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保育学生減少の裏舞台。短大生30年間で84%減少…。

文部科学省の学校基本調査によれば、令和5年度における短大の学生数は8万6686人で、平成5年度のピーク時に比べて84%も減少しました。

この短大生減少は、保育業界の採用が非常に苦しいものにしました。なぜなら、短大の半数は、保育学部を有する保育養成校だからです。短大生からの採用に頼らざるを得ない地域(特に地方)は、その影響をもろに受け、都心部の問題であった保育士不足が日本全国に拡大したのです。

短大生の減少は、少子化だけが原因ではありません。大学進学率の上昇やキャリア意識の変化など様々な要因が関係しています。今回は、短大生と保育学生の減少を要因に分けて考察し、今後の保育士確保策を考えてみたいと思います。


短大生は減っているが、大学生は増えている。

保育学生が減っているのは、単純に少子化の影響であるとするのは、少し早計です。なぜなら、大学生はまだ減っていないからです。

大学進学者数は、昨年2022年度に過去最高を記録しています。文部科学省は、2017年に大学進学者数がピークになると予測していましたが、5年も後ろ倒しになっています。

反対に、短大生は、30年前にピークを迎え、8割以上減らしているのです。現在、短大の半数は、保育養成校であるため、結果として保育学生は減っています。

なぜ短大生は減ってしまったのか?

①大学に入りやすくなった

少子化の影響で、学校推薦枠やAO入試などが広がり4年制大学に入りやすくなったこと。また、2022年の大学進学率は56.6%と大学進学が一般的に。

②進学支援制度の拡充

(奨学金返済問題はさておき)奨学金や助成金が充実し、金銭的な理由で進学をあきらめる人が減った。

③偏差値進学

長らく大学進学が一つの成功とされ、それに従い進路指導が進められてきた結果、短大より大学への進学を勧める傾向が強くなった。

④キャリア志向と社会的評価

短大では、短期間で実践的な技術やスキルを身につけることが一般的だが、専門的な知識や広範な教養を身につけていると見なされがちの4年制大学がより魅力的に映るようになったこと。また、就職時に大学卒業を条件にしている企業が増えたこと。

⑤すぐに稼がなくてよくなった

家庭において、早く社会に出て自分の力で稼ぐことが求められなくなった。

これらの要素が混ざり合って、短大進学者が減っていると考えられます。地域によっては、いまだに女性が大学に行く必要はないというような昭和初期の思考から抜け出せない人もいますが…。

なぜ保育学生が減っているのか?

2023年の保育養成校の入学者数は、3前年比で3,000人減っています。この数には、教育学部と専門学校は入っていません。
なぜ、保育養成校だけ先行して学生数が減少しているのでしょうか?

​​①保育=ブラックという思い込み

保育業界がブラックという思い込みが世間に広がっていることが、保育学生の減少に最も影響していると考えています。ブラックとされる労働環境や給与水準に対する先入観が、保護者や学生に広まり、保育業界への興味を抑制しているのが現状です。この誤ったイメージが解消されない限り、保育学生の増加は難しいと言えるでしょう。

②もっといい大学に行けるよね

進学実績を作りたい高校は、より偏差値の高い大学を勧めます。実際に、本当は保育士になりたかったという高学歴の学生も多くいます。

③コロナの影響

更に、コロナの影響も大きいです。コロナの自粛期間に、高校生の保育園での職業体験が行われなかったことで、保育業界に関わる機会が減少しました。保育という仕事の魅力発見や志望動機の形成がしにくくなり、保育学生の減少に拍車をかけています。

保育士を増やす策

このような背景から、私たちは保育学生の減少が単なる人口減少だけでなく、教育制度や社会の偏見、環境の変化にも深く関連していることを理解する必要があります。保育学生の減少が続けば、将来的には保育士の不足が深刻化し、保育サービスの提供に支障をきたす可能性も考えられます。

しかし、今こそ未来への展望を考えるべき時でもあります。保育の魅力や重要性を広く伝え、進学選択の幅を広げる努力が求められます。同時に、保育業界自体もブラックイメージを払拭する努力を惜しまなければなりません。また、コロナ禍で失われた職業体験の機会を補うためにも、新しい方法やプログラムの導入が必要です。

未来の保育業界を支えるためには、教育制度の見直しや社会の認識の転換が欠かせません。苦しい状況を乗り越え、保育学生の数を増やすためには、様々なステークホルダーが協力し、保育業界に新しい息吹を吹き込むことが不可欠です。



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