
私家版・ビカクシダの育て方(P.bifucatumと仲間たち)
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基礎知識
ビカクシダはシダの仲間である。
シダの仲間は往々にして水気が好きで乾くと一発でやる気を無くし飼い主への恨み言のように枯れていくが、ビカクシダの中でもビフルカツムとその改良品種は「どうしてそんなに強くなったのか?」という程度には強健なのであまり心配しなくていい。
あきらかにインチキ臭い見た目をしているのは着生植物であるため。着生植物は居候ではあるが、寄生虫ではない。他の樹木の幹を間借りして、自力で光合成して自力で水を吸い増える。
シダの仲間なのでお花が咲くことはなく、ある程度成長すると胞子がついて増える。
また子株を出して無性生殖でクローンを作って増えることも。
地味に空気清浄能力がかなり高く、置物系観葉植物としては比較的意味のある機能を持っている。
P.bifurcatum
プラティケリウム・ビフルカツムというのが一番流通しているビカクシダの学名である。とかく頑丈で美しいのでよく品種改良されており、改良筆頭のネザーランドやヴィーチーなども同じく頑丈。
注意してほしいのが、すべてのビカクシダがビフルカツムのように馬鹿強いわけではない。同じノリで気難しい「リドレイ」や「エレファントティス」を管理すると枯らすので心して迎えましょう。
ビカクシダの構造

貯水葉
着生して生きるビカクシダが水を貯める場所。ビフルカツムに関しては、株が小さいうちは生えていない。そのうち生えてくる。
最初は緑色だが、時間がたつにつれ枯れて茶色くなる。貯水葉が茶色くなるのは自然なことなので心配しなくて良い。
ハサミを入れるとわかるが、内部はスポンジ構造になっていてフカフカする。
成長点
草の本体。
ここが死ぬと高確率で死にます。
胞子葉と貯水葉についてはベタベタ触って大丈夫だが、成長点はあまり触らない方が良い。
大事な場所なので、草の健康チェックに使うことが多い。ビカクシダを買うときにここがもふもふしていて元気そうなら健康。逆に成長点が枯れているように見える場合は葉っぱが緑でも死んでいる可能性があるのでやめておこう。
ビカクシダは木に張り付く性質上Z軸の概念を理解していて、置くときに方向がある。成長点が上に来るのが正しい。
成長点が上にいくように伸びていくので、ビカクシダの葉っぱは下に行くほど古く、上に行くほど新しい。
うっかり逆さまに置くとバグって調子が悪くなるほか、向きを修正しようと変な成長の仕方をし始める。
胞子葉
胞子製造と光合成を担当する。
上に行くほど(≒成長点から遠いほど)新しく、下の葉っぱは草本人がいらないと判断すると枯らして落葉させる。下の葉っぱが枯れてとれるのは自然なことなので気にしなくて良い。翻って、上の葉っぱが枯れてきたときはなにかイレギュラーな自体が起こっている。
体感だが、健康的な代謝で枯れるときは徐々に緑色の色素が抜けて最後に茶色くなる枯れ方をすることが多い。
板付管理
着生植物なので、本来の姿に寄せて水苔につけて板にくくりつけて管理するのが一番楽だと思われる。
水苔に触って乾いていたら水をあげよう。
植物は「濡れると乾くのサイクル」を作って管理するもの。
迎えて一ヶ月目ぐらいから、観葉植物用の液体肥料を規定より薄めてかけるとクソバカでかくなる。逆にデカくなってほしくないときは肥料は更に控えめにあげると良い。
自然下だと特に子株のうちはジャングルの木の陰で育つため、直射日光は必要ない。太陽で直接炙ると死にます。
置き場としては「レースカーテン越しの窓際」がベストとされているが、LEDでも普通に光合成するので、植物育成ライトはもちろん、デスクライトに思いっきり寄せても全然OK。
基本的に人間が快適に過ごせる気温を好むので、人間と共生しやすい。
熱帯植物なので、暑さ自体にはもしかすると人間より強いかもしれない。(少なくとも私よりは強そう) 夏場はあまり心配することがない草でもある。水切れだけしないように気をつけてあげよう。
冬の管理
例によって熱帯植物なので寒さにはそれほど強くない。
置き場の最低気温が15度を下回ったら窓際から移動して冷えこまない場所に移しましょう。
当然だが冷凍野菜になると即死なので寒冷地の人は気をつけてほしい。特に「昼間は日光で暖かいので油断して窓際においていたら、明け方に外気温並に冷えて死亡」の事故はマジで多い。自分は某で質問回答者やっているのだが、ほんっとうに冬場になると多い、本当に、マジで。
先述の通り冷えによる死亡は本当に即死なので、数年育てた草を冬場良かれと思って日光に当てて取り込み忘れて失う事故はとても悲しい。レスキュー系の駆け込みでも凍死だけはどうしても助けてあげられないので心が痛い。
冬場は無理に日光に当てなくていいので、暖かい場所に置きましょう。逆に春先は夜間の最低気温が15度を上回ったら窓際に戻してあげよう。
……何?それにしても窓から離すと部屋が暗い?植物育成ライトってものがあってェ……
トラブルシューティング
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きれいな状態なのに新しい葉っぱが出なくなった
多分肥料切れてる。液肥を薄めにつくって水やりのときにかけてあげよう。
貯水葉が胞子葉を巻き込んでるー!?
