私の好きなアーティストの好きなリリックがある。
「終わらない道路工事」
私はゲン担ぎとか占いとかはあまり信じないタイプだが、頑固な性格もあり、昔から変えていないことを変に変えたいとは思わないタイプである。最もそれらは小さなくだらないことではあるが。
私が住む町の駅へ向かう道がある。
生まれてこの方、記憶の中ではその道しか通ってこなかった。
その道しか知らないのである。
もちろん最寄りの駅までの道はほかにも何通りもあるのだが、私はその道以外知らないのである。
そこには鳥居があって、同じ空気感で、5月にはアジサイが咲き、たまに工事のおっちゃんがタバコを吸って休憩している。
突然の出来事だった。
町開発のために、その道を囲む一帯を塞ぎ、全てを解体し、大きな一つの商業施設を建てるという。
私が小学生のころ、渋谷駅に大きな変化があった。
歴史を彩ってきた、街の隅々を解体し、きれいに便利にするためだった。
たかが小学生の私でも、今まで通りの街並みが変わることに違和感を感じていた。
それが24年経った今、わたしの街が壊されている。
利便性やクリーンで近未来のために再開発をしているという。
そこにあったいつもの景色は跡形もなく取り壊される。
カルチャーも情けも存在しない。
東京という邦は、世界的な都市であるが、海外の人間は、商業施設が連なる街並みをどう思うか。
私が海外に行く理由は、東京ドームほどの大きさのショッピングモールを訪れるためではない。
その街を長く見守り続けた建物や植物、子供たちのいたずら書きとか、哀愁あふれるものを感じたいのである。
「変化」という言葉に慣れすぎているのではないかとつくづく思うことがある。
ドライブをすれば、道路整備をしない日を見ることはない。
変わらないものってないのだろうかって思うが、どうやらそれは時代が許さないらしい。
せめて私だけは、変わらない心を持ち続けたい。
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