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ゲー選かけ流しvol.13 『帰ってきた 名探偵ピカチュウ』

ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。
今回は『帰ってきた 名探偵ピカチュウ』。

3DS版リリース後、映画版を挟んで長い沈黙を貫いていた名探偵ピカチュウの最新作。Switchでパワーアップした本作の感想をまとめていく。

<名探偵ピカチュウシリーズプレイ歴>
・3DS版はDL版、パッケージ版共にクリア済み
・映画版「名探偵ピカチュウ」視聴済み
・Switch版はクリア済み、プレイ時間11時間強


スケールアップした「人とポケモンが"共存"する世界」

本作は前作3DS版と同じくライムシティが舞台。ポケモンを狂暴化させる薬「R」を巡る事件から2年、数々の事件を解決した主人公ティムとピカチュウのコンビに感謝状が贈られるところからストーリーが始まる。

ライムシティでは人とポケモンが共存しながら生活に溶け込んでいる姿を垣間見る事ができる。ポケモンの種類はシリーズでも最大のボリュームを誇り、その描写は本編のポケモンシリーズよりも生活感が垣間見える出来栄えとなっている。ポケモンファンならホッコリする事うけあい。

初見のポケモンには登場演出がある。
愉快なキャッチコピー付き。

本作はジャンルとしては推理アドベンチャーに当たるが、人間とポケモンの"共存"については本作のテーマの一つとなっており、ティムとピカチュウが一つ一つ事件を解決していく過程で、ポケモンと共存する方法論について、黒幕達と見解をぶつけ合う事もある。

ネタバレは避けたいのでストーリーへの言及は控えめにするが、3DS版から謎に包まれていた伏線については回収され、ストーリーとしては映画版と異なる形で大きな区切りがつく事となる。

最新作で、失われていたピカチュウの
記憶の扉が少しずつ開かれていく。

今回の結末を受けて、「次回作が有るか?」と聞かれたら。
筆者の見解としてはとても難しいと言わざるを得ない。ストーリー的に区切りがついたことも、ゲーム自体のセールスの面でも厳しいかな、と思う。

一方、様々なポケモン達が日常生活を送っている姿を見る事ができる貴重な作品ではある。値段と比較してプレイ時間は短いが、お財布に余裕がある人は遊んでみるのも良いだろう。

ピカチュウとポケモン達の交流も豊か。
ポケモン本編では味わえないポイントである。

緊張感に乏しいユル~い推理パート

本作の推理パートは、ティムの推理ノートに少しずつ情報を加筆しながら推理を深めていくスタイルとなっている。

推理ノートはページごとに推理すべきポイントが分かれており、解決に必要な手掛かりが集まったタイミングで推理する事で、新たな推理へと思考を張り巡らしていく。

推理ノートを前面に押し出して情報を整理していく
システムは意外と珍しい。通常はプレイヤーの
メモ帳として機能することが多いものなので。

手がかりを集める局面では、フィールドを移動して様々な人物やポケモンに聞き込みをしたり、特定の場所をポイントクリックしたりと、既存のアドベンチャーの文法に倣っている。新味はないものの、とっつきは良い。

手がかりが集まったら推理ノートから推理を開始。諸々の推理が解明されて犯人を追い詰めるシーンでは択一で答えを選ぶ必要があるのだが、選択を誤ってもペナルティが無いため、緊張感に欠ける点は否めない。

間違えてもペナルティがないので、
推理にマジメに向き合うモチベーションを
保つことが難しいのが難点。

間違った答えを選んだ時にはピカチュウが専用のリアクションをしてくれるので、何なら一回わざと間違う手もあるかもしれない。
(もっとも、誤答のリアクションにバリエーションはなく、何度も色々な間違いを試すメリットも無いのだが…)

シーンによってはボタン連打や目押しを要求されることがあるが、シビアでもなく、こちらもペナルティがない。アクセントになっていると言えなくもないが、筆者は「本当にこれ要る?」と思いながらボタンを連打していた。

本作に限らず、推理アドベンチャーには
ナゾのQTEが突っ込まれがち。

本作を推理ゲーとして見た場合、緊迫する場面はほぼない。大きく組織的な事件を扱いながらも全編通してポケモンらしいユルい雰囲気で捜査を進めていく事になる。

推理を間違えたらゲームオーバー、のような仕様にする必要はないと思うが、誤答の際にはもう少し緊迫感を煽るような演出があると、プレイヤーも能動的に推理しようというモチベーションになったのではないかと思う。ここは物足りないポイントである。

まとめ

『名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~』から足かけ7年、文字通り帰ってきたティムとピカチュウのコンビ。

ティムがピカチュウと会話できる理由、ピカチュウが失った記憶など、シリーズをまたぐ大きな謎は解明され、読後感の良い仕上がりになっていた。

過去の回想シーンで登場するピカチュウ。
名探偵との違いは…?

ボリュームについては筆者は許容範囲ではあるものの、価格とプレイ時間を比較すると、他ジャンルのゲームよりも割高に感じられるのが最大のネック。リプレイ性も低いゲームだが、つまみぐいモードがあるので、気が向いた時に読み物として遊び直すのはアリ。

何よりも作中に出るポケモンの数もシリーズ最多で、ポケモンファンなら一定の満足感が得られる事だろう。

本作を一言で言い表すならば、
「ポケモンまみれの推理アドベンチャー最終巻(?)」
である。

いつか、この笑顔をふたたび見られる日は来るのか。

久々に堪能した名探偵ピカチュウの選評は以上。
次回もよろしくお願いします。

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