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保育士の声を歪める「偽造口コミ」―だから嫌われる人材紹介会社のモラル

保育士不足が深刻化する中、高額な手数料がたびたび問題視される人材紹介会社。一部の事業者による不適切な手法が、元々なかった信頼を消滅させてしまう事件が起こりました。

朝日新聞が報じた人材紹介会社による口コミ偽造問題は、保育業界に真摯に向き合う全ての人々を小バカにした低劣極まりない行為と言えるでしょう。


口コミ偽造とスクレイピングの実態

東京都渋谷区に拠点を置くある会社が、自社のサイトに掲載する保育園の口コミを他社から無断で転用し、その削除後に自ら偽造していたことが明らかになりました。同社の男性社長は「口コミの母数を増やすため」と偽造を認めいると述べています。
生成AIで改変された口コミや手書きで「ゴリゴリ作った」とされる内容は、利用者に「保育士のリアルな声」として提供されていましたが、その信頼性は失われました。

スクレイピングとは、ウェブ上に公開されている情報を自動的に収集する技術のことを指します。今回の問題では、この技術を用いて他社のデータを収集し、生成AIで改変して偽造した点が大きな問題として指摘されています。このような行為は、不正利用として法的・社会的な批判を免れません。


保育経営に及ぼす影響

この問題の本質は、口コミ偽造にとどまりません。人材紹介会社は、保育士の年収20~30%相当の高額な手数料を保育園に課すことが一般的です。こうした構造そのものが保育施設の財政を圧迫している中、不当な情報をもとに応募者を誘導していた可能性が浮上しています。

さらに、不適切な情報に基づいて紹介が行われた場合、保育士と保育園の間にミスマッチが生じ、早期離職につながるリスクが高まります。このような状況は、利用者から見れば情報詐欺と捉えられても不思議ではありません。


「卑怯な手法」としての口コミ操作

口コミ偽造は、会社としての信用を大きく損なう行為であると同時に、保育士や保護者の意思決定を誤らせる危険性をはらんでいます。信頼を根幹とする保育業界において、このような手法は「卑怯」「悪辣」と批判されても仕方がありません。

保育士不足という課題に便乗し、短期的な利益を追求する行為は、長期的に保育の質そのものを損なう可能性が極めて高いのです。


信頼と持続可能性を支える保育業界へ

保育士不足という課題を解決するためには、単に人材を確保するだけでなく、信頼に基づく情報提供と、保育現場の持続可能性を支える環境整備が不可欠です。一人ひとりの保育士が安心して働き、子どもたちに質の高い保育を届けられる未来を目指すためには、業界全体が連携し、不適切な事業者の排除に努めるべきです。


そもそも「ゴリゴリ書く」とは?

同社の男性社長が語った「ゴリゴリ書く」という発言は、業界や保育士への誠意が欠けていることが明白であり、信頼を回復するには相応の覚悟と行動が求められるでしょう。


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