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ACID ACID EP その3 音楽 × ブロックチェーンの実証実験 なぜ原盤権トークン(NFT)を配布する事になったか?
今回は最終回、ブロックチェーンと法令に関わる少々込み入った話しです。
初期企画 MP3 × NFT で デジタルレコード
ブロックチェーンを使った音源リリースの企画、当初はMP3の無料配布に加えて 数量限定(例えば 33枚)のNFTを配布し、ブロックチェーン上でその楽曲の所有権(のような何か)を配れるような仕組みを検討していました。
レコードの有限性とMP3のフレキシブルさ、良いところ取りができるようなトークンです。ファンが限定のトークンを持つコレクターズアイテムとしてだけではなく、イベントへの無料招待や、MP3の楽曲のダウンロード、そしてbazaaarのプラットフォーム上でコレクションしたトークンをレコードやカードゲームのように交換できる世界感をイメージしていました。
早速BlockBaseさんと相談した上で、上記のアイデアを弁護士さんに確認して頂きました。実現には問題がある事がわかりました。「同じ内容のファイルやデータ」を複数(例では33枚)トークン化した場合に、例え無料で配ったとしても日本国内法における仮想通貨(暗号資産)関連の法律「資金決済法」および「金融商品取引法」における「仮想通貨」の定義に該当してしまう恐れがあるとの事でした。意図せず「ICO」しようとしていた事になります。
※あくまでこの事例・このタイミングではです。諸々の条件や弁護士さんによっても見解は変わってくると思いますので企画・開発を進める際にはBlockBaseさんや弁護士さんに相談する事をオススメします。
つまり、仮にこのような方法でトークンを発行するとした場合、bazaaarで取引できるようにするためには、BlockBaseさん自身が金融庁に対して仮想通貨交換業者として申請し、登録審査を受ける必要があるかもしれないということでした。また意図せず仮想通貨となってしまったmp3ファイルも合わせて審査の対象となり、また、交換業者として登録ができたとしても、mp3ファイルをbazaaar上で交換させ続ける限り、金融庁からの監査に対応し続けなければならないかもしれないという、とても音楽ファイルの配信とは思えない事態が想像されました。
トークンそれぞれの唯一性を確保
どうすれば問題を解決できるのか?それは「トークンそれぞれの唯一性を担保する」必要があるという事でした。よくよく考えたら NFT ( Non Fungible Token )にしようとしていたのだから当たり前といえば当たり前ですが。
NFTの実用例として、例えば、ゲームのキャラクターが上げられます。ゲームの場合は同じようなキャラクターでも能力パラメーターや服装や色のといった違いでキャラクターの唯一性が担保できるとの事です。
これを音楽のトークンで適応するには、例えば同じ曲でも「ジャケットを自動生成してトークン毎に1つずつ変えて」みたり、アーティストの作家性を毀損しない範囲で「音に処理を加える」(過去に行われたCopy Control CDの様であまりやりたくはないですね・・・)といった方法がありそうです。
この案を弁護士さんに確認して頂きましたが・・・デジタルデータとして違うものでも、音楽自体がほぼ似ているといった場合は本質的な音楽の価値は同じで、トークンそれぞれに「唯一性の担保」がされないとの見解を得ました。どうしても1曲に対して複数枚のトークンを発行するのはできないという事ですね。
企画は一旦暗礁に乗り上げたかと思われましたが、ここでコロンブスの卵的にアイデアが出てきました。「1曲に対して1つのトークンを発行するのであれば、必ず唯一性が担保できる」という事でした。物凄く当たり前です。4曲あるので4つのトークンを配布できます。しかし、これだと4名にしか参加して貰えず、企画の広がりが無さそうという懸念点がありました。
この問題を解決しようと打合せを重ねる内に「原盤権と著作権の一部を付与する」というアイデアがでてきました。再販売やRemixができるような権利を付与すれば、例えトークンが1つだったとしても、2次創作的に作品が生まれる可能性があり、企画に広がりが持たせられそうです。
改めて音楽関係の権利に関して調査・整理し、これは実現性がありそうだと関係者が納得できました。また当初、所有権という曖昧な言葉で呼ばれていた権利が、具体的な音楽の権利にする事ができました。方向性が決まったらリリースに向けて、関係者各位がそれぞれの立場で大急ぎで準備を行い発表を行いました。
ついにリリース
🐳プレスリリース🐳
— bazaaar(バザー) NFTマッチングプラットフォーム (@bazaaario) May 16, 2019
Music × NFTの取り組みスタート🤩
音楽の原盤権の権利の一部をトークン化し配信します!
トークン抽選の応募はbazaaar内特設ページから🏃♂️
BlockBaseとMaltine RecordsがNFT (Non Fungible Token) を活用した楽曲配信の実証実験を開始 https://t.co/5q49MFedxP
New Release!!!
— Maltine Records (@MaltineRecords) May 24, 2019
[MARUB-001] Mitaka Sound - ACID ACID EPhttps://t.co/nYm9FBsTxZ
* レコードの権利者が分散しています / The record right holder is dispersed pic.twitter.com/387DD1R7O2
原盤権の一部と著作権の一部がNFTとしてトークン化され、抽選の結果、4名の当選者に配布されました。
🐳当選者発表ー!!🐳
— bazaaar(バザー) NFTマッチングプラットフォーム (@bazaaario) May 24, 2019
以下の皆様当選されました!おめでとうございます🎉🎉
Vol.1 @pianoid
Vol.2 @fugakura
Vol.3 @mikiomurahatibu
Vol.4 @Sheep_Musik
当選メールと原盤権トークンを送付させて頂きました!
今回の原盤権を使って何が起きるか楽しみです🤩https://t.co/yYjp5p7uwV https://t.co/oDawmfLCSy
今後どんな活用をして頂けるのか、関係者一同、本当に楽しみにしています!(ちなみにまだ活用事例は出てきていません・・・涙)
🐳アップデート🐳
— bazaaar(バザー) NFTマッチングプラットフォーム (@bazaaario) June 11, 2019
音楽の原盤権トークン売買取り扱い開始しましたー!!
ACID ACID EPは世界に4個しかないトークンですので出品されたら要チェック!!
トークンホルダーにTwitterで出品交渉も可能...!?
※トークンの購入と出品にはTwitter連携が必要になります。https://t.co/JfTA0AHBKh pic.twitter.com/oY8iUuZqT4
bazaaar上でNFTの売買もできるようになりました。トークンゲットしたけど、うまく活用できなかったという方は今すぐ売りに出してみましょう!(笑)どんな価格がつくのかも想像できませんが・・・。
3編に分けて書いてきたACID ACID EPの制作秘話は以上です。音楽×ブロックチェーンの実例はまだ始まったばかりです。新しい時代の音楽カルチャーのありかたを模索する皆様にとって、我々の事例がお役に立てれば幸いです。
おまけ
突然ですがクラブミュージックのアーティスト/トラックメーカー/リミキサー/DJの方で音楽×ブロックチェーンの取り組みに興味がある方を募集したいと思います。どんな形で参加頂けるかは全く未定ですが、この未知領域で新しい事をやってみたい!という方に、お声がけできるタイミングがくるかもしれません。一先ずフォームを用意したので事前登録して頂けると幸いです。
https://forms.gle/MjAiqR5xgQxPS7v48
最後までお読み頂き、ありがとうございます。それではまた!