たまにある。
新しく貯水葉が出ると胞子葉をまきこんで変な形になることがある。基本的にほっといても問題ないが、気になるようなら胞子葉の方を剪定してもいい。切るか切らないかは好み。
うっかり水切れした!
今すぐ水ぶっかけて。
植物がしおれたとき、触ってしなしなならまだ生きてる。
パリパリだったらお星さまです。まあ私は水かけて蘇生を粘るけどね……
水苔がボロボロ……
植え替え時期かも。
水苔を買ってきて、バケツや洗面器に水を張って戻し、植え替えよう。
水苔だが、実はグレードが細かくある。最高級品はニュージーランド産だが、はっきり言って高価。
草ガンギマリでなければチリ産のものがそれなりのグレードでおすすめ。
また人災として、世界的な園芸需要の高まりで水苔自体が品薄になっており、水苔転売屋がいるので、買う前には適正価格の調査をおすすめする。可能なら通販より店舗で買ったほうが安心。
近くにホームセンターコーナンがある人だったら、コーナンのチリ産水苔が価格の割に質が良い。
茶色い斑点が!
ちょっとした傷や、自然にできることもよくある。……が、どんどん増殖する場合は病気だと思う。(細菌性のやーつ)冬に水切れしたときに多い。
自然な貯水葉の枯れや下葉の落葉と区別がつきづらいが、違いとしては自然な落葉の場合は全体的にじわじわ変色するのに対し、病気のときは「斑点が出て増える・拡大する」のが見分けるポイントかなと思う。
変色が進行する場合は思い切って切り取りましょう。冬場水切れしないように注意。水苔が乾いたら水をぶっかけます。
葉っぱがベタベタする……
愚かなカイガラムシが侵入している。
葉っぱをよく見てコナカイガラムシか、カタカイガラムシあたりがいないかチェックしてほしい。
駆除としては、爪楊枝などで物理的に除去したあと、農薬をかけるのが良い。
一番効くのは水苔に「オルトランDX」を仕込むことだが、 そうすると屋内に置いておくには臭すぎる(体調が悪くなるほどのケミカル臭がする)ので、草を外に待機させられない人はやめておこう。室内で待機させるなら「虫から優しく守るミスト」あたりがおすすめ。ネオニコチノイド入なのでちょっとタバコっぽい臭さがあるが、風通しの良いところで乾かすと割とあっさり消える。
農薬の使い方教えて!
あらゆる農薬に共通することだが、「一回で、大量に」かけること。
理由はいくつかある。
第一に、愚かな虫が薬剤に耐性をつけることを防ぐため。
農薬を半端にまいて生き残りが出ると同じ薬が効かなくなることが多い。「この一回で、殺し切る」を胸にしっかりかけてあげよう。もちろんうっかり人間が吸い込まないように注意。
第二に、それと薬害を防ぐため、農薬には使用回数制限がある。農薬の裏面の説明書きはよく読みましょう。
例えば、上にリンク貼ったやつだと4回まで。4回以内に殺しきらないといけない。
薬剤を撒く前にある程度物理的に目に見える範囲の虫を除去しておくのはすごくおすすめ。当たり前だが成虫のほうが薬に強いので。
実際に自分が愚かなヒラタカタカイガラムシを根絶したときは、物理的駆除のあとMY PLANTSミストを散布+孵化してきた幼虫を狙って3日後にもう一度散布で成功した。二度と逆らうんじゃねえぞ。
最後にビカクシダ特有の事情である。というか、シダ植物の事情である。
シダの仲間は農薬に弱く薬害を起こしやすい。
「虫からやさしく守るミスト」をおすすめしたのには成分がマイルドというのがある。
一応これとオルトランDXは自分で使って大丈夫なのを確認しているが、「カイガラムシエアゾール」などは薬害による死亡報告を聞いたことがあるのでちょっと怖い。
草全般に使えるテクニックとして、農薬で薬害が出たら直ちに水で洗い流すと助かることが多い。
農薬をまいたら一晩は日光に当てるのは控えよう。薬害が出やすい。
なので日没後に薬をかけるといい感じになる。
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