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奈良は本当に"まほろば"だった話。平城宮編。
こんにちは。こんばんは。おはようございます。
前回の法隆寺編が思いのほか多くの方に目を通していただけたみたいでドキドキしている胡蝶です。
これだけ法隆寺を語っておきながら
実は一番感動したのは平城宮だったりして。
奈良に行ったら絶対行くべきスポット
個人的にはNo. 1の平城宮です。
それでは、平城宮編。
日の落ちる3秒前
紫雲の切れ間から光が差したとき
平城宮で過去と繋がれた気がした。
夕暮れ時に平城宮を訪れたのは本当に偶然だった。
圧倒的存在感を放つ千年の都・平安京と比べると、歴史の授業で習った難波宮だの大津宮だのの中に紛れてしまって、名前以外はろくに知らないほど。
マリオットホテルが奈良駅の近くにあったなら、きっと足を延ばしてはいなかっただろう。
斑鳩から帰ってきた夕方、30分くらいと、ふらりと訪れたのが平城宮だった。
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何の変哲もない国道に、唐突にあらわれるのが平城宮公園だ。
まずその広さに圧倒される。
朱雀大路の幅を再現したというまっさらな広場はとてつもない解放感で、その果てにある朱雀門に待ち構えられているような心地になる。
それまでは近くのコンビニに行く延長のような気持ちでいたのに、気付けば背筋が伸びていた。
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朱雀門の向こうにあるものに期待が高まったけれど、まずは資料館に入った。
この資料館がすごい。
徹底して、来館者に平城京での暮らしを体感させる見せ方をしていた。
展示物を神妙に並べて、まっさらな白い紙に細かい説明を書いて終わり。ではない。
そもそもあまりメジャーではない奈良時代の話。
官吏の俸給が現代換算で分かりやすく表示されていたり、デジタルの木簡に万葉仮名で書いてみたり。
見せ方がうまいと思った。
黒い壁と白い光、ひんやりと肌寒い冷気。
追い立てられように感じてしまうから博物館の照明は元来苦手だった。
白とグレーをベースにした壁に布が柔らかく垂れていたりして、この資料館は平城宮いざない館という名前の通り、優しく包み込んでくれた。
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後ろ髪をひかれながらいざない館を出て、いよいよ朱雀門をくぐる。
朱雀門といわゆる宮殿である太極殿とは少し距離がある。
門と大極殿を横切るように走る近鉄がまた良い味を出していた。
クリームやらえんじやらといった
レトロな色の可愛らしいまろい車体と、
ススキの向こうに聳え立つ朱色の大極殿とのバランスが良かった。
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正面には大極殿。
振り返れば朱雀門。
周りをぐるりと縁取るのは生駒山や春日山。
見上げれば薄暮の雲の切れ端から柔らかくベールのように金色の光が注いでいて。
広がる大地。山に護られた土地。
良い土地だ、と直感的に思った。
風水や迷信などを信じる方では決してないのに、
ここに都を構えた昔の人の気持ちが少しわかる気がした。
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復元された大極殿は、復元版ながらに美しい建物だった。
むしろ、復元されていたことで没入感を増していたように思う。
例えばもし、朽ちかけた木造の建物だったとしたら、それはそれで歴史の重みを感じられたのかもしれない。
それでも、往時と同じ堂々とした姿で立っていたからこそ、風格があった。資料館の解説とも相まって、まさに当時の平城宮へいざなわれた気がした。
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軒下へ出て外を眺めると、隣にいた女性が双眼鏡を貸してくださった。
5キロ近く先にある興福寺の塔や東大寺が見通せるのだと言う。
目を凝らせば肉眼でもはっきり見ることができて、仏教と当時の政治との強い結びつきが文字通り目に見えて実感できて面白かった。
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30分のつもりで来ていたのに、大極殿から外に出ると日が暮れかけていた。
西陽の沈むほんの数刻前。
太陽は一等煌めく。
空は青紫に染まっていて。
ススキに透ける光。
なんの変哲もない色んなものがハッとするほど綺麗に見えた。
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自分がいつを生きているのかも、
どこにいるのかも曖昧になるような、
特別な場所だった。
耳を閉じれば、千年以上も前にここに暮らした人々の息遣いが聞こえてくる気がした。
手を伸ばせば、奈良盆地の何もかもに触れられそうだった。
なるほどここが王都かと。ここが日本の中心かと。
自然に腑に落ちる格があった。
この良い土地から文化は生まれる。
この豊かな風景から、和歌は生まれる。
やまとは国のまほろば。
京都とは一味違う、もっと素朴で自然で鮮やかな大地が大和なのだと知った。
ふと感じたのは祈りだった。
ずっと昔から暮らしは続いてきたこと
これからもきっと続いていくこと
過去と未来の真ん中に
地面と空の真ん中に
結節点として私は立っている。
その不思議さと責任を身に沁みて感じた。
きっと感じ方は人それぞれに違うのだろうけど、
平城宮の背負う途方もないような時間と歴史は訪れる人の心にきっと何かを遺すはずだ。
かしこ
2023/6/2 GST 0:40
胡蝶