
ACID ACID EP 解説 その2 ブロックチェーンの可能性 & ジャケット制作フロー
ACID ACID EPの制作秘話を紹介する解説記事その2です。 前回の記事はこちら。
早速 Maltine Recordsのtomad社長にリリース打診すると、マインスイーパーの件もあったためか、もう一声!社長はテクノロジーネタがほしそうな感触でした。そんな中、友人がマイニングをして稼いでいると聞いて出会ったのがビットコインとブロックチェーンでした。
当初はLine Payと何が違うんだろうと、世間で騒がれている意味がよく分からなかったのですが、流石にこの盛り上がりは何かおかしいと、VOCALOOPをつくった友人達とブロックチェーンの仕組みを勉強会をしてみました。P2Pのように処理するパソコンが分散しており、お金のやり取りした結果が改ざん不可能(な確率が超高い)構造に特徴がありそうだという事が分かりました。
更に調べていくとイーサリアムというブロックチェーンではビットコインのようにお金だけでなくトークンとして情報(数字の集合やデジタルデータ)を「コピーできない形で所有」できたり、プログラムを自動実行したりといった「汎用的なコンピューター」の側面がある(らしい)という事がわかりました。そこから音楽データそのものや音楽にまつわる権利をトークン化できれば、デジタルな「レコード」を所有する体験が実現できるかもしれないと思いました。
持ち込んだレコード一枚を割ると、その場でブロックチェーンMP3的なデータであるブロックチューンが貰える
— mirrorboy (@mirrorboy) June 17, 2017
実現性はともかく、当時とりあえずこんな事を言ってましたね。
MP3のレーベルで作品発表をしておきながらも、趣味でレコードを集めており、所有欲を満たせたり、中古レコード屋で十数年前の音楽に予期せず出会うという体験が好きだったので、デジタルだけど「コピーできないで所有・流通できる」という概念はとても興味深く感じました。
tomad社長にも「使えそうな技術がありましたよ!しゃっちょ〜〜〜」という感じでブロックチェーンの事を話してみた所、興味を持って貰えたようなので、リリースが出来るように引き続き調査してみる事に。
ただブロックチェーン全体が黎明期なので、開発しようにも分からない事が次々と出てきてしまい、時間が経ってしまいました。技術を学ぼうにもQiitaや海外の掲示板を参考にした所で、細かい所でいちいちサンプルコードが動かなかったり、バージョンが違ったり・・・・。ようやくオライリーの英語版でEthereumの本が出て飛びついて買ってみたりもしました。
イーサリアムがどのようなものなのか基礎は把握できましたが、自分で目的の機能を実装できるかというとチンプンカンプンでした。そうこうしていると日本語の書籍が出版されました。
この本はとても良かったです。説明に沿いながらプログラミングを実際に動かして学ぶことができ、具体的な実行のイメージが掴めました。しかし、イーサリアムの開発環境はWebのバックエンド技術の延長にあるような印象で、これまで余りWebに繋がらないフロントエンドもしくはローカル環境のプログラミング(Processing / Unity / Arduino / Max等 ) ばかりやってきた自分からするとサービス開発するのは正直キツイというのが感想でした。
RinkebyテストネットでERC721トークン発行&OpenSeaで確認まで出来た。キャラクターガチャで毎回絵柄が違うのどこでやってのだろう pic.twitter.com/KmfT5jCBxz
— mirrorboy (@mirrorboy) February 4, 2019
やりたい事はどうやらERC721 / NFT(Non Fungible Token)を使うと出来そうという事までは分かり、テストネットでは動かしてみたものの、わからない事だらけでした。
コバルト爆弾αΩのジャケット制作フロー
ブロックチェーンの調査と平行してジャケットの制作を行う事にしました。コバルト爆弾αΩにおけるジャケット制作時のフローは以下の通りです。
1. Ωに楽曲情報や方向性をインプット
2. Ωより元ネタとなる映画が発表
3. コンセプトに合わせて発注用のディレクション資料作成
4. NC帝國に発注
5. 関係者確認、修正
Ωは映画オタク兼ブレイン(人工知能に対する自然知能とでもいいましょうか)を担当しており、何かしらの情報をインプットすると「映画」をアウトプットしてくれます。
今回Ωに入力した情報としては、「ACID」「VOCALOOP ( VOCALOIDをJACK ) 」「シカゴハウス〜セカンド・サマー・オブ・ラブまでのTB-303が流行った流れ」「TB-303もVOCALOOPも日本の楽器」あたりだったと思います。
するとΩから「 ALTERED STATES 」という映画が示されました。映画の内容も合っているというのもありますが、ビジュアルとして電極が刺された男が上下逆さまで堕落している様子が、電子音楽やアシッドの怪しい雰囲気に合いそうという事で採用されました。
もちろん元ネタをそのまま使うという事では無く、あくまで下敷きにした上で今回の企画趣旨に合うように変更点を検討します。例えば、中央の男性をボカロ風な女の子に変えたり、DJ風のヘッドフォンを着けたり、といった点です。こうしてNC帝國にイラストレーションとデザインをしてもらったのがジャケットになります。
【謹啓】5/24にMaltine Recordsからリリースされる、Mitaka Sound - ACID ACID EPのジャケットイラスト及びデザインを担当しました。この楽曲リリースは、音楽の権利をブロックチェーン上で管理移転する実証実験でもあります。トークンの応募は5/22まで。 https://t.co/9TdJQIsyBd
— NC帝國 (@NC_Empire) May 16, 2019
BlockBaseさんと出会い
なかなか進捗しない中、ブロックチェーンを使ったサービスが日本で公開されはじめました。
BlockBaseさんのbazaaarはNFTのプラットフォーム、どう考えてもNFTに詳しいはず!
DJがMIXを配布する時にブロックチェーン上で曲の所有権や二次利用可能が明確になると、mp3のままでも意味は有るのかもしれない。むしろmp3のユーザビリティのままの方がいいのかも。
— mirrorboy (@mirrorboy) January 31, 2019
開発力が無かった私は、上記のような内容をしたためた企画書を持ち込んで相談してみる事に。BlockBaseさんが入居するHashHubというブロックチェーンの会社が多く入居するコワーキングスペースはブロックチェーンへ邁進する老若男女が集まる熱気溢れる場所でした。
打合せでは、担当して頂いた山村さんが幸運にもクラブ音楽に明るく、前提条件を余り話さなくとも話しが通り、逆に音楽以外のアートの文脈で様々なブロックチェーンを使った事例があるよと紹介を頂き盛り上がりました。山村さんからTheo Parrishの名前が出てきた時の心強さといったら無かったです。
何度か打合せをする重ね、プロダクトマネージャー・エンジニアの田中さんも参加して頂き、コントラクトやWebシステムの設計・開発などに協力して頂ける事になりました。ちなみに田中さんは私とは違って短期間でブロックチェーンのエンジニアリングを学んだツワモノ!
コンサルティングや開発の事例作りになりそうという事で、法務確認や開発など完全におんぶにだっこで一緒にリリース(実験)をやって頂ける事になりました。なんという幸運なんでしょうか、BlockBaseさんには本当に感謝してもしきれないですね。
こうして盤石の布陣でリリースへ向けてう動きだしたかのように思えたのですが、大きな壁にぶち当たります・・・
つづく
ACID ACID EPの限定4種類のNFT 応募締切は、5/22(水) までとなっておりますので、お申込みよろしくお願いいたします!