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そのお墓、一体誰が守っていくのですか?80歳前半の男性。男尊女卑の価値観が根強いのです。

終活セミナーでの出来事。

ご夫婦で参加されていた80歳前半のご主人の問いかけです。
「墓地を以前に購入してあり、そろそろ墓を建てようと考えているが
ここに参加している皆さんはどうされるんですか?」と。

参加された皆さんの中には、(継承されたお墓をどうしよう)と考えておられる方もおられましたが、「今スグでなくてもよい」とか「お寺にまだ話していない」等と先延ばしにされていて、具体的に行動していない方が大半でした。


埋葬方法で私たちが真っ先にイメージするのは「お墓」です。
この「お墓」を筆頭に主な埋葬方法は5つあります。

  • お墓

  • 永代供養墓

  • 納骨堂

  • 樹木葬

  • 散骨

誰もに選択肢が5つあるわけでは無く、
私たちの状況によって選択肢は減ってくるのです。

例えば、代々受け継ぐことを前提とした「お墓」は、お孫さんに男の子がいない場合、選択されません。男のお孫さんがいても長男が地元に戻らない場合、「お墓」は選択されません。


問いかけられた80歳前半のご主人には息子さんと娘さんがお一人ずつ。
息子さんは都心で生活されていて、将来、地元に戻ることはなさそうです。
娘さんはご近所におられ、実家はよく顔を出され、少し前に奥様が転ばれた時も看病や家のことを全て手伝ってもらったそうです。

そのご主人が「近々お墓を建立する」と言い出したから「さあ大変!」と、奥様が終活セミナーに参加すれば気も変わるんではないかと申し込んだらしいのですが。

とにかく、80歳前半の男性・・・
男尊女卑の価値観が根強いのです・・・

ご主人は分家なのでいずれお墓を建てる必要があると考えており、20数年前に墓地を手に入れています。その時に「次は墓だなあ」と強く感じたそうです。

年を追うごとに親族の墓に行く機会も増え、そのたびに「お墓を建てなければならないな」と感じていて、親族からも「子供たちのためにも、そろそろ建てておいた方がいいだろう。万が一のことが起こった場合、お墓がないと困るのは子供たち」と言われ、石材屋さんに行き、具体的な話も済んであるらしいのです。

しかし、このことは、子供たちに相談は無く、奥さんには事後報告。大体、ご主人はお墓を建てることは相談すべき事柄と感じてらっしゃらないご様子なのです。

おかしなことだと思うのですが、育った環境だとか、家族のあり様をお伺いすると無理はないなあと思う面も多分にあるのです。

生前に墓を建てるメリット
・死後の不安を軽減できる
・本人の意向をお墓に反映できる
・遺族の精神面や金銭面での負担を軽減できる

高齢になると、自分自身がどのように埋葬されるのかが不安になり、終活も盛んな今、事前に準備しておきたいと思います。希望に基づいてお墓を建てることができるため、死後の不安を取り去り、精神的な安堵感を得ることができます。そして、生前にお墓を建てることで、遺族への金銭的な負担を軽減することができます。

生前に墓を建てるデメリット
・一度建ててしまうと将来に変更が生じた場合、お金や労力が要る
・お墓の維持にお金や労力が要る

お墓の維持管理には「墓守」が不可欠です。不在となりなった場合、無縁墓になるリスクが生じ、墓じまい等の検討などをする必要性が出てきます。墓石は丈夫とはいえ、時間とともに劣化します。屋外に設置されていることが多く、土やほこりで汚れてしまうほか、周りに雑草が生えることもあるため、定期的な掃除や除草が必要になります。さらに経年劣化による変色や破損のリスクや、地震による墓石のズレや倒壊といった可能性もあるため、定期的に墓地を訪れてメンテナンスをする必要性があります。墓地管理費が必要なところもあります。


80代前半のご主人、「一家は私が守ってきた」という自信のもとに「私の言うことは間違いが無い」「お前は黙って私についてくればいい」「子供も私のすることに文句はないはず」と言わんばかりの強引な態度です。

実は奥さん、もう一つ我慢できないことがあったのです。

「この人、お墓を建ててから、お仏壇を購入の予定なんです。私は女二人の姉で両親の位牌を妹が見てくれているんです。妹ばかりに面倒を見てもらうのは悪いから、主人がお仏壇を買ったら、この際、両親の位牌を購入したお仏壇に入れよう思っていたんですけど主人がこう言ったんです」「私が買う仏壇は〇〇家の仏壇や。△△家の位牌を入れるわけにはいかん」って。「両親の位牌のことがあるので、お墓を建てることは墓地も買ってあることだし、仕方ないかと思ったんですけれど、もうがっかりしました」と。


家族の関係性は今始まったばかりでなく、長い期間を通じてパワーバランスを形成しています。子供たちが独立した後の夫婦間のパワーバランスも同じです。経済を握られていると尚更です。自分の固定観念だけが正しいの態度をとり続けます。


「お墓」は供養の一つです。自分で建立したお墓の供養は自分ではできません。供養する子供たちの思いや考え方を尊重して考えるべきです。「老いては子に従え」にあるように、我を張らずに、自分の思いや考えを家族に話し、自分たち家族の供養のあり方を考えればよいと思います。

しかし、ご主人のように家族の合意を得ないでお墓を建てることで、自分の立場を危うくしてしまうことも往々にしてあります。人生後半の大きな決断には大きなリスクがつきものです。目の前のお墓を建てることだけに固執せず、自分の人生設計は家族(家系)設計の中にあることをよくよく自覚しましょう。そう、自信を振りかざさなくとも後ろの代に煙たがられるだけです。
次の代は育っています。

折角、ここまで色々なことを乗り越えてやってきたのです。世間体や見栄もあるでしょうが、もうそんな年齢(時代)ではありません。聖徳太子のいうように、ここからは家族の和をなによりも大切なものとし、わだかまりなく話し合い一つの答えを導きだしましょう。それが自身にとって、とても実利のあることだと思います。

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起業して16年。その間、埋葬や供養の世界は大きく変わりました。それは世の中が猛スピードで変化していく中の一つでしかありませんが、大切な人を亡くした心は、猛スピードで大切な人のいない世界に慣れるわけではありません。急ぐことはありません。グリーフは行きつ戻りつです。ゆっくり、ゆっくり立ち直ってください。


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