OECD E2030 プロジェクト∞無限大とは何か?
今後人に説明する必要が出てきそうなので、白井俊著「OECD Education2030 プロジェクトが描く教育の未来 エージェンシー、脂質・能力とカリキュラム」で復習します。
今日はOECD E2030について。
コンピテンシーの定義と選択の必要性
コンピテンシーはアメリカの心理学者マクレランドの問題提起から始まった。
コンピテンシーはアメリカの心理学者マクレランドの問題提起から始まったそうです。
「試験での成績が、必ずしも職業上の能力に直結していないのではないか?」
これがコンピテンシーの議論の始まりらしいのですが、議論が始まるということはいろいろな論が出てくることになります。
いろいろな論が出てくれば、概念整理が必要になります。
DeSeCoプロジェクト
OECDが1997年からDeSeCoプロジェクト(Definitions and Selections of Competencies)がコンピテンシーの概念整理を一つのミッションが始められました(〜2003年最終報告)。
DeSeCoプロジェクトがまとめたコンピテンシーは、
知識や[認知的、メタ認知的、社会・情動的、実用的な]スキル、態度及び価値観を結集することを通じて、特定の文脈における複雑な要求に適切に対応していく力
です。
統合的(horistic)な視点、文脈に即して捉える(context-based)が特徴です。
キーコンピテンシーの枠組みは
異質な人々から構成される集団で相互にかかわりあう力
自律的に行動する力
道具を相互作用的に用いる力
で、省察・振り返りを中心に置いています。
「21世紀型スキル」の時代
「21世紀型スキル」の時代
20世紀後半から21世紀にかけて、様々な国や国際機関、シンクタンク、研究者等から、コンピテンシーに関する提言が続きました。
2002年〜アメリカによる「21世紀型スキルのためのパートナーシップ(Partnership for 21st Century skills)」
2009年〜マイクロソフト、インテル、シスコシステムズによる「ATC21S(
Assessment and Teaching of 21st Century Skills)」
2006年〜EUによる「ヨーロッパ参照枠組み(European Reference Framework)」
2015年〜UNESCOによる「グローバルシチズンシップ教育(Competences for Democratic Culture)」
2016年〜欧州評議会による「民主主義文化のためのヨーロッパ参照枠組み(
Europe Reference Framework of Comoetences for Democratic Culture)」
などなど。
ここで、多様な能力概念に対する整理の必要性がEducation2030のミッションになっていったのです。
Education2030プロジェクト〜新しい学校のモデルを〜
東北スクール・プロジェクトの経験
東北スクールプロジェクトは、OECDと文部科学省の支援の下、東日本大震災で被災した、福島・宮城・岩手の3件の各地域から合計約100人の中高生が参加し、「『新しい東北・日本の未来の姿』を考え、東北地方の経済活性化に必要な産業やイノベーションを生み出すための人材育成」を目指して行われました。
自分たちの学習成果をパリのエッフェル塔の下に広がるシャン・ド・マルス公園を舞台として発表することを目標に、企画・構想・資金調達などを生徒自身が考えたり、新しい人的ネットワークを構築したりしました。
「子どもたちと教師が共同で、2030年の世界における課題に対応していくためにどのような知識やスキル、ふるまい方が必要かということについて考え、自分たちなりの『2030年に向けた新しい学校教育』のモデルを創り出し」ました。
Education2030へ
この東北スクールを契機としてOECDが、2015年から始めたプロジェクトが“OECD Future of Education and Skills 2030”(Education2030)です。
ミッションはDeSeCoの再定義でしたが具体的には、
生徒が未来を生き抜き、世界を形作っていくためには、どのような知識やスキル、態度及び価値観が必要になるのか
教育システムは、どのようにして、これらの知識やスキル、態度及び価値観を効果的に育成することができるのか
前者が2015年〜2018年のミッション
後者が2019年〜のミッションで今ここになるわけです。
付記
僕がこのプロジェクトに感銘を受けたことの一つが、2015年〜2018年への日本の関与の仕方がDeSeCoと異なり、日本の外国の考えを受容し、解釈し、それを国内に発信するという形式ではなく、当事者として積極的に参与していったことです。
2019年〜の後期においてプロジェクト∞無限大が始動したのが、2023年ですが、ここにおいて積極的に当事者として参加しようとしているのが、僕です。