異世界転生したら性格も変わる?臨床心理士に聞いてみた
A. 半分変わるし、半分変わらない
一度でいいから異世界に転生して魔法を使ってみたいと思っています。そして「今のはメラゾーマではない。メラだ」と言ってみたい。
せっかく転生するのですから、現実世界ではできないことをしてみたいものです。
さて、ご質問の件ですが、異世界で生まれ変わった経験が今のところないので断言はできませんが、理屈上、「性格は変わる」と言えるかと思います。しかし、変わっても半分だけで残りの半分は現世と同じ性格でしょう。
ここでちょっと補足ですが、「性格」は一般的な意味と心理学的な意味とで異なります。
一般的に言われる「性格」は心理学でいう「パーソナリティ」のことを指しています。そして心理学では、パーソナリティは「気質」と「性格」をまとめたものを意味します。
心理学では「気質」は生まれ持った特性のことで、「性格」は経験を通じて形成される特性のことです。本当は研究者によってもう少し細かい考え方の違いがあってややこしいのですが、こう理解しておいて大丈夫です。
パーソナリティ(一般的な意味での性格)には、経験を通じて形成される「性格」と、生まれつき安定した「気質」を含むので、異世界転生して今まで体験したことがないことを体験すれば「性格」は変わるし、「気質」は変わらない、となるわけです。
この辺りを上手に描いている作品に、最近ブームになっている『推しの子』があります。主人公の一人であるアクアは、もともと20~30代の医師でしたがあるきっかけで赤ちゃんに転生しました。転生直前は医師のころの性格そのままでしたが、成長し高校生にもなると少しずつ前世とは異なる趣味嗜好が現れはじめます。
それは前世と全く違う環境下でアクアが「高校生」へと成長し、周囲がそれに適した刺激を与えるからです。今まで受けたことがない刺激は、新鮮な情報として脳に保管され、処理されます。この一連の作用が「性格」を更新させていくのですね。作中ではアクア自身、性格が変わってきていることに自覚がある様子が描かれていました。
しかし、まじめで頭が切れる側面は変わることはありません。アクアにとってこれらが「気質」だからでしょう。
アクアの場合、人間の男性から人間の男性への転生ですから変化はそれほど劇的ではありませんが、全く異質なものへと転生していれば「性格」の変化はもっと顕著だったはずです。
「今のはメラゾーマではない。メラだ」なんてつよつよな発言ができるかできないかなんて、人生経験に雲泥の差をもたらしそうです。言えなかった存在から言える存在になれば、そりゃ性格も変わりますよね。私だったら調子に乗り始めると思います。「高校デビュー」ならぬ「転生デビュー」です。