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英語学習と語用論の重要性

以前書いた研究レポートの整理が途中で止まっていたので、一年越しに書き終えたいと思います。研究テーマは「日本の英語教育における語用論の重要性」にしました。元々語用論・中間語用論に興味があったのでその視点から日本の英語教育を捉えてみようと思いました。

語用論とは

語用論(pragmatics)とは言語を正しい文脈や状況で適切に使用することを研究する学問で、pragmatic competenceとは社会的コンテキストに応じて言語を適切に使える能力のことです。私の専攻分野である異文化コミュニケーションにおいて、この適切な言語使用は非常に重要だと実感しています。普段母語である日本語を話している時には考えることはありませんが、第二言語である英語を話す際に「言いたいことをどのように言うか」ということは私を含め外国語学習者であれば迷ったり考えたりするのではないでしょうか。

私の経験

英語学習約10年目、アメリカとオランダに在住経験のある私ですが、英語使用時に困惑する時があります。例をあげると、ある時自国に帰国した友達から連絡が来ました。私たちは以前にスタバのグッズについての話をしており、それを覚えていた彼女は自国にしかないスタバのマグやタンブラーが欲しいかと私にわざわざ連絡をくれたのでした。(以下メッセージ文)

友達:"【スタバのグッズ写真と一緒に】…these are all they have (at starbucks in my country)"(私の国のグッズだよ)
私:"Oh pink one is cute"(ピンクのやつかわいいね)
友達:"yeah it is! do you want the pink one? i can also try to check starbucks in my city"(だよね!欲しい?私の地元の店舗のグッズもチェックできるけど)*1
私:"it's okay! thank you though hehe"(大丈夫!けどありがとうね)*2

ーーーーー1週間後ーーーーーー

友達:"【別のスタバのグッズ写真と一緒に】hi i only can find this in my hometown. do you still want the pink one? :)"(地元で見つけたのこれだけだったわ。やっぱピンクのやつ欲しい?:))*3
私:"I don't need anything for now but thank youuu"(今はなにもいらないかな、でもありがとううう)*4
友達:"okay!!"(りょ!)


お気づきの方がいるかもしれませんが、私の意図としては最初に欲しいか聞かれた時点(*1)でやんわりと断ったつもりでした(*2)。しかしその1週間後に再度同じ質問を聞かれた(*3)ことから、私の意図が十分に伝わっていなかったことが分かります。そこでミスコミュニケーションに気づいた私は、今度ははっきりと断りの意を示すことで相手も理解してくれました(*4)。

外国語で「断る」

この一連の流れをもし日本人の友人に対して日本語で行ったらどうなるでしょう。きっと異なる結果が生まれると考えます。直接的には言わず、けどそれとなく伝えることが日本的コミュニケーションだからです。逆に言うと、上記の場合、私が日本語のコミュニケーションを英語に使用してしまったことが原因と言えます。この現象を語用論的転移(pragmatic transfer)と言います。簡単に言うと、話者の母語スタイルが第二言語に影響を与えてしまうということです。私の中の((いらないと断りたいけど断ったらせっかく提案してくれたのに友達が気を悪くしちゃうかも…それとなく伝えよう))という文化的な配慮が結果的に裏目に出てしまい、友人とのコミュニケーションに齟齬を生み出してしまったのです。

一方で、"「断り」とは「聞き手によって提案された行為を行なうことを拒否する発話行為」であり、 相手に不快な思いをさせないためには高度なコミュニケーション能力を必要とする。(近藤、2009)"ため、いかに外国語で「断る」ということが難しいかが分かります。(日本語でも誘いや依頼にどうやって断るか悩むことありますよね…)
これからも私の英語やその他外国語学習は果てしなく続きますが、実践を通してトライアンドエラーを繰り返しながら、より深くその言語を知っていきたいと思います。また面白い失敗があればここで紹介したいと思います。笑

【参考文献】
近藤佐智子(2009).『中間言語語用論と英語教育』Sophia Junior College Faculty Journal Vol. 29, 2009, 73-89


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