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ヘイロンと、2日遅れのSilent Night

年の瀬も押し詰まったある夜、わたしは鴨川沿いのカフェにいた。大きな窓は鴨川沿いにベランダ。そこにあるものを見て、驚愕した。その隠れ家的カフェで見たものは、こちらの心理状態がそのように見せていたのだろうか。そこへ案内してくれたのは、京都をしりつくしたアメリカ人の友達、セス・シーゲルである。京都生まれ、京都育ちのわたしは京都を長く離れて、少し前に京都に戻った。そして、いまの京都を自分から遠く感じている。わたしと入れ違いに京都に来て、何十年も京都に馴染んだセスは、白いご飯におかかと千枚漬けがあればいいというアメリカ系京都人だ。2日遅れのクリスマス・プレゼントというわけでもないが、この出来事はまぎれもなく、忘れられない2024年のSilent Nightと思える。

鴨川沿いの店、カワカフェ。ガラス越しのベランダには、アオサギ(ヘイロン)の置物がこちらを向いていた

京都の鴨川は街中を流れる川なのに、自然の生態系が存在し、カエルや魚が生息している。それをめざして、カルガモやアオサギなどの野鳥が頻繁にがやってくる。その店は外国人に人気のスポットらしく、わたし以外はみな外国人だった。大きな窓の外にベランダ。そこにアオサギのオブジェが客をのぞき見していた。

なだらかに流れる鴨川を背景に、超リアルなアオサギのオブジェ。
アオサギ=ヘイロンが店内の様子を眺めるような表情は、どこかさみし気だ。
シュールリアリズムでもここまで作り込めるだろうか。オブジェが妙に心をゆさぶる。

このオブジェには魂が宿っている。そんな思いで見ていると…

見れば見るほど哲学的な表情に見える。アオサギのオブジェ。一体どこのアーティストが作ったのだろう…。
そう思った矢先、二階から生きた魚が降ってきた。アオサギへのクリスマスディナー?そう思って見とれるわたしたちの前に、その瞬間、二羽のアオサギは目にもとまらないスピードで魚を口にしているのを目撃した。

アオサギが動いた!生きている。

完成度の高いアオサギ=ヘイロンのオブジェは無表情だ。しかし、次の瞬間、ベランダに魚が投げ込まれ、二羽のアオサギ=ヘイロンは競い合って魚を奪い合う。


再び、オブジェに戻ったアオサギ。次の獲物を待つ捕食者の顔だ

瞬きひとつせず、じっと獲物がやってくるのを待つ、偉大なアオサギくんがいた


アオサギくんは次の魚のエサが2階から投げられるのを待っていた

「もっとちょうだい!」アオサギの声なき声が聞こえるようだ

「もっとちょうだいよぉ」というアオサギくんの声が聞こえそうだった


アオサギくんとkyotoKの希少なツーショット

生態系が活発な鴨川には、アオサギなどの野鳥がやってくる


友達のセス、そしてアオサギのパフォーマンスを一緒に楽しんだ観光客のみなさん

外国人にも人気、アオサギ=ヘイロン。鴨川沿いのカワカフェ

Kawa Cafeの看板、オーナーのセンスがやっぱりフランスっぽい

(映画)君たちはどう生きるか/The Boy and the Heron

「君たちはどう生きるか」は、スタジオジブリの宮崎駿監督による最新作である。この作品は、少年が喪失と成長を経て自らの生き方を見つける物語である。幻想的な世界と深いテーマが交錯し、観る者に強い印象を与える映画である。英語のタイトル「The Boy and the Heron」、このヘイロンはアオサギのこと。京都の鴨川は街中を流れる川なのに、自然の生態系が存在し、アオサギなどの野鳥がやってくる。海外の方たちを歓迎する最高のライブパフォーマンスである。

スタジオジブリ最新作 宮﨑駿監督「君たちはどう生きるか」
主題歌:米津玄師「地球儀」

米津玄師「地球儀」× 宮﨑駿「君たちはどう生きるか」Kenshi Yonezu - Spinning Globe (Hayao Miyazaki, The Boy and The Heron)
youtube制作:Kenshi Yonezu  米津玄師

この楽しい出来事は、去り行く2024年をドラマティックに見送るための装置ように感じていた。わたしをこの場所に案内してくれた友達のセス・シーゲル(Seth Siegel)は、このアオサギの美しい写真を撮影したフォトグラファーだ。さりげなく、また、したたかなアオサギの生きざまを目の当たりにして、そろそろ24年にさよならして、わたしもあの獰猛に生きるアオサギにあやかって、新年をアグレシブに迎えよう、と思った。しかし、物事はそう簡単にはいかないものだ。その日の夜中を過ぎた頃、わたしは激しいのどの痛みなど、風邪の症状に見舞われ、あっという間に高熱にうなされた。こうして年末から正月にかけて、どこか遠いパラレルワールドを彷徨っていた。25年の生き方を決意して、それまでの自分と決別するように、それから10日間、インフルエンザがわたしを覆う夢の中で、あの美しいアオサギとダンスを踊った。それがわたしの25年の初夢だった。




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kyotoK
noteの2年目はチャンレンジングな創作にもアプローチしたいです。応援いただいたチップで取材をしたり、作品づくりに活用させていただきます!