季節の移ろい
ふと気がつくと、そういえばセミの声をまったく聞かなくなっていた。今日は昼間でも秋の虫(たぶんコオロギかなんか)が鳴いていて、夏の風景はだんだん消えていきつつある。今日も暑さは真夏と変わらないのに、季節は知らないうちに移ろっているなと実感する。
私たちは真夏の暑い時期にエアコンを使う。確かに我慢できない暑さには、エアコンの効いた室内は天国とも言える。しかし、同時に季節感というものをまったく手放してしまうことになる。真冬も然り。暖房の入った部屋は、本当に心まで温まるぬくもりがある。外は北風が吹いていたとしても。
こういうふうに改めて思うと、季節を感じにくくなっているなと思う。本当は都会の真ん中で暮らすのではなく、自然がいっぱい感じられるところで暮せば、きっと季節の移ろいにもっと敏感になれるんだろう。そう思うと生き物として大事な感覚を放棄しているような気もする。
そんな生き物としては残念な暮らしをしていても、春のはじめ、冷たいように思える風の中になんとなく春の気配や匂いを感じたりする。秋の終わりに空気が急に冷え込んで、冬の訪れを実感したり。よくよく五感を研ぎ澄ましてみていると、季節の移ろいはあちこちに隠れている。
そういう移りゆく季節の気配を探すのが好きだ。早春の日向の匂い、初夏の爽やかな風、初秋の色、真冬の風の音・・・四季という際立った変化を見せるこの国で、移ろい流れゆくときを愉しめるのはなんという贅沢なんだろう。これから先も、こんな些細な楽しみを味わっていたいと思う。
我が家のトイレに飾ってある、学生時代につくったエッチング。もう昔の作品はこれしか残っていない。他はどこへやったのやら。額装したのがよかったのかな。決して上手にできたわけではないけれど、若かりし頃の記念。
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