FRUITPUNCH AUDIO MIDNIGHT 006;歯型のついた金メダル
おばんでございます。カクテルです。
メダル、噛みましたね。あの映像から、昭和の時代の酔ったオッサンたちの宴の席から聞こえて来た『どわっはっは!』という怒号のようなヤニくさい笑い声を思い出しましてしょっぱい気分になりました。
わたくしその後、かの市長がしゃちほことかアイドルの載った新聞を噛みながら愛嬌(本人にとっては)を振り撒き散らす写真を見てしまいまして、中年男によるひょうきんポーズは卒業しようと思った次第でございます。
わたくし自由業でありまして、たとえば甥や姪なんかからは『ちょっと砕けたおじさん』という認識であると思うのですね、しかしだからと言ってカメラを向けられた時に今までどおりにニカッと愛嬌を込めて、気軽にヴイサインのようなひょうきんポーズを決めたりしてしまったらば、いつか取り返しのつかないような醜悪な表情をしたズレまくり写真が撮れてしまうんではないか、そういった恐怖におののいたのでございます。妻にまで相談してしまいました。いいトシだし、冷静に写ろうかな、なんて。
甘利大臣なんかも以前、いきなり若者文化知ってますから、みたいなフンイキで『ゲスの極み乙女』の歌を歌い出しましたよね、どうだとばかりに。
政治に関わる大人には、世の流行に疎く実直であってほしいというのはこの時代、ワガママな希望なんでしょうか?オッサン政治家からガンプラだプリキュアだまどかマギカだなんて口から泡を飛ばしながら語られたら、いや自由ですけどね、自由ですけど鼻白んでしまいます。
わたくし、メダル噛みが起こるまでの『ズレたおっさんへの恐怖感覚』は、『3年B組金八先生』第一期で金八っつぁんが『理解ある教師』のテイで、生徒たちと『デスコ』に繰り出すシーンに対して最高峰に感じていました。
当時わたくしその先の予想がついたのですが、ディスコで金八のやつが出張って来て『サタデーナイトフィーバー』のポーズを取りました、やはり。
中途半端に脚を上げたりしてマッチやなんかに「お!やるじゃん、金八っつぁん!」なんてはやし立てられたりするんですが、その金八っつぁんの立場に置かれる事が子供心に最大の恐怖でした。
だけどもこの時の金八っつぁんなんてカワイイものです。むしろ中年にもなればこういった立場を一度くらいは引き受けなければならないような気までしておるのです、今となってはわたくしは。
今、メダル噛みを通して自分の中のモンスター中年男を見つめ返しているところです。驕りはないか?空気は読めておるか?人の気持ちに気を配っているか?ーー創作全般にも言える恐ろしい事ですが、一方通行の『ゆうもあ』ほど恐ろしいものもないのでございます。
先だっての不自由展には歯形のついた金メダルが予言のごとく出品されていたとかいないとか。ーーいませんけれども。
では今夜も最後まで、わたくしの文章が一方通行でない事を祈りつつ、どうぞよろしくお願い致します。■