コンクリートジャングルから願った夢、叶った今 エッセイ#24
ふと、日本に帰国した時の写真を見ていたら、
「やっぱり、東京が好きだなぁ。」
と改めて思った。
私は、自然も大好きだけど、都会が大大大好きで、大学を卒業して渋谷区に住んだ。
でも、そこから始まった私のコンクリートジャングルライフは、思いのほか窮屈だった。
生まれと育ちは横浜で、都内にいることも多かったので、人生のほとんどを都会と言われる場所で過ごしてきた。だから、渋谷区に住んで息苦しく感じたことは、予想外だった。
でも実際、片時も都会の喧騒から離れられない、都内の会社と自宅の往復をする日々は、私には思いのほかしんどかった。
24時間コンクリートジャングルの中にいると、空を感じられなかった。それが一番しんどかったなと思う。
高層ビルに阻まれて、空が見えないし、空が狭かった。
その頃、沖縄旅行に行って、胸に飛び込んでくるような広々した青空を見た時、私には広い空が必要なのだと確信した。
もう一つ、コンクリートジャングルで私が苦しかったことは、季節を感じられなかったことだ。
その頃の私は、マーケターとして一日中オフィスで仕事をしていたのもあって、1週間のほとんどを空調がきいた空間で過ごしてた。
朝、慌てて家を出て、空調がきいたオフィスで一日を過ごし、オフィスを出るころには外が暗くなっている。
少し余裕があった朝のこと。
通勤路にあった高層ビルの脇に、人工的に植えられたのだろう、無機質に並んだ木の葉っぱたちが黄色になっているのを目にした時、「あれ?今って秋なんだっけ?」と思った自分にびっくりした。
自然から遠のきすぎて、季節を感じられずに過ごしていた。気温を知っているだけの日々。
日記を書くと毎日と言っていいほど、「自然を感じたい」と書いていた。本能的に自然を渇望していたのだと思う。
そう考えると、今住んでいるコロラド州デンバーは絶妙だなぁと思う。
カフェ・美容院・スーパーマーケット・レストラン、私の日常に必要な全てが徒歩圏内にあって、それ以外もUberでどこでも行ける。
まぁもちろん、LAやNYのような大都会ではないけれど、都会の利便性は、私にとっては十分なのだ。
それでいて、自宅の窓からロッキー山脈が見えて、自宅の目の前にある自然公園にはリスや野うさぎが走り回っている。20分も車を走らせれば、山々が連なるハイキングコースがあって、自然の息吹を肌で感じられる。
私にとっては、最高の都会&自然のバランス。
都内で会社員をしていた頃、ノートにしきりに書いていたことがある。
それは、
「都会ではあるけれど、自然の息吹を感じられる場所に住みたい」
という、なんとも矛盾した、わがままな願い。
けれど、何年も前に、都内のカフェでしきりにノートに書いていたこの願いが、
今、現実になっていることに、静かな感動が込み上がってくる。
自分が本当は欲しいもの
心の底で願っていること
自分の中で押しつぶされそうになっている本音を
かき消さずに、押さえつけずに、
蓋をしてしまわずに
「バカげてる」
「叶うわけない」
なんて、否定せずに、
認めてあげれば、拾い上げてあげれば、
自分の想像を越えたルートで、願った景色が見える場所に到達するのだと、私は思っている。
P.S.
コンクリートジャングルでの会社員ライフは、私にとってはしんどかったけれど、でもやっぱり、東京が好き。
アメリカに住む今、年に数回だけの、たまの東京タイムが、私の楽しみの一つになった。