術前検査、ちょっと孤独
さてさて、翌日朝一番にDr.Fのオフィスから連絡がありました。手術は水曜日で問題ないとの事。術前の検査は通常2日に分けるんだけど、今回は時間もないので1日で全部済むようにしますから月曜に来てくださいと言われました。手術当日は7時にチェックイン。へ?当日?日本だと術前に入院すると思うのですが、私のケースが普通ではないとしても、大きい手術でも当日入院とは!?まあ、米国の入院費用は高額なので、一泊分セーブ出来たって事で良しとします。
今日は会社の上司に病気の事を言わねば。週末は家事を済ませておこう、普通に動けるうちに。退院しても当分買い物も無理だし、冷蔵庫をいっぱいにしておかなくちゃ。週末、一人で居たら胸がいっぱいで食べられそうにないけど、出掛ける気分じゃないなあ〜 と思っていたら、元同僚が心配して、様子を見に来てくれると言うので、助かりました。とにかく、何も考えなくて済むように、目一杯忙しくしておこうと思いました。娘の日本人学校の送迎はどうしよう。担任の先生に連絡して相談するしかないな〜。1学期でも行かなかったら、きっと日本語の読み書きを忘れちゃう。万が一日本に帰る事になったら、困るのは娘だ。絶対に何とかして続けさせなくちゃ。新学期の準備は、勝手に買い揃える訳には行かない。娘の好みがあるから。娘のパパが来てくれるので、新学期の準備は全部お願いしよう。
術前検査は順調に進んで、PETにちょっと時間が掛かったけど、殆ど待たされる事なくスムーズに終わりました。術前検査って、普通だったら、こうして1人で来るものじゃないよなあ〜 と、ちょっと気弱に。検査待ちの部屋をふと見回すと、やっぱり「ぼっち」は私だけみたい。最後に麻酔の専門医の問診があって、そちらに案内されました。
なんで私がこんな憂き目に遭うんだろう?もっと他に、ご主人や家族のサポートが受けられる人は山ほど居るのに、どうして海外で子供抱えて1人で頑張ってる私が病気になるの?もう嫌だ、このまま50/50チャンスで終わっちゃったら、その方がずっと楽かも。。。などと、ぼっちをひしと痛感して、気分がど〜んより。ううう、耐えねば!負けるもんか!!
麻酔医のオフィスの前の待合には誰も居なくて、オフィスの扉は何故か開けっぱなしでした。ふいに点滴をぶら下げた女性が、(多分)ご主人に車椅子を押されて入って来ました。頭には一本も髪の毛がなく、とても痩せていて青白く、闘病の厳しさが窺い知れました。お二人は真っ直ぐにオフィスに入って行き、扉はそのまま開けっぱなし。そのせいで中の話が全部聞こえて来ました。
その女性は、自分は何としても家族の為に生きたいんですと、一分一秒でも長く生きたいんです!と麻酔医に訴えていました。見かけの弱々しさと裏腹に、しっかりした声で、エネルギッシュに「生きてやる!!」オーラ全開でした。
彼女の言葉を聞いて、ふと私の頬を涙が伝いました。全く見知らぬ女性の言葉に、魂が揺さぶられました。ああ、私には、彼女のように「生きたい!」と言う強い意志がないなあ。彼女はあんなに厳しい闘病を強いられても、生きたい!と思わせてくれる存在がある。私は本当に1人なんだ、そう思うと、声を上げて子供のように思い切り泣きたい衝動に駆られました。でも、私は茫然自失で、自分の順番が来て名前を呼ばれるまで、ただただ静かに涙を流していました。