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公立保育園の人材確保、次の一手。

かつての公立保育園は高い就職倍率を誇り、保育学生にとって人気の職場でした。

その人気の背景には、①安定した雇用、②充実した福利厚生、③手厚い退職金制度、④公務員という社会的信頼の高さといった要因がありました。これらのメリットにより、公立保育園での保育士職は、多くの人にとって魅力的な選択肢だったのです。

しかし、現在では多くの公立保育園が保育人材の確保に苦慮しており、地方では「1年間採用活動を続けても応募が1件もない」という声も珍しくありません。


公立保育園の人気が低下した理由

  1. 待遇の相対的低下
    民間の保育施設で、給与や手当の改善が進み、公立保育園は給与面での相対的な魅力が低下した。

  2. 非正規職員の多さ
    公立保育園は、非正規職員(年度会計職員)の割合が高く、正規職員の業務負担が大きくなっています。これが心理的ストレスを増加させています。また、短時間勤務者の割合が多くなれば、情報共有の効率が悪くなり、保育の一貫性を保つのが難しくなります。

  3. 転勤の負担
    公立保育園では、自治体内での異動が発生するため、特定の園で長く働きたい保育士にとっては転勤が大きな負担です。結果として、転勤を嫌う人は民間施設を選ぶ傾向があります。

  4. 実習園として評価が低い
    私立保育園が実習生の採用に積極的である一方、公立保育園での実習は採用に直接関係ないため、実習生との関係構築を重視しない(むしろないがしろにしている)公立保育園もあり、学生からの評価が低くなっている。

  5. 過去の採用難易度のイメージ
    一部の保育士養成校の教職員は、公立保育園の採用試験が依然として難しいというイメージを持ち続けています。そのため、「公立保育園は就職が難しい」と学生に伝わり、応募の意欲を削ぐ一因となっています。

  6. 山間地域、離島などの課題
    過疎化が進む山間地域や離島では、公立保育園の割合が高く、そもそも保育士を確保するのが難しい地域が多く存在します。

公立保育園の保育士確保とのその影響

こうした課題に対して、一部の自治体は新たな取り組みを始めています。

保育士養成校へアプローチ

いくつかの自治体は、保育士養成校に積極的にアプローチし始めました。学生への情報発信を強化し、関係性の構築に取り組む姿勢を見せています。
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この結果、公立保育園の受験を推奨する養成校も増えていますが、保育学生の減少が続いているため、私立保育園の人材不足がさらに加速しています。

2次募集・追加募集の開始

通常募集では採用予定人数に満たず、多くの自治体が2次募集や追加募集を行っています。
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しかし、この対策は、私立保育園からの人材流出や就職活動の長期化につながり、新たな問題を引き起こしています。

無資格の保育補助の採用

人手不足を補うため、無資格の保育補助者を採用する動きも見られます。
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この取り組みによって、潜在保育士などの有資格者が応募してくるケースもありますが、多くが短時間勤務を希望するため、無資格者のキャリアパスを整えることが求められています。


変わりゆく公立保育園の現状

10年前に私立保育園で起きていた保育士確保の課題が、公立保育園にも波及しています。かつては自然と応募が集まっていた公立保育園も、今では養成校へ積極的に採用情報を発信しなければならない時代に突入しています。

さらに、保育学生数が1万人以上減少している現在、この対策だけでは問題解決には不十分です。少子化が進む地域では、公立保育園が統廃合によって調整役を担う場面もありますが、正規職員が多すぎる場合は統廃合の実施が難航するなど、複雑な課題が山積しています。


公立保育園が乗り越えるべき課題

①有資格者しか雇用しないという考えを改める
②短期間や短時間の雇用(年度会計職員)を半分諦める
 →コロナ以降、都合の良い雇用が難しくなっている
③無資格者のキャリアパスの設計


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