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虫コナーズ

6月頃にメモに書き残したものです。


先日の強風で、ベランダの物干し竿にかけていた虫コナーズが吹き飛ばされた。その日は傘がひっくりかえってしまうくらい、風が強く吹き荒れていた。

仕事から帰宅し、夕飯を食べている時に外からカタカタと物音がしていた。
布団に入った時にはもうその音はしなかった。なんの音だったんだろうと浅くまどろんでいた。

虫コナーズ。

身体を起こし慌ててベランダの戸を開けたが、そこにはもうそれの姿はなかった。先週買ったばかりの虫コナーズに別れを告げ、私は眠りにつく。

翌朝、諦めきれなかった私は目が覚めると真っ先にベランダに向かい、虫コナーズの姿がないか辺りを見回した。すると、室外機とベランダの隙間にそれが挟まっていた。
昨夜の雨に打たれ、風に吹き飛ばされた彼はびしょ濡れになり、気を失っているようだった。

私はごめんねと心の中でそっと呟き、再び彼を物干し竿にかけてやるのだった。

ー 完 ー

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