行した」くらいに捉えるわけです。しかも実際はまだ旅行はしていないから、準備や移動など面倒くさいことが残されています。
ある研究では、予測可能な状況だと楽しいことが起きてもそれほどドーパミンが分泌されないことが知られています。また、別の研究では「旅行は計画を立てているときが一番楽しい」ことがわかっています。※1,2
つまり、旅行直前になると「準備の面倒さ」と「旅行における楽しみ」が逆転し、期待のピークが過ぎてしまうのですね。
こんな感じで、
だから旅行の直前になると旅行に対する魅力が低下し「憂うつ」になるのですね。
とはいえ、これは脳の勘違い。実際に旅行をしてみれば、それまで知らなかった世界に出会える可能性はとても高いです。知らない土地、知らない人たち、知らない食べ物などなど。
「旅行直前は面倒くさくなる」「憂うつになる」「でもそれが普通なんだ」と思って、そんな脳の勘違いに騙されないようにして旅行を楽しんできてくださいね。