お父さんがお父さんでなくなった日
前述したとおり
私は父が大好きでした。
もともと生真面目な父は、父とかかわる人を大切にしたいという強い思いのある人でした。
会社を経営していた父の会社では、父の人柄に惚れて入社した人もいました。
私もそんな父を尊敬していましたし、憧れていました。
しかし、その父がどんどんストレスを抱えてしまい、精神疾患を患うようになりました。
父もパニック障害や鬱の症状があり、治療薬を飲んでいました。
心配をかけたくない父は、いつも平気な振りをしていましたが、調子が悪くなると無口になって自分の部屋に引きこもるようになりました。
家族と出かける頻度も減り、あまり笑わなくなりました。
家族に気が付かれないように、心療内科にも受診していたようですが、症状はよくなることはありませんでした。
その頃の父は「神」といった見えない世界の力を信じるようになりました。
私も、父にその話をされたりしていたので、何となくも知識はあったのですが、心のどっかで怪しいなって思って、聞き流していました。
その頃の私は、自分がHSPという気質であることやパニック障害といった精神疾患だってことがわかっていませんでした。
父といると、なんだか生き苦しくて悲しい気分になったり、すごく心配で仕方なかったのを覚えています。
父に胃がんであったと知らされたとき、すごくショックでしたが、ストレスからくる病ということだけは納得しました。
そして、現代の医療を信じていなかった父は、民間療法やスピリチュアルな方向で自分に治療を施していました。
しかし、ガンの症状は悪くなっていきました。
なぜなら、父は心の底から病に怯えていたからです。
ガンを治す!と意気込んではいましたが、心の中では、ガンという病の恐怖に打ちひしがれていました。
世の中には、民間療法や無治療でガンを克服した方は、本当に沢山います。
そのほとんどの方が、自分という人間を熟知しており、治療するすべての行為を自分で決断し、許可をし、その力を強く信じていたという共通点があると思います。
父はネットで、ガン闘病者がガンから生還した!という内容の記事を読み漁りました。
ガンサバイバーとして、全力を尽くしていました。
しかし、その中で戦っている方と大幅な違いがあったのは
「誰かが助けてくれるだろう」という気持ちでした。
その矛先が最初に来たのが、私でした。
父は、私を「神」という存在にしたててきました。
そして、自分を救ってほしい!!!!!と懇願してきました。
どうしていいのかわからないから、とにかく助けてほしい!!!!!と。
父は、以前の父ではありませんでした。
ガンという病気が一刻も治るように!!!!それだけの執念で生きていました。
そして、ガンを強く恨んでいました。
そして、ひどく怯えていました。
冷静に考えると、この「感情」こそが、ガンの餌になってしまうのです。
怯え、怒り、悲しみ、恐怖といった感情は、人を狂わせます。
そして、細胞をどんどん壊していきます。
この部分の向き合い方は、また別の機会に説明していきます。
父が父でなくなってしまった日。
私は、絶望の境地に立たされました。