【2024年下半期】ベスコス成分&技術を徹底解説!<前編>
こんにちは!元化粧品開発者のななです。
美容好きならついついチェックしてしまうベストコスメ特集!
気になっていたコスメがベスコスを受賞していると、ついつい欲しくなってしまいますよね…
今回は、前回大好評だったベスコス研究企画の第2弾、雑誌やwebなどさまざまな媒体で発表される2024年下半期のベスコスの中からピックアップしたアイテムを、成分や技術に着目して徹底解説します!
1記事にまとめようと思っていたのですが、一つ一つの商品説明に熱が入りすぎて長くなってしまったので、前・後編に分けました。
まずは前編をお楽しみください✨
① ザ セラム aa(エリクシール)
エリクシール ザ セラムは『倍速美容液』のキャッチコピーで注目を集め、2024年9月の発売から3か月で「MAQUIA ベストコスメ 2024年下半期 ベスト・スキンケア大賞」など多数のベスコスを受賞しました。
ザ セラムには美白有効成分「m-トラネキサム酸」など21種類の美容成分が配合されているのですが、中でも一番のキー成分は「コアキシマイド」と呼ばれる資生堂独自の高機能成分です。
「コアキシマイド(表示名称:ヒドロキシエチルエチレンウレア)」は尿素(ウレア)の誘導体で、資生堂が30年にわたる基底膜研究の中で、21,476種類もの候補成分の中から見出した成分です⁴⁾。
基底膜とは、表皮と真皮の間に存在し、健やかな肌を保つための土台となる組織です。
基底膜には、①表皮と真皮をつなぎとめる、②表皮と真皮の間のコミュニケーション(栄養物や老廃物の移動、情報の伝達など)に関与する、③表皮幹細胞を安定化する、という3つの役割があり、それらが正常に維持されることで健康な肌が保たれています³⁾⁴⁾。
しかし、紫外線などにより基底膜がダメージを受けると、シミ・シワなどの肌の老化に繋がると同時に、表皮幹細胞(表皮細胞を生み出す細胞)の働きが阻害され、健やかな表皮が作られなくなってしまいます。
コアキシマイドは、そんな基底膜にダメージを与える2大酵素へパラナーゼとMMP-9を同時に抑制し、バリア機能・うるおい・シワケアなど、肌全体にマルチな効果をもたらすことが期待されています。
コアキシマイドにより基底膜が健康な状態に維持されると、表皮幹細胞を育む機能も維持され、表皮幹細胞が正常に分化して健やかな表皮細胞が生み出されることによって、バリア機能や肌のうるおいの改善が期待できます。
さらに、表皮細胞の状態がよくなると、真皮にも良い影響を与え、線維芽細胞に働きかけてコラーゲンの産生を促進し、シワの減少が期待できます。
さらにコアキシマイドの浸透にも独自技術が活かされています。
『倍速美容液』の由来である「倍速エッセンステクノロジー」は、コアキシマイド が、約2倍速くリリースされるエリクシール独自の成分リリース技術です。
テクノロジーのメカニズムは公開されていませんが、「倍速エッセンステクノロジー」がある場合はない場合に比べて、コアキシマイド が約2倍速く放出される※ことが確認されています ¹⁾。(※人工膜で計測した放出時間を比較)
資生堂が誇る独自成分×処方技術の掛け合わせが、ベスコスを多数受賞したポイントの一つだと思います。
② リポソーム アドバンスト リペアセラム(コスメデコルテ)
言わずと知れたコスメデコルテの名品。
初代「モイスチュア リポソーム」は1992年に発売されたリポソーム化粧品の先駆けであり、現行の「リポソーム アドバンスト リペアセラム」も多数のベスコス受賞・殿堂入りを果たしています。
リペアセラムのポイントは、なんと言っても「多重層バイオリポソーム」のカプセルテクノロジー。
美容成分を贅沢に抱え込んだたまねぎ状の多重層リポソームが、外側からじっくりほどけることで、潤いと美容成分の効果が長時間持続します。
また、リペアセラムにはリポソームを高濃度化するための製剤化技術も活用されています。
初期のリポソームには、濃度を高めるとリポソーム同士が密に衝突して構造が崩れるため、長期での安定化が難しいという課題がありました。
そこでコーセーは研究の末、リポソーム膜の構成成分を見直すことで膜のゆらぎを制御し、衝突しても壊れない膜強度が得られる処方を見出しました。
この製剤化技術によって、リペアセラムではリポソームを1滴に1兆個*¹もの高濃度配合*²することに成功し、より高い効果が期待できる製剤へと進化しました。
(*1:1滴0.1mLとして算出(概算値) *2:コスメデコルテ内比較)
リポソームと言えば、美容成分を肌に届ける浸透促進作用を思い浮かべる方が多いと思いますが、リポソーム自体にもバリア機能の補強や保湿作用など、さまざまな美容効果があることがわかっています。
リポソームの5つの効果や課題点、リポソーム化粧品の歴史については以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方はぜひご覧ください!
③ ジアンサー スーパーラメラシャンプー(花王)
『花王100年の研究で導き出したヘアケアの答え。』というブランドコンセプトで生まれた「THE ANSWER(ジアンサー)」
発売前から注目度が高く、2024年11月の発売後わずか1ヵ月で複数のベストコスメにランクインしています。
花王は100年のヘアケア研究のもと、うるおい・まとまり・ツヤ・なめらかさ・しなやかさという5つの要素を備えた美髪のために重要な役割を担う「タンパク質」と「脂質」に着目。花王が考える美髪5大必須成分※を定義しました。
(※加水分解ケラチン(羊毛)、セラミドα(ビスメトキシプロピルアミドイソドコサン)、リンゴ酸、ラノリン脂肪酸、脂肪酸グリセリドα(オリーブ果実油))
「THE ANSWER スーパーラメラシャンプー」には、シャンプー内に構築したラメラ層に、ケア成分を蓄える花王の新技術「ラメラプラットフォーム技術」が採用されています。
従来の一般的なシャンプーでは、界面活性剤が水中でミセルと呼ばれる球状の集合状態を形成し、その内側にしか脂質成分を抱え込めないため、多量の脂質成分をシャンプーに配合することができませんでした。
そこで花王は、水層と油層がサンドイッチ状に交互に重なり合ったラメラ構造に着目。ラメラ構造であれば油層に多量の脂質成分を取り込むことができるため、これをシャンプーに応用することを考えました。
一般的に界面活性剤と脂肪酸を組み合わせることによって、ラメラ構造を作ることが可能ですが、シャンプーに応用しようとすると、泡立ち性やすすぎ時のなめらかさが不足することが課題でした。
そこで、界面活性剤と脂肪酸に加えて、さまざまな成分の組み合わせを繰り返し検証した結果、脂肪族アルコールと脂肪酸グリセリドを組み合わせることによって、シャンプーの基本性能を備えつつ、脂質成分も多量に配合することが可能なラメラ構造シャンプー剤型の技術を確立しました。
さらに、脂質成分を配合したラメラ構造をもつシャンプーで毛束を30回洗髪し、脂質成分の毛髪への残留量と毛束の外観を調べた結果*1、洗髪を繰り返すことで、配合した脂質成分の毛髪への残留量が増加すること、および、毛束が揃い、まとまることを確認しました。
美容液のようなとろりとしたテクスチャーで、髪の根元から毛先までに塗り広げて泡立てる「塗り洗い」を推奨していることもユニークなポイントです。
ラメラ構造は肌の細胞間脂質でも見られる構造なので、スキンケアには以前から活用されていましたが、これをシャンプーに応用したのが新発想で、ベスコスに選ばれた決め手の一つだと思います。
まとめ
今回は、2024年下半期ベスコス成分&技術解説の前編として、雑誌やwebのベスコスの中からピックアップした3つのアイテムを解説しました。
ベスコスに選ばれた理由の一つとして、メーカーの研究やテクノロジーを知ることで、さらに興味を持っていただけたのではないでしょうか?
この他にもメーカーの最新研究や技術を詰め込んだ製品はたくさんあります。
公式サイトの研究リリースなどを読むと、メーカーの研究内容の一部が紹介されていることがあるので、興味がある方はぜひ探してみてください✨
製品の背景にある研究や技術を知ると、化粧品選びがより楽しくなりますよ!
それでは後編もお楽しみに♪
▼今回の記事が面白かったという方は、前回のベスコス紹介記事も是非ご覧ください【2024年上半期ベスコス解説】
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【参考文献】
1)エリクシールから、高機能エイジングケア 「倍速美容液」 誕生 ~2024年9月21日(土)発売~,資生堂プレスリリース,2024年7月18日
2)資生堂 基底膜研究の30年~肌再生の源から見通す肌の未来~,資生堂公式サイト,Shiseido Talks,2024年8月22日
3)独自成分「コアキシマイド」が、肌全体にマルチな効果をもたらす。,資生堂公式サイト,2024年12月23日アクセス
4)基底膜を修復する資生堂の研究,資生堂公式サイト,サイエンス&テクノロジー,2024年12月23日アクセス
5)研究開発ページ「リポソーム」, 株式会社コーセー, 2024年10月24日アクセス
6)新ブランド第二弾 「THE ANSWER(ジアンサー)」発売,花王ニュースリリース,2024年10月03日
7)ラメラ構造化技術を搭載したシャンプー,花王公式サイト,花王の製剤化技術, 2024年12月24日アクセス