自惚れは毒

あなたが、他の人とのコミュニケーションを
うまくスムーズに行う時に、
必要なことは『自惚れを捨てる』ことだと思うのです。

いきなり『自惚れを捨てる』と言われても、
何のことかよくわからないかもしれませんね。
一体何に対する自惚れを捨てろというのか？
それは「相手の気持ちがわかるという、自惚れを捨てる」

人間は、主観的な生き物であり、
自分で意味づけた世界で生きています。
似たような体験をしても、その体験が意味するところは、
人によって違うのです。

相手の体験とあなたの似た体験とを重ね合わせて、
きっと、こんな風に思っているのだろう、と
想像することしかできないのです。
その推察を、自分と同じだと思い込んでしまう。
そう錯覚することによって、
相手の気持ちを、理解できた気になってしまうのです。

ですが、
相手の悲しみとあなたの悲しみは、同じではないのです。
そのために「あなたの気持ちはよくわかる」
そう言われたとしても、言われた方には
なんとなく嘘っぽく聞こえてしまいます。

アドラー心理学で言う『共感』とは、
「相手の目で見て、相手の耳で聞き、相手の心で感じる」
相手の立場に身を置き、相手の立場に立って
考えるということなんです。

これは、
相手の気持ちを完全に理解することはできないのだから、
常に相手の身になって考えながら相手の気持ちを
理解しよう、と努力をする態度のことです。

これに対して『同情』とは、
「自分の目で見て、自分の耳で聞き、
自分の心で感じている」ために、
本当は何もわかっていないにも関わらず、
相手の気持ちを十分わかっていると、
勝手に自惚れている状態なのです。

『共感』を示す人は、
相手の立場を尊重し、協調的な関係を築こうとします。

『同情』を示す人は、
相手を理解せずに自分中心の気持ちと態度で
従えようとしているのです。

この「相手の気持ちがわかるという自惚れ」が、
あなたの目を曇らせ、あなたの耳を塞ぎ、主観的で
相手の話を聞かせないようになり、
コミュニケーションを考えず、決定的な思い違いと
勘違いとすれ違いを作り出しているのです。

「相手の気持ちがわかるという自惚れ」を捨てれば、
もっと真摯に、相手の話に耳を傾けることが
できるようになりますし、そうあるべきだと思うのです。

安易に「私と同じだから、あなたの気持ちはよく解る」と
言わずに、しっかりと相手の言葉に耳を傾けることが
信頼を得てコミュニケーションを円滑にすると思うのです